第52話 竜アンドリュー
部屋に戻ってどれくらい経っただろうか、はっきりと覚えていないのはベッドに横になっていたら眠ってしまったからだ、伝声管からけたたましい警報が鳴り響き、夢の中から現実へ引き戻された。
甲板へ続く廊下は、狩竜人たちがひしめき合いながらも渋滞などせずに、最速に近い速さで甲板に隊列を組み始めた。
「目標は前方のアンドリュー、現在はガンナーが攻撃を仕掛けているが、ひとつ心配事が有る」
レイは甲板中に聞こえるほどの大声で指示を出している、ガンナーの方はシンディが指揮を取っており、アンドリューの後方から攻撃を仕掛けている所の様で、見つかるよりも先に見つける事が出来たのだろう、
「現在、船の後方から別のアンドリューがこの船を追っている、前方のアンドリューの討伐に時間が掛かると2頭同時に相手をする事になる。その時は臨機応変に対処をして貰いたい」
「そいつは豪勢な話しだな、2頭とも狩れたらこの船の魔力炉も新しく出来るな」
レイの言葉にJ・Jが答える、確かにこの船の魔力炉からは微振動と異音が発生していて、父が直した魔力炉の音色と比べると、比べるまでも無くこの船の騒音は大きい。
それでも今は俺達の命を預けている狩竜人船だ、せめて狩りが終わってアルデンサルへ戻るまでは壊れないで欲しい。
「2頭同時に狩れたら、歴史に名を残せますかね」
フランシスがレイに尋ねた、それを聞いたレイは笑顔になり、
「歴史に名を残すかはわからないが、狩りの手引書に連携して襲ってくる事が有る、と書かれるだろうなその場合の狩りの難易度は・・・」
レイはそこで少し言葉を貯めた、歴史に名を残す程困難な狩りになるって事なのだろうか、
「前例が無いのにわかる訳ねぇだろうが、それはこれから決まるんだよ。行くぞお前ら」
俺達は腹の底から返事をして気合いを入れた、俺達は甲板の先頭へ歩き始め、その途中でレイはシンディを呼び、口元を隠して二人だけで会話をし始めた、これからの連携の話しなど色々話す事が有るのだろう。
代わりに先頭に立ったのはJ・Jだった、甲板を囲っていた鎖が降ろされ、空と船の境界線が重なった。
何度も海の上を走り回った、眼前に広がるのは海では無い、今、両の脚で踏みしめている浮遊靴に俺の命が掛かっている、誰からも落ちた事は無いと聞いた、落ちた奴は見た事が有ると聞いた、俺は一度落ちた事が有る。
ガクンと狩竜人船の速度が落ちた、傷を負ったアンドリューの飛行速度が落ちた様だ、そしてそれは俺達剣士の仕事の始まりの合図でもあり、後方のアンドリューが合流してしまう事にも繋がっている。




