第35話 折れた剣の真意
何はともあれ、ようやくベッドで横になる事が出来てひと眠りしようと目を瞑り、今回の狩りの記憶をたどり始めた。
ブレンドンがベッドに腰かけたのか軋む音が聞こえて来た、休める時は休む俺は学校に居る間もそうして来た、そしてこれからも・・・。
「あああ、寝てる場合じゃねぇ」
深い眠りに落ちる前に色々と思い出してしまった。
突然の大声にブレンドンも飛び起きる、
「どうしたんだシリル、突然大きな声を出して」
「姫様の所に行っていて忘れていた、ちょっとペイン教官と話してくる」
「ダンたちが、まだ話ししてるんじゃないか」
「そうだとしても早い方が良いから、ちょっと行ってくるよ」
そう言い残して部屋を後にした、ペインの部屋にはまだダンたちが居り、今後の進退について話し合っている様だ。
「どうしたシリル、お前も進路相談か」
ペイン教官のにこやかな笑顔を見ると、ダンたちは思い留まったのだろうか、ダンたちも俺に笑顔を向けて来た、恐らくはそうなんだろう、
「進路相談と言えばそうなるかも知れないです、ちょっとこれを見て欲しいのですが」
ダンたちは顔を見合わせて部屋を出ようとした、ただこれから狩竜人を続けるのなら必要な事なので一緒に話しを聞いて貰う事にした。
俺は鞄から折れた剣と鞘を取り出した、燃え尽きた狩竜人船の船員が持っていたと思われる短剣だ。
「これを拾いまして」
「何だこれは」
折れた剣は鞘に収まらずに隙間には抜き身の刃も見える、鍔の飾りの所には逆さの剣と盾の紋章が有り、ペインはそれを見つけ、
「これを見せたのは、俺が始めてか」
恐らくは姫様の所へ行っていた俺が、これを姫様に見せたんじゃないかと危惧したのだと判断した俺は、見つけた時にベンが一緒に居たけれど、紋章の事は何も話していないとペインに伝えた、
「そうか、しかしこんなゴミを拾ってくるなんてシリルも物好きだな、これは俺が処分しておく」
「その紋章の事は知っていますよ」
「ああこれか、レイナルドさんと仲が良いから教えて貰っているのか」
「そうですが、これには深い因縁が有りまして・・・」
簡潔に昔誘拐われた事が有り、その時にその紋章に付いて教えて貰ったと話した、
「それで、これが存在しない国の紋章だって言うのかい、そうかそれは大変だ」
「茶化さないで下さい、その紋章を使っている国がどこかを知っているから、こうして持ってきたんですよ」
ペインは俺が何を言いたいのかをようやく理解したのか、ポンと手を叩くと、
「お前、騙されやすいだろ、単純だとか、そういう風に言われたことは無いか」
「言われた事は、無い事は無いですけど」
ペインは素直に認めない俺を大笑いして、その後に部屋の隅に置かれていた剣を持ってきた、
「この剣を折ってみろ」
そう言って持って来た剣を抜き横に向けた、紋章の剣を使って折れと言われても、そんなに簡単にアルデンサルの剣が折れるわけが無い、何度振り抜いても火花が飛ぶばかりでペインの剣は折れなかった、
「その剣を見てみろ、それで答えがわからなかったら俺が一から説明してやるよ」
そう言われて俺は持っている剣を見た、刃が欠けボロボロになった剣はもう何の役にも立たないゴミになっていた、
「刃が無くなっていますが、それがどういう意味なのでしょうか」
俺の言葉にペインは大きくため息を吐いて、
「それを、しっかり持っていろよ」
そう言うとペインは横切り一閃、紋章の剣の根元から断ち切った、
「つまりだ、それは俺達狩竜人が使う様な代物じゃあない、だから、お前が思っているような人たちが、そんな棒だか剣だかわからない様な物を持っていると思っているのなら、それは大きな勘違いだぞ」
そこまで説明されてようやくわかった、これはアルデンサルの剣の足元にも及ばない、ならばそんな代物を、あの姫様たちが使う訳がない、それこそアルデンサルの剣に勝るとも劣らない剣を使っている筈だ、
「という事は、これは黒龍教の・・・」
「オフィーリア姫様もそう言っていたんだろう、そう言う事なんだよ。自分たちの隠れ蓑にちょうど良いから、その紋章を使っているんだろうが、そんな物には少しでも知識が有れば騙されないって事だ、なあシリル」
ペインに何も言い返せない、項垂れて折れた剣を見つめる、折れた剣が鞘に収まらない時点で気付くべきだった、
「良かったなシリル、姫様にそんな物見せなくて」
「それは、そう思います」
俺は顔を上げる事が出来なかった、思慮深くならなければ、そう思った。




