第23話 大団円
レイラが何を言っているのか理解出来ないでいると、上空からもう一人ローブを被った男が降りて来た。
他の者たちの被っているローブとは違い、肩と背中に刺繡が施して有り、明らかに他の者たちとは違う雰囲気を漂わせている。
地上に降りた男の姿を視認した従者たちはすぐに跪き、あの姫様すらも頭を垂れて男を出迎えた。
「姉上、そのような事はしないで下さいと頼んだでしょう」
とても綺麗な透き通るような声の持ち主のその男に窘められた姫様は、頬が緩み目が細くなりとても満足そうな顔をしている、
「その方がシリルと言うのか、話しは姉上から聞いておる。なかなかの腕前のようだな」
「有りがたきお言葉、ですが・・・」
「ん、どうした。申して見よ」
「はい、大変失礼なのですが、お名前は何とお呼びすれば良いのでしょうか」
「ははは、我が名を知らぬと申すか」
「いえそうでは無くてですね、その、以前と同じ名前で呼んで良い物かと」
「これは異なことを言う、我が名を知らぬと今さっき言ったでは無いか」
さてどうした物か、にやけた姫様と同じくにやけたレイラ、それらとは対照的に今にも飛び掛かってきそうな従者たち、これは迂闊な事は言えないぞ、
「お久しぶりです、ジェイミー王子」
従者たちと同じ様に跪いて頭を垂れた、大きなため息が聞こえ丁寧な受け答えをしているのにジェイミーは明らかにイライラしている様に見える、
「そんなにすぐにわかるのか、シリル」
「はい、それはもちろん、3年間を共に過ごしたのですから」
「そうなのか、まさか最初から気付いていたって事は無いよな」
「大変申し上げにくいのですが、よろしいでしょうか」
「よい、言ってみよ」
「はい、最初に寮でお目にかかった時から、その、私の男が、その、女性として反応しなかったものですから」
「はあ、なんて事だ、少しは自信があったんだけどな。お前の勘は凄いな、アントニオは露骨に色目を使って来たというのに」
「今のお姿を見ても気付かないかも知れません、それこそ目の前で裸になるぐらいはしませんと」
「無(礼な)」
俺達の会話を聞いていた従者が、俺の方へいきり立って向かってくる前に姫様に制止された、
「学友との久方ぶりの会話を邪魔するな」
姫様に止められた従者は再び跪き、離れていてもわかる程に震えている、ちょっとかわいそうな事をしてしまったかもしれない。
「まあ良いわ、ゆっくり話しもしたいが先にやる事を済まそうか」
「はい、お時間を頂けるのなら」
「ああ、その時はレイラも連れて行く」
そう言ってジェイミーは従者たちに指示を出し始めた、レイラは俺の方へ手を振ると従者たちと一緒に竜の死体を一か所に集め始めた、
「船まで戻るのだろう、私の船で送ってやろう」
「あ、大変ありがたいのですが、私たちの仲間を探しておりまして」
「おおそうか、それはこいつらの事か」
上空に狩竜人船が見えたので、身を潜めていたダンとルイスが敵か味方かを確認するために出て来たようだ、すでに二人は従者に成すすべなく捕獲されていた。
「生きていたか、ダン、ルイス」
「ああシリル助かったよ、しかしお前は凄いな、グッドゲームの王子様と知り合いだったんだな」
「ああ、王子様と言って良いのお姫様と言って良いのか」
「何を言っているんだ、シリル」
「ああ、まあこっちの話しだよ。それよりも、ブレンドンたちを迎えに行かないと、無事かどうか心配してるから」
「そうだな、みんな無事なら良かった。俺達は、あの変な頭のハンマーテールに追われてさ、必死に逃げ回っていたんだ」
「わかるよ、俺達も似たようなもんだから」
「そうなのか、あいつを何とかしないと、船へ帰れないかも知れないけど」
「大丈夫、それはもう狩り終わったから。ただ荷車が壊されちゃったから、尾の持ち運びには苦労するだろうけど」
「なんだシリル、荷車なら貸してやろうか」
会話が聞こえたのかジェイミーが間に入って来た、当然だけれど俺以外の奴らは跪いた、
「ありがとうございます、大変助かります」
「気にするな、なんなら一緒に森を歩きたいぐらいだが・・・」
王子の言葉に従者たちが色めき立つ、それをわかっていたのか王子は従者を宥めると、
「今はこんな風だから、何人か従者を連れて行け、怪我人も居るのだろう」
「ありがとうございます、それともう一つお願いしても良いでしょうか」
「ほう、なんでも良いぞ」
「バケツと水を貰えますか」
俺はベンに水の入ったバケツを渡して、ダンとルイスを連れて荷物の積み込みを手伝う事にした。




