第57話 漂流物
「海の上はどっちを向いても海ばかり、そろそろ飽きて来た」
「そうかな、俺の実家は海の近くだからさ、こうやって海を眺めながら過ごすのは嫌いじゃ無いよ」
ブレンドンと船首で風を受けながら流れる景色を眺めていた、代わり映えしない景色にブレンドンは不満なようだが、俺には最高の贅沢な時間だ。
アトモスに居た頃はそんなに好きじゃ無かった筈だが、三年間森の中の学校に居たために海の良さに気が付いた。
風と雲と波を見て天候の変化を事前に察知したり、飛んでいる鳥の微かな変化から、海上の漂流物を見つける事が出来るように成れば、ブレンドンも海の事が好きになると思う。
「お前ら、甲板の掃除は終わったのか」
いつの間にかレイが俺達の後ろに立っていて、進んでいない甲板の掃除を進める様に言われてしまった。
手伝ってくれても・・・、と思うけれど、流石に下っ端の俺達がやるべき仕事だろう。
よくよく考えたら艦橋から丸見えなんだから、どうやったってサボっているのは見つかってしまう。
「あ、ちょうど良いや。レイ、あそこに何か浮かんでいるみたい」
「ああ、今そっちに向かっている所だ、鳥に突かれている所を見ると、遭難者だったら死んでるな」
「シリル、お前どれだけ目が良いんだよ、俺には全くわからないぞ」
「ん、まあ慣れだよ、慣れ。俺なんてまだまだ、もっとすごい人たちが、アトモスにはいっぱい居るんだから」
「そうか、そいつは凄いな」
「凄い人たちはいっぱい居るけど、面白い所はあんまり無いぜ、飯は美味いけど」
「それで十分だ、ちょっと楽しみになって来た」
「そうか、その前に掃除は終わらせておけよ」
俺達は大急ぎで甲板を掃除し始めた、その内に漂流物の近くまで船は進み、レイが異臭を放つ腐敗した何かの死骸を手に取った、
「死んでるから良いが、これが生きていたら大変な事になるぞ」
沈没した船の残骸に張り付いていた腐乱した死体、それを手にしたレイが急いで艦橋へ戻って行ってしまった、俺には魚とも鳥とも獣とも見える死体だった、ただレイの慌てっぷりを見ると、たた事では無い気がしたが、俺達は命令通りに甲板掃除を続けた。
「なんじゃあこりゃあ、こんなところで船が沈没しているなんて、珍しい事も有るんだな」
「航路でも無ぇし、漁師仲間でも無ぇな」
「これだけばらばらじゃあ誰も助かって無ぇな、何じゃ何かちいせぇのが動いちょる」
「見た事無い生き物だなぁ、そうだ、俺の子供へお土産にするべ、犬が飼いたい言うとった」
「どう見ても犬じゃないけんど、これはなんじゃあ、魚でも鳥でも無ぇな。そんな大きい口して、一体何を食べるんだ」
「ん、ありゃこっちにも居るわ、ありゃこっちにも、一匹でええのに、こんなに沢山は飼えんわ」
「どうする、残りは放って置くか、ありゃ、何じゃこいつら船を登って来おった」
キィ、キキィ、キィ
キィ
ペキ、ポキ、ベキッ




