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俺がただ竜を殺すだけの物語 第三章  作者: M.TOTTORI


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第32話 分配

艦橋へ上がる階段を登り、後ろを振り返ると艦長室がある。

レイラがドアをノックして姫様に入室許可を取り扉を開けてくれた、ジェイミーに続いて入室をすると、顎の下で両手を組んでいる姫様が座っている。

姫様に促されて目の前のソファにジェイミーと座り、その後ろにレイラが立った。


「ゆっくりと話す事が出来たか」


とてもやさしい声だった、弟へ話しかける時、姫様は俺の姉と同じ様な声を出すのを初めて聞いた。


「はい、学友との思い出話は楽しかったです」


「シリルも楽しんで貰えたか、無理を言って呼びつけてしまったからな」


「とんでもございません、とても楽しい時間でした」


「そうかそれならば良かった、またシリルに愚痴でも言ってやしないかと心配していた所だ」


「はい、それはたっぷりとお聞きしました」


俺の言葉に姫様は口を押えて笑い、レイラも声を殺して笑っている様だ、ジェイミーだけは俺の方へ視線を向けて来たが、それは腹を立てたのでは無く口元も緩んでいる所を見ると、姫様たちには周知の事実だったようだ。


「よしそれでは甲板へ行こうか、準備が出来ている様だ」


「姉上も来られるのですか」


「シリルが遠慮してはいけないからな、私が取り分けてやろう」


「ありがとうございます」


よくわからないまま姫様に頭を下げ艦長室を出た、甲板にはすでに骨が並べられており、肉を纏っていない蜥蜴はとても小さく見えた。


「ようこそおいで下さいましたシリル様、さっそく分配をしたいと思います」


俺達の姿を見てすぐにひとりの従者が話しかけて来た、他の従者は微動だにしないところを見ると、この話しかけて来た従者は身分が上の者なのだろう。


「まず炎袋が有りましたので、これはシリル様がお持ちください。簡単な加工で火を熾したり出来ると思いますので、アルデンサルの加工屋に見せると良いでしょう」


「わかりました、そうします」


竜からでなくても、炎を出す獣なら体内に炎袋を持っていて様々な用途に使われる、とりわけ火を熾す事が出来る炎袋は需要も多い。


「頭部を見てみよ、大体の炎を出す奴らは舌の下あたりに管が有り、口を閉じていても炎を出せるように顎が割れておる。こやつもそこは骨が繋がっておらず、下から切り上げたシリルは見事としか言いようが無い」


姫様がジェイミーに向けて講義を始めた、俺も滅茶苦茶に褒められているが、体勢を崩していたから下から切り上げただけなんだけど、当然知っていた風を装おう。

でも偶然とはいえ、蜥蜴の弱点を攻撃出来た事で命拾いをした様だ、上から振り下ろしていたら剣を骨で止められてあっという間に葬られていた事だろう。


「ちょうど頭部は半分に割れていますので、どちらでもお好きな方をお持ちください」


姫様の邪魔をしない様に気を使っている従者は、姫様が話し終えるのを待って俺に話しかけて来た、


「それではこちら側のを頂きます」


正直どっちでも構わないから手前に置いてある方を指差した、


「次に胴体ですが、あばら骨は全部切り取りました、内臓を出すにはその方が都合が良かったので」


この火を吐く蜥蜴が、俺の知っている蜥蜴と構造が同じなら、その方が内臓の処理はしやすいだろう。


「そして腕の骨が・・・」


そうした事を延々と繰り返し、全身の骨を分け終えた後で、切り取られた肉と臓物においても同じようにどう分けるかを繰り返した、こう言う事を言う物じゃ無いが、非常に面倒くさい。

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