第53話 不本意
先頭に立っていたJ・Jが空を駆けてアンドリューに一撃を加えた、すぐさま反撃に移ったアンドリューの攻撃を躱し、次の狩竜人が甲板を蹴ってアンドリューに襲い掛かる。
飛行速度が落ちたと言っても並飛行する訳にはいかず、空中を走りながらアンドリューの視線と攻撃を躱し、無理だと判断をしたら踵を返して船に戻る、すぐに魔力を満充填して再び空へ駆ける。
アンドリューが真っ直ぐに飛んでいるのなら、攻撃をしてから船に戻って来るのも簡単だけれど、当然の事だが反転して船を攻撃してきたり、距離を取って体勢を立て直したり、上や下に回り込もうともしてくる、操船技術の高い者で無いと、船がアンドリューの攻撃で損傷を受けて沈没という事も有りうる話しだ。
そして船がどう動こうとも狩竜人は船に従うしかない、俺達には変わりが効く、船の代わりは無い、当然の事だ。
そして遂にブレンドンの順番が来た、次は俺の番だ。
「それじゃあ、先輩の良い所を見せましょうかね」
こんな軽口を叩くような奴だったかと疑問に思ったが、狩りの興奮がそうさせているのだろうと勝手に納得をした、
「ああ、良い所を頼む」
そう言って軽く背中を叩いた、その時、船に大きな衝撃が走り、俺とブレンドンは甲板の先端に居たために船から落ちてしまった、
「な、何が」
落ちながらも冷静に船の位置を確認した、もう一匹のアンドリューに取りつかれた船が大きく傾いているのが見えた。
胸に付いた浮遊靴の起動スイッチを押し、始めの一歩を踏み出した。
加速しながら落ちて行く質量に俺の右足は悲鳴を上げ、すぐに左足で真横に蹴り出すと、多少は落下速度が落ち着いた、そして俺よりもさらに下に落ちて行くブレンドンは両手をばたつかせてスイッチを入れられないでいる。
船も心配だが、船にはレイもシンディもJ・Jもフランシスも居る、尊敬する彼らならなんとかしてくれるだろうと判断し、すぐに落ちて行くブレンドンに向かって足を蹴り出した。
落ちながら加速するとすぐにブレンドンに追いつき、顔に掛かる雫を振り払いながら胸元の浮遊靴のスイッチを入れたと同時に真横に蹴りつけた。
そうした事でブレンドンの両足は守られ、ようやく空に立つことが出来た、
「しっかりしてくださいよ、先輩」
「いや、突然の事だったから、助かったよありがとう、ごめん」
「いいよ、それぐらいの事は気にするなって、そんな事より早く船に戻らないと」
「ああ、シリルは優しいな」
涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔でブレンドンがお礼を言った、謝るような事は何も無いのにと思ったが、びちゃびちゃになったズボンを見てその理由がわかった、アントニオが相手なら一発食らわしているのにと、不本意な思い出し方だったが、アントニオは今でも狩竜人をやっているのだろうか。




