第19話 宴の跡
「ここら辺には獣道が出来ているな、草が倒れている所は寝床だったのかな」
時折見つかる草の倒れている空間は、ベンの言う通りハンマーテールの寝床だった場所だろう、普通ならそんなところを突っ切ったりはしないのだが、寝床の主はすでにばらばらになって永遠の眠りに付いてしまっている。
そこには数々の宴の後も有り、草食動物の骨や恐らくは満月熊の骨と思われる物と一緒に人骨が散見された。
嫌な予感が頭を過ぎったが、服や装備が明らかに違う為、すぐにベンとルイスの物では無い事は分かった。
「違うとはいえ、あんまりこれは見たくは無かったな」
「俺たち以外にここに入り込んでた人が居たんだ、喰い残しの感じからまだ日は経っていないな」
「シリル、良く触れるな、ごめん俺は無理」
ベンは顔を背けて少し離れて行った、おれもこんな事はしたくは無いが、調べられる事はすべて調べるのが俺達狩竜人だろう。
「何かわかったか、早くここから離れようぜ」
ベンが俺を急かして来た、そうは言っても何かしらこの死体がどういう者なのか、わかる物を見付けて置きたい。
「折れた剣が有る」
折れた剣と死体の腰に有った鞘を手に持ち、鞘に納めてみた。
刀身が歪んでしまっているのか収まりは悪かった、その点アルデンサルの剣は折れても何の抵抗も無く鞘に収まった。
そんな事を考えていると、剣の鍔の飾りに逆様に刺さった剣と盾の刻印を見つけた。
「これは・・・」
「どうしたシリル、もう行こうぜ」
ベンが再び俺を急かせた、頭の中がぐちゃぐちゃに混乱して考えが纏まらない、何でこれがこんな所に有るのだろうか、一体ここで何をしていたのか・・・。
「おい、大丈夫か。なんか変だぞ」
我に返った俺はベンの言葉に何度も頷いて空返事をした、そして一筋の風が通り抜けた、
「ちょっと待って、少し匂う」
「ああ、そりゃあこれだけ死体がありゃあ匂うだろうよ」
「いや、そうじゃ無い。何かが焼けたような匂い、山火事じゃ無ければ火を使うのは・・・」
「ダンとルイスだ」
俺とベンはお互いを指差し合い同じ名前を叫んだ、特異個体から逃げた先で火を熾して自らの居場所を知らせるような事はしない筈なのだが、二人が見つかるかも知れないという喜びによって失念してしまっていた。
すぐに風向きを確認して焼けた匂いのする方向へ進むと、俺達を大いに驚かせる物がそこに有った。
黒焦げに焼け落ちた狩竜人船、大きさはシンディたちが非常勤講師として学校に来た時に乗って来た船と同じくらいで、形も良く似ている。
「何でこんな物がここに有るんだ」
俺達は顔を見合わせて同じことを呟いた、そして俺達は大きく頷くと物も言わずに焼け落ちた狩竜人船の探索を始めた。




