第14話 狩るか探すか
特異個体から逃げながらどうすれば狩れるかを考えていた、あの尾の形は斧の形に近い、振り廻して攻撃をしてくるのだとしたら、あのハンマーテールの死体の異様さの説明がつく、それに木の幹に付いていた傷もあの斧の様な尾で傷付けた物なのだろう、それと気に掛かるのはあの頭の形、目を覆い被せる様に尖った角はかなり視界を遮っているのでは無いだろうか、もしかしたらそこに打開策が有るかもしれない。
それと逃げながらだからわかった事だが、とてもじゃ無いが命の危険が差し迫っているのに、悠長に木の枝を捻じり折る事など出来ない。
恐らく残してあった狩竜人の足跡は探索中に付けた物なのだろう、だとしたら飛躍的に生存している可能性は高まる。
「ここら辺で良いだろう」
ブレンドンが右手を上げてみんなを制止させた、今回は俺が声を上げていないのでベンも上機嫌の様だ、
「不思議な事に追いかけて来ない、あれだけの殺戮をしておいて変な話しだが」
「確かに変だ、俺達に気付いて待ち伏せをしていたなら、もっと執拗に襲って来ても良い筈だな」
ブレンドンの言葉に同意した上で俺の意見を述べた、そういう風ならベンも文句は無い要だ。
「それと、とてもじゃ無いが走りながらじゃあ木の枝を捻じる事なんて出来ないな、今まで俺達が追いかけていた狩竜人の足跡はダンとルイスの物だとしたら、あいつに追いかけられながら付けた物じゃあ無いと思う」
「それじゃあもしかしたら、それほど遠くへも行って無いかも知れないって事か」
「あくまでも憶測でしか無いけど、あの広場を見つけた時に、後ろから特異個体が走って来る事に気付いてどこかへ逃げたのかもしれない」
「後ろからなら俺達の居る方とは反対になるのか・・・、あながち間違っていないかも知れないな」
ブレンドンはそう言って考え事をし始めた、これからどうするのかを思案しているのだろう、ダンとルイスを捜しに行くのか、特異個体を狩る事を優先するのか。
あの特異個体は常にあそこに居るのかわからない以上、答えを導き出すのは困難だろう。
広場を迂回して二人を捜すのだとしたら、突然襲われないために大きく迂回をしなければならないし、それで安全を確保できるとは言えない。
草むらを掻き分けて進むのは最悪の選択だし、ここは脅威を取り除く事を最優先した方が良いと思うが、真正面から立ち向かって、すんなり狩らせては貰え無さそうだ。
「みんなはどう思う、二人を捜す事を優先するか、危険を取り除くか」
ブレンドンの答えは俺とほとんど同じ結論なようだ、それ以外の答えは無いとも言えるが。
「二人の安全を確認したい」
ロバートが答えた、確かにそれはとても大事な事だが、今の俺とは違う考えだ。
あの特異個体をそのままにして二人を捜索するのは、目を瞑って森の中を彷徨うに等しい、あれだけのハンマーテールをいとも簡単に屠ってしまう程の怪物に無防備な背中を見せ続ける訳にはいかない。
「確かに二人を捜したいけど、それよりもあの特異個体をどうにかしてからじゃ無いと、二人を見つけたところで以前危険なままだから」
バーナードも口を開いた、ロバートも何か反論しようとしたが、言葉が出て来ずに何も言う事は無かった、
「ベンとシリルはどう思う」
「俺はブレンドンに任せるよ、お前の指示に従う」
ベンが答えた、それを聞いてブレンドンの視線と他のみんなの視線が一斉に俺に集まる、
「俺はあの特異個体を狩る事を最優先にしたい、特異個体が潜んでるかも知れないからと広場を迂回するとなると二手に別れる事になる、それじゃあせっかくの戦力が半減してしまう。特異個体の足跡があの広場まで付いていた事を考えると、あの広場にあいつの巣が有るかもしれない、もしそうなら、こっちも準備をする事が出来る」
「あの広場に何も無かったとしたら」
俺の返答にブレンドンが尋ねて来た、それは確かにそう思うのは仕方が無いだろう、
「その可能性も有る、有るけど、俺の勘があそこに何か有ると言っている」
「勘かぁ・・・」
ブレンドンはまた考え始めた、他のみんなも俺の勘と言う答えに納得はいっていない様だ。
「そういうのはやっぱり大事だよな、俺も何か有ると思う」
ブレンドンはそう言い切った、それを受けてみんなも俺の顔を見て、それから鼻で笑う者、頷く物様々だったが、ブレンドンの決断に従う様だ。
「隊列を決めよう、俺とシリルが先頭、その後ろにベン、後衛をロバートとバーナード」
「おう」
「後衛は前衛が負傷したらすぐに前に出る事、ベンは俺とシリルの連携の補佐をしてくれ」
左右から挟み込むように俺とブレンドンが攻め、ベンが真正面に立つことになるが、恐れくは俺かブレンドンの方へ身体の向きを変えるだろう、そうしたら後衛が先回りして、二人で取り囲むように動かないといけない。
簡単な様で難しく、かと言って出来なければ前に進む事も出来ない、やらなければならない。
「しかしあの一撃を見たか、確かにあの尾の攻撃には盾は使い物にならないな」
「間違いない」
ブレンドンの言葉に俺達はみんな納得をし、笑顔のまま逃げて来た道を戻った。




