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俺がただ竜を殺すだけの物語 第三章  作者: M.TOTTORI


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第38話 俺は死んでしまった

目の前に居るローブの男の実力を見誤っていたのか、男の振るう剣の威力が次第に増していく様に感じ、他の先頭の様子まで窺う事が出来ていたのだが、少しずつだがその余裕を感じなくなって来た。

そんな筈は無いと思ってはいたが、俺より少し大きいくらいだった身長が、今は少し見上げるくらいに大きくなっている、これは気のせいなんかじゃない。


「何かおかしいぞ、気を付けろ」


近くで戦っていたブレンドンが叫んだ、その言葉で感じていた違和感が確信に変わった、だが何がどうなるのかまではわからない、わかっている事は力が強くなり、振るう剣の速度が上がり、俺の動きに対する反応速度が上がり、身体が大きくなっていく、そしてそれが急速に成長している事だ、ただそれを振るう技術が無い事だけが救いだった。

でも、それも凌駕されてしまうかもしれない、そして、そうなってしまった悲鳴が聞こえて来た。

叫び声の主は誰かわからない、そして二つ目の悲鳴が聞こえた。

すでに俺の目の前の男は俺を圧倒しつつあり、振り向いて誰が悲鳴を上げたのかを確認する事は叶わず、次に自分が悲鳴を上げるかもしれない程に追い込まれている。

とにかく挟み撃ちに逢うのはまずい、そう思い悲鳴の聞こえてきた所から距離を取る様に離れた、幸いにしてその一人はペインによって倒されるのが見えた。

これで挟み撃ちには会わない、その事が油断を招いてしまったのか、大きく振りかぶられた一撃を受け流すことなく剣で受け止めてしまった。

ふわりと浮き上がった俺の身体は、甲板に張り巡らされている落下防止のチェーンを楽々と飛び越え、踏みしめる脚は空を切り、叫び声をあげる事しか出来ずに俺は落下して行った。

ああ、これで死ぬのか。

みるみると小さくなっていく船影に、自分がどれくらいで地面に落ちるのかぼんやりと考えていた。

藻掻いたり声を上げたりをしても良い、でもただ黙して死を待つのも良い。

残された時間はどれくらいだろう、もう船影があんなに小さくなって・・・。

ドスンと俺は地面に落ちた、最初に思った事は思っていたよりも地面は硬くないんだな、と言うよりもとても柔らかい。

そしてあれだけの高さから落ちたのに痛くも何ともないなんて、死ぬときはそんな物なのかな、ああなにもかもやり残した事ばかりだ。


「おい」


天使の声が聞こえる、


「おい、大丈夫か」


「大丈夫な訳無いだろう、あんなに高い所から落ちたんだぞ」


「そうか、助かって良かったな」


「助かって・・・る」


聞き覚えの有る天使の声に俺は急速に冷静になって行く、俺は地面に落ちたわけでは無さそうだ、そしてこの柔らかいのはまさか・・・、


「とりあえず剣を鞘に納めろ、この体勢ではでは流石の私も剣を躱す事は難しい」


剣を鞘に納めながら天使の声の主を確認しようと頭を振った、そしてその事で二つの双丘の柔らかさを再認識してしまった、


「火蜥蜴から魔力を抽出出来ていたから助かったのだからな、あんがいあいつらも役に立つのかも知れんな」


「ですが、あいつらの所為で私は船から落とされました」


「そうか、そうだったな」


天使の声の主はオフィーリア姫だった、それは良い、とても良い物だ、だけど、俺達は今どこに立っているんだ。

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