第43話 人の話しは聞け、人の言う事は聞くな
トリスタンの突然の言葉に俺とブレンドンは咄嗟に剣に手を掛けた、そんな俺達の姿を見ていたフランシスとトリスタンは笑い出し、
「俺の話しをきちんと聞いてたみたいだな」
俺達の事を笑いながらトリスタンは剣を取った、仲間が死んでしまった話しをしていた筈なのだけれど、いったいどういう事なのだろうか。
「人の話しを聞く事はとても大事だ、だが、人の話しを聞くと碌な事になら無い」
「その通り」
そんな事を言いながらフランシスも剣を手に取り立ち上がった、トリスタンもいつの間にか剣を抜いて立ち上がっている、その姿を見て俺とブレンドンも立ち上がった、
「あ、あの、一体どこまでが本当で、どこまでが冗談なんですか」
レイで慣れていたはずだったが、とてもじゃあ無いけれどこの二人の話しに付いていけない、それは俺よりもブレンドンの方が顕著で、きょろきょろと周りを見回して震えている、トリスタンの話しだと竜は上から落ちて来るのだから、警戒をするのは上方だと思うのだけれど、戸惑っているブレンドンがその事に気付く筈は無い。
「全部本当で冗談みたいな話しさ、これから狩る竜の名前は聞いているだろう、獣竜種のダンドリス。何か今なら気付く事は無いか」
「ダンドリス、タントリス、トリスタン・・・、まさか」
「そのまさかだ、詳しい生態がわかる前はドド何とかって呼ばれていたんだがな」
「火から離れろよ、まずは火を目掛けて落ちて来る、そしてその後は月明りを頼りにとにかく斬れ、そして攻撃は避けろ」
「そ、それだけですか、何か特徴的な攻撃とかは」
「同じ種類だからと言って同じ攻撃をしてくるとは限らん、経験で覚えろ。幸い火も吐かないし飛んだり跳ねたりもしない」
「跳ねたりはしますよ」
「ああ、そうだ。跳ねるぞ」
話しを聞いても全く役に立たない、でも言いたい事はわかる。相手がどんな思惑で攻撃を仕掛けてくるのかがわからないのに、勝手にこう動いて来ると頭の中に入れて置くと、いざ違う動きをされた時に対処が出来ない恐れが有る、それは剣戟の型にも通じるものがある。同じ動きを繰り返して頭に叩き込んだ後で、すべてを忘れて縦横無尽に剣を振る、足さばきだって同じだ、街中で通行人に当たらない様に歩くのは、型に嵌まった動きでは無くて臨機応変に動かなければならない、だけどその基本的な動きは繰り返し練習をする。
右手を上げたらこう、左手ならこう、そんな事を教えて貰ったら逆効果なだけだ。
つまり、人の話しを聞いても人の話しを聞くと碌な事になら無い。




