第11話 木に有る傷痕、気になる傷痕
「シリルとベンが見て来た事で、他に何か気になった事は無いか」
ブレンドンが最終決断をする前に尋ねて来た、そう言えば一つ気になっている事が有る。
「かなりの量の死骸が有ったから、この辺りの生きたハンマーヘッドは、その特異個体だけかもしれないぜ。もしそうなら、ハンマーヘッドを狩るという任務は達成困難になるかも、幸い尻尾は沢山転がっていたがな」
ベンが俺の前に口を開いた、確かにベンが言う通りだと思う。あの大きさの肉食生物の縄張りは相当広大じゃ無いと食事を賄えない、別のハンマーヘッドの群れを捜しに行くとしても、相当な距離を移動しないといけないだろう。
それらは接触を避けるために獣道で繋がっているとは考え辛いため、道なき森を踏破しないといけなくなる、当然時間に対して進める距離は短くなり、期日が決められている以上は、余分な行程は踏みたくはない。
「確かにその通りだな、群れが全滅していると考えれなくも無いとすると・・・。尻尾だけ持ち帰り、今回の状況の説明をして、判断を仰ぐのも有るか・・・」
ベンの意見に対してブレンドンが思慮しながら答えた、それ以上の返答が無い様なので手振りでブレンドンに合図をすると、困り顔のままブレンドンに発言を促された、
「特異個体を、狩るか狩らないかの判断はブレンドンに任せる、それは俺たち全員で決めたリーダーなんだから俺達はそれに従う。ただ狩るにしても、逃げるにしても気になった事が有って、木の幹に激しく斬り付けたような傷が有った。ベンとも相談して爪の後じゃ無いかと推測をしたけれど、獲物を追いかけまわしている最中に、爪痕が残る程の蹴りを出しているとは思えなくて。ハンマーヘッドが獲物を追い詰めた後で、前方宙返りをして尻尾で攻撃をするという事は知られているから、追い詰めた後ならそういう傷が付くかも知れないけれど、走りながら追いかけている最中に宙返りをしていると思えなくて、ちょうどこう首の辺り、この高さに水平に傷痕が付いていた」
そう言いながら俺は首の辺りを手刀でとんとんと叩いた、その時にぶわっと身体中を寒い物が駆け回る感覚に襲われた、まさしく気になっていた事とはこの事だと思った。
走って逃げる俺達の後ろから首の辺りを目掛けて襲い掛かって来る、後ろに目が無ければ躱す事は出来ないだろう、ハンマーヘッドの硬く大きく変化した尻尾がそれを防いでいたとしたら、そこら中に血糊が付いていた説明も付く。
「なる程、その話しは聞いて置いて良かった。何か変わった事をしてくるかも知れないって事を、知っているだけでも有益だからな」
「具体的に傷をつけた物が牙なのか爪なのかはわからないけど、食べる訳でも無いのに大量のばらばらにされたハンマーヘッドの死骸を見て、その場で帰還を判断しちゃったから」
「俺達は殺戮現場を見て無いから、どれだけ凄惨な状態だったかがわからない、だから、俺はシリルの判断を尊重するよ」
ブレンドンの言葉に救われた気がした、やはりこのまま俺達の代表で良い気がする。




