第55話 狩りの終わり
それでもシンディたちは時差射撃を繰り返し、アンドリューが避ける方向を予測しての射撃を繰り返し、時には剣士が行く手を阻み、それらがすべて空振りに終わったとしても、少しずつだけれどアンドリューが被弾する確率が上がり、剣士が止めを刺す前に、アンドリューを甲板へ固定するためのアンカーが撃ち込まれた。
アンドリューの攻撃を後ろ側で受けていたのは、最後にアンカーを撃ち込むための魔力砲を損傷させないため、狩りの成功、すなわち竜の素材を持ち帰るために、止む無く船の尻を差し出していたのだ。
アンドリューへの止めはレイが首を半分以上掻き斬り、シンディが眉間へ数発打ち込んで確実に息の根を止めた。
狩りが終わったという実感はあまり湧いて来なかった、俺にとっての初狩りなのだが、喜びよりも悔しさが先に立った。
上手く立ち回れなかった、何度も切り込める機会を逃した、怪我をする事は無かったが本当にそれで良かったのか自問自答していた。
ブレンドンを見つけ傍に立った、返り血と汗で上から下までびしょ濡れだった、それは俺も同じだった。
「初狩り達成、おめでとう」
「ありがとう、でも、あまり嬉しくは無いな」
俺の返答にブレンドンも苦笑いをした、まあ何と無く理由はわかる、すぐに狩りに復帰したとはいえ、失態は失態である、
「これからずっと、こんな事を続けて行くんだな」
心の中のもやもやを吐き出してしまいたい気持ちになったが、そこはぐっと堪える事にした。
するとヘレナが近付いて来た、なぜかヘレナも苦笑いをしている。
「おめでとう、狩りが成功して良かったね」
「ありがとう、初めてガンナーと一緒に狩りをしたけど、お互い大変だったんだ、知らなかったよ」
俺の言葉にヘレナは複雑そうな顔をして何か言いたげだった、そんなヘレナを不思議に思っていたが、甲板の上はもっと大変な事になっていた、
「お前ら剣士がさっさと止め刺さねーから、追いつかれて船が壊れたんだろうが」
「追いつかれる前に何とかするのがガンナーの仕事だろうが、一匹落としちまったじゃねーか」
「何言ってるんだよ、〇〇〇ばっかり〇〇〇して〇〇〇だろ」
「そんな事ばっかり言ってるから、〇〇〇が〇〇〇なんだろーが、いい加減〇〇〇から〇〇〇だろ」
飛び交う耳を塞ぎ込みたくなるような罵声に驚いて声も出ない、一体何が始まったんだろうか、ついさっきまで冷静に指示を出して協力して狩りをしていたのに。
「へへへ、私は苦手なんだ、でも、ちょっとだけ言うね。お互い大変な事は、わかってて欲しかったな」
ヘレナは口の前に両手でわっかを作り、大きな声で俺に叫んだ、と言う程では無いが、ヘレナにとっては腹から出した罵声なのだろう。
「ごめんよ、でも、これはいったいどういう事なんだ」
「なんかね、狩りの最中に揉めるのは何も良い事が無いから、みんな黙々と狩りをしていたでしょう。でもね、思った事や、言いたい事って絶対に有るでしょう。それを、何も言わずにいると良く無いから、狩りが終わったら。みんな全部吐き出すんだって」
ヘレナの説明に、納得がいったようないかない様な、そこで俺はブレンドンに尋ねた、
「ブレンドンは知ってたか」
「まあ一応は・・・な、俺は下っ端だし言い返せるほど自分の事は出来て無いから」
なるほど、確かに俺も言い返せるような事は何もしていない、でも、だからこそ腹の中を全部ぶちまけるのが良いのだろう、
「お前、偉そうな事言ってた割りに、靴のボタン一つまともに押せないのかよ」
ブレンドンに笑顔で文句を言った、それを聞いたブレンドンは最初は驚いていたが段々と笑顔になり、
「お前こそ切り込みが甘いんだよ、お前の所為で何回も機会を逃したぞ、初めてだからって甘えんな」
「それは、すまん。大目に見て欲しい」
「ああ、まあ、そう言うなら、な」
俺達は固く握手を交わし、力強く抱き合って初狩りの成功を喜んだ。
そして、シンディが未だに一人な理由もわかった気がする。




