第31話 ジェイミーの謝礼
レイラに窘められて気が抜けてしまったのか、ジェイミーの圧力が急速に減り、両肩を俺に押されていたために二歩三歩と後ろへよろめいた。
「はぁ、確かにシリルは単純な奴だったな、もっとわかりやすく言わなかった俺が悪いな」
「そんなに単純だったとは思いませんが、わからなかったのは事実です」
胸を張って俺がそう言うと、レイラとジェイミーは笑い始めた、何か変な事を言ったのだろうか。
「ああ楽しかった、久しぶりに話せて良かったよ。本当は俺の姿にもっと驚いてくれると面白かったんだがな」
そう言ってジェイミーは右手を差し出して来た、その後ろからレイラもそっと歩いて来て、
「私にも楽しい時間をありがとうございます」
そう言ってレイラは左手を差し出して来た、差し出された手を俺は握り返し、
「こちらこそお二人がいたお陰で楽しい学校生活が送れました、そしてレイラさんの弓のお陰で命を救われました、この御恩はいつかお返し致します」
「そんな事は狩りの現場では当たり前ですよ、でも返して貰える物は貰って置きますね」
そう言ってレイラはあの頃と変わらない笑顔を見せた、
「お礼を言わなければならないのは俺の方さ、お前には何度も助けられている、俺に出来る事なら何でもするから、いつでも俺に頼ってくれて良いぞ」
「そうですか、ありがとうございます。でも頼るとしたら・・・」
「頼るとしたら」
俺の言葉にジェイミーが顔を近付けて聞き返して来た、昔の面影が残っているジェイミーは凄く美男子だ、思わず頬が赤くなってしまったが俺は質問に答えた、
「多分お金の事ですね」
それを聞いてジェイミーは大声で笑い出した、レイラも口元を押さえていても隠し切れない程の笑い声をあげている、そんな中、俺は照れ隠しに頭を掻きたくなったが、二人が握った手を離してくれず、二人が笑い終わるまで手持無沙汰に過ごした。
「それじゃあそろそろ姉上の所へ戻るか、あの蜥蜴、仮火竜だっけ仮竜だっけ、あれの清算をしないとな」
「清算・・・ですか、私は一太刀入れただけだし、止めは従者の方たちがやられましたよね」
「あ、狩竜人法は勉強していないのか、初太刀を入れたものは半分の権利を持つ、だぞ」
「それでしたら、レイラさんの矢の方が先なのでは無いですか、それが無ければ私は死んでいたかもしれませんし」
「詳しい経緯はわからないが、今回みたいに二つ以上の勢力で合同で狩りをした場合に、遠くから最初の矢が当たったと主張をし始めたら揉める元だろう、だから初太刀と言って初矢とは言わないんだ」
「そうなんですよ、しかもシリルさんの初太刀は致命撃でも有りますから、大手を振って半分を主張しても誰も文句は言いませんよ」
「そこも俺が欲しかった理由なんだが・・・な、甲板に行けば並べて有るはずだから、姉上の所へ行った後で見に行こう」
「はい、わかりました」
二人はにこりとして俺の手を離し、振り返ると扉を開けた、そこには複数人の従者が聞き耳を立てており、ジェイミーが睨みつけると一目散にどこかへ走って行った。
「まったく困った奴らだ」
「はい、失礼な事を言わなくて本当に良かったと思います」
なんてね、本当の事を言うとジェイミーも気付いていたと思うけど、気配でばればれだったんだよね、まあそうで無くてもジェイミー王子に向かって失礼を働こうものなら、あの怖いお姉様が立ちどころに現れるだろうけど。
「しかし、お金が欲しいって俺からどれだけせびる気なんだ、自分の船でも欲しいのか」
「多分、そうなんでしょう」
「なんだ、金が欲しいって言ってただろう」
「そうなんですけど、そうじゃ無いと言うか、今の自分には、自分の船は要らないじゃ無いですか」
「まあ、そうだなアルデンサルの中古船が有るからな」
俺の所へ来なかった奴には、中古の船がお似合いだと言わんばかりのジェイミーだったが、そんな程度の煽りではレイに鍛えられている俺には通用しない、
「はい、狩竜人武器も使わせて貰えますし、何不自由なく過ごせていますしね」
「それでも金が欲しいと」
「親孝行もしたいですし、姉にも幸せになって貰いたいですし」
「そんな程度の金ならもう持っているだろう、俺に頼み込んで見ろ、船の一隻二隻・・・はちょっと難しいが、船を貸してやるくらいなら・・・まあ、何とか」
「そうですね、その時は力を貸してください」
「おうよ、任せろ」
そう言ってジェイミーは胸を叩いた、あの頃は豊満だった胸が、今は逞しい胸に変わっている。




