第30話 ジェイミーの内申書
レイラはジェイミーから目を逸らし小声で何かを呟いている、恐らくは謝罪の言葉だろうけれど、今のジェイミーにどれだけ伝わるかはわからない、それでも暫くの間レイラの謝罪は続き、ジェイミーがレイラの頭に手のひらを乗せるとレイラは小さく悲鳴をあげた、
「もう良い、事実なのだからな。ただし、次は無いぞ」
ジェイミーの言葉には怒気が含まれていた為、レイラは悲鳴の様な返事をした。
さて、そっちの話しはついたのだろうけれど、こっちの話しは・・・きちんと聞いて置いた方が良いのだろうか。
「あー、シリルの事を認めていたのは姉上だけでは無いのだよ、この私も認めているという事だ、何度も剣を交えたからな」
ジェイミーは照れくさそうにしながら俺の方へ向き直りそう言った、なる程、憧れていると言われるとちょっとドキッとしてしまうが、認めていると言い換えれば、俺にとってはとても名誉な事になる、なにしろ一国の王子様と、世界最強のお姫様に一目置かれているという事だからだ、それなら良い、その方が良い。
「それは大変光栄です、剣に嘘を吐かずに揮うて参りました失礼をお許しください」
「ふむ、だから良いのだ。私も全力を出した、その上で何度も退けられた、その度に自らを追い込んだが、結局一度も叶うことは無かったな」
「それは望外の喜びです、私もぎりぎりの勝負でしたので、勝ちに慢心せずに精進する事が出来ました」
ジェイミーは俺の言葉を聞き小さく何度も頷いた、ジェイミーとは何度も剣を交えたが、その一つ一つを思い出している様に見えた。
暫くの後、ジェイミーははっと顔を上げ、
「お前は、俺の所に来ると思っていたんだがな」
険しい顔のジェイミーが俺の方へ歩み寄りながら言った、ジェイミーの言っている事が良くわからない、俺は両手でジェイミーを制しながら、
「どういうことですか、今こうして来ているじゃ無いですか」
俺の的外れな返答にレイラが苦笑いをした、本当なら声を上げて笑いたかっただろうが、今置かれている状況がそれを許さない、
「そうじゃ無い、わざわざ姉上に書状まで渡して貰ったのに、なんでそれを使って俺の所に来ない」
勢いを増すジェイミーを宥めるのも大変だが、昔の姿を思い出すと、胸を押して追い返す事に抵抗がある、肩を抱いているのですら俺の鼓動は高まっていると言うのに、
「無理をしてまで私の元に来なくても良いと姫様に言われましたので、ジャッキー先輩とのお付き合いも有りましたし」
「まったく言葉をそのまま取る奴が有るか、それにしてもアルフレッドの忌々しい事よ」
「シリル様は昔からそういうお方でしたでしょう、はっきりと言われなかったジェイミー様の落ち度ですよ」
これ幸いとレイラが参戦して来た、しかし、ため息交じりにレイラに言われたが、俺はそんなに物わかりが悪いのだろうか。




