第33話 一時の別れ
「それでは選択された素材はそちらの船へ運んで置きますので、どうぞごゆっくり」
そう言い残すと従者は部下に指示し始め、それを受けててきぱきとアルデンサルの取り分が運ばれて行った。
自分たちの分は仲間を呼んで手分けして運ぼうかと思ったが、新造船に他国の人間が上がりこむ事は、あまり良しとしないのではないかと思い言葉を飲み込んだ。
姉上様から様々な講義を受けた弟君もお疲れの様子で、ふらふらと頭を揺らしながら近付いて来た、
「雷鳥の時に姉上が丸ごと全部買い取った意味がわかったよ、そうでもしないと収拾がつかなかったかも知れない」
「そうですね、ここまで大変だとは思いもしませんでした。学校では教えて貰えませんでしたし」
「その辺は国によって違うだろうし、仲の良い国ばかりとも言え無いから、共同で狩りをしない国も有るしな。それこそブーフーウーみたいな連中とは一緒に狩りをしないだろう」
「それはその通りですね、まったく面倒くさい奴らでした」
「くくく、あいつらも俺に告白して来たからな、受ける訳無いだろうに」
「えええ、それは初耳でした。そうですか、次に顔を合わせる事が有ったら楽しみですね」
「まったくだ、俺に告白して来た男ども、その人気に嫉妬していた女ども、楽しみで仕方なかったのにお前ときたら」
「それはその、すいませんでした」
「それじゃあ、またいつか」
「はい、その時は出来る限り驚きます」
「一体何を驚くと言うのか、まあ良い、恐らくは平和な町の中では無くて血なまぐさい狩り場であろうがな、それまでは死ぬなよ」
「はい、ありがとうございます、王子様もお元気で」
深々と頭を下げてジェイミーに別れを告げた、次はいつ会えるのだろうか、もちろん会おうと思えばいつでも会える、でもこれが今生の別れになるかも知れない、それは俺達が狩竜人だから。
船に戻ると、すでに蜥蜴の素材は積み込みが終わっていた、そして俺が帰って来るのを待っていたのかペインが声を掛けて来た、
「おうシリル、思い出話は楽しかったか」
「お待たせしましたペイン教官、楽しかったです」
「そうか、それは良かった、船に乗れ出発するぞ」
ペインの言葉に俺は少し駆け足でタラップを登り船内に入った、扉を閉めるとすぐに船は浮き上がり、船首の向きがアルデンサルの方へ回転すると少しずつ加速して行く、草原でも映える白い船はまだそこに残っていた。




