第37話 襲撃
ベッドから飛び起きて枕元の剣を掴み取ると、ブレンドンと競う様に部屋を飛び出した、向かう先は甲板か艦橋か、目配せをして行先を決めると俺は甲板に、ブレンドンは艦橋へ走った。
真っ直ぐな廊下を進むとすぐに甲板へ出られるのだが、その時は目の前に広がる景色が違っていた。
進む先に広がる光景は吸い込まれそうな青空では無く、真っ黒な闇が広がっていた、それが空では無く船だと気付くのに時間は掛からなかった。
船首の突起はへし折られ、甲板にも歪みが見えた、俺が甲板に出るよりも先に上からペインが飛び降りて来て、それに続いてブレンドンも飛び降りて来た。
「何事ですか」
そんな事はペインもわかるわけが無いだろうけれど大声を出した、とにかく叫びたい衝動に駆られていたのだ。
やがて後ろから続いてベン達が遅れてやって来た、と言っても僅かな遅れだったが、その事が命運を分ける事も有る、しかしそんな事は今話すべきことではない。
「お前ら派手な入隊式に成っちまうが覚悟しろよ、殺さないでおこうなんて甘い事は考えるな、死ぬぞ」
一体何が起こっているのかを理解する前に黒い船から黒尽くめのローブを纏った怪しい者たちが降りて来た、その手には抜かれた刀剣が光る、最初からやる気満々の様だ、
「来る、後の事は考えるな、今を生きろ」
その掛け声とともにペインが切り込んで行った、一振り二振り、血飛沫と共に真っ二つになって行く人影、それを見ておれは即座に怒りを殺意に変えた、睡眠を邪魔された事など些末な事だ、相手は俺を殺しに来る、なら、俺も覚悟を決めるしかない。
相手を殺す覚悟、狩竜人になる決意をした時とは違う、何かどろっとした液体が身体に纏わり着くような不快感、こんな事の為に剣技を磨いた訳じゃない、だけどその剣技を身がいたお陰で生き残る事が出来る、その為には殺す、殺す、殺す。
心の中で何度も叫んだが、なかなか実行に移す事が出来ない、わかっている、わかってはいるのだけれど、それが出来ない。
正直に言えば、俺たちの船に乗り込んで来たくせに弱い、殺気を纏った攻撃ならどう考えてもあの特異個体や火蜥蜴には及ばず、何なら満月熊よりも劣る。
目深に被ったフードから覗く顔は真剣そのもので、その眼は狂気に満ちてはいるが、俺の身体には剣を届かせる事は出来ないだろう。
どうやらブレンドンやベン達も実力差には気付いている様で、俺と同じ様に最後の一線を越えれずに困惑している様だった。
そんな中でダンとルイスは、ハンマーテール狩りで活躍出来なかった事が心の均衡を壊してしまったのか、すでに傍らに死体を作っていた。
その眼光は鋭く光り、俺やブレンドンよりも前に進んだ事への歓喜の表情を浮かべていた。




