第50話 狩り場までの一時
「やっぱり緊張する・・・かな、私は初めての時はすっごく緊張したよ。でもシリルにとっては、2度目みたいな物よね」
「その1度目で失敗しちゃったからな、緊張と言うよりも気負いは有るよ。流石に失敗する訳にはいかないし、何かあったら真っ逆さまだから」
ヘレナと狩り場に着くまでの間に甲板に出て話している、怪我を直している間は狩りの話しが禁止されていたようで、俺の知らない間にヘレナも経験者になっていた。
そして、散々俺達をからかっていた同期の女子たちは、俺からブレンドンへ乗り換えていた。
乗り換えていたと言うと語弊が有るかもしれない、彼女たちは元から俺とヘレナの間を割こうとしていたのではなく、少しだけ他の同期よりも俺が有名だっただけで、彼女たちなりに品定めをしていたのだろう。
狩りに出掛けて戻ってきたら、瀕死の有名人と、無傷の有望株しか戻って来ず、怪我人をからかう訳にもいかないから俺からブレンドンへ対象が移り、その内にブレンドンの人柄に惹かれる女子も現れて今に至る。
正直、俺から見てもブレンドンは素晴らしい人物で尊敬出来る男だし、一緒に狩りをしていてもとても頼りになる、そんなブレンドンも経験済みだ。
「安心して、シリル達が飛び出す前に弱らせて置くから。あ、今回は甲板拘束だったっけ」
「あー多分違う、まだ何も聞いて無いけど、レイも狩りに出るって言ってたから、相当強い竜だと思う、そろそろどんな竜かの説明が有ると思うんだけど」
「そうね、そろそろ船内に戻った方が良いかも知れないわ」
俺達は船内に戻りそれぞれの部屋で待機した、そしてすぐに艦橋へ召集が掛かり、部屋を出て艦橋へ向かった。
一体どんな竜を狩るのだろうか、前回の様なへまはしたくは無いが、そんな事は誰にもわからない。
わかっている事は、些細な判断間違いが大きな怪我になってしまう事だ、浮遊靴を使っていて気絶なんてしようものならそのまま死んでしまうだろう。
誰かに助けて貰うんじゃ無く、自分で自分を守らないと、死は常に隣に居て、ふとした瞬間に肩を掴まれてしまう。
俺もすでに肩を掴まれた一人だ、俺は狩竜人仲間のお陰でその手を振り払う事が出来たが、その代償は大きかった、俺は俺を助け、俺は他の誰かを助けたい。
それもこれも今回の狩りの対象に掛かっている、一体どんな竜を狩るのだろうか、レイが言うちょっと強いって言うのはどれくらいなのだろうか、少なくともダンドリスよりも遥かに強い竜なのだろう。




