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俺がただ竜を殺すだけの物語 第三章  作者: M.TOTTORI


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第39話 狩竜人の素質

「もう残り時間が少ないから、一旦船に戻るぞ」


姫様はそう言うと勢い良く空を駆けた、足踏みをしている様な振動が全身に伝わって来るが、足場の様な物は無い、それでもぐんぐんと太陽光を反射して光り輝いている様に見える白い船が近付き、そのままの勢いで甲板に着地をした。

一体何が起きたのかわからずに目をまん丸にして挙動不審になっていると、心配そうな顔をしたジェイミーが近付いて来た、


「大丈夫だったみたいだな、落ちた人を見た時は驚いたよ。まあ、姉上の前でそれは少し恥ずかしいかも知れないが、生きているなら良いだろう」


「あ、ああ、ありがとうございました」


声を掛けて来たジェイミーでは無く、オフィーリア姫の方を向いてお礼を述べ、脚がしっかりと甲板を踏みしめている事に安堵した。

そしてジェイミーにもお礼を述べたが、ジェイミーが何を伝えたいのかは何もわからなかった。

そして甲板をさわやかな風が走り、下半身に冷えを覚えた、そこでジェイミーが伝えたかった事がわかった、


「気にするなシリル、その程度で済んだのなら良いでは無いか」


俺の排泄物で濡れてしまった事などは気にも留めず、従者たちに指示を出して黒い船に自らの船を寄せた、


「ご助力、ありがとうございました」


オフィーリア姫に向かって頭を下げながらペインが礼を述べた、姫様は軽く右手を上げて合図をすると、ペインはすぐに何やら甲板の上で忙しそうに動き回っている。

甲板の上には無数の死体と、それを片付けている船員と、泣いているブレンドンが居た。

そうだ、俺は悲鳴を聞いたんだ。

二人分・・・。

いったい誰が、とは思ったが俺の中で大体の答えは出ている、だけど俺は死体を見ていない、大けがで済んでいるかも知れない、心の隅でそう思うようにしていた、僅かな期待に希望を見出していた。

でも、泣いているブレンドンを見て、それが淡い期待だったと思い知らされた。


「シリル、シリルじゃ無いか。生きていたのか・・・良かった」


俺の姿を見つけたブレンドンの顔が一瞬だけ晴れた、そして悲しい現実を俺に告げて来た、


「生き残ったのは、俺とお前だけだ」


ブレンドンの言葉に俺は絶句した、俺とブレンドンだけ、悲鳴は二人分だけだったが、俺が船から落ちている途中にも一人、また一人と倒れてしまったようだ。


「すまない、もう少し早く行動をしていれば」


落ち込んでいる俺に対して姫様が謝罪をしてきた、狩竜人が船で死んだ。

それだけだ、と簡単には流せない、強い日差しに甲板の血はすでに乾いていた。


「生き残ったのは二人だけとは、それほどにあいつらは手強かったか」


「それなのですが、あの丸薬が完成に近づいて来ている様で」


「あれか・・・、そんな物で学校を出た者が倒される様になるとは」


「それだけ必死なのだと思われます、ですが、それと関係していると思われる興味深い物を入手する事が出来ました、これで研究が進む筈です」


「例の卵か」


「はい、そして、それを入手した者は戦闘中に船から落ちても助かりました」


「そうか、これは運命なのかも知れねぇな。あいつは狩竜人に一番大事な物を持っていやがる、そしてそれはどれだけ努力しても手には入らねぇ」


「はい、羨ましい限りです」


国王は何度も小さく頷くと右手が上がり、それを合図にレイナルドは一礼をしてから王室を退去した。


「シリル・・・か、思えば船が壊れてあいつと出会ったのも、俺の運命なんかじゃ無くて、あいつに惹かれたのかも知れねぇな」

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