第九十二話「とっておきの派手」
トルミナ、京愁、マーカスは三人掛かりでべレムナイトを取り囲み、
険しいながらも互角に戦えると踏んでいたが、
変形したソレの攻撃は余りにも苛烈であり、
数の有利など全くなく、ただただ翻弄されていた。
「なんなんですかあの形態はっ!?
ぐはぁっっ!」
トルミナが重い一撃で弾かれ、
カバーが間に合わなかった京愁に激突する
「一人であれだけの仕掛けを制御するなんて
どんな演算処理能力だ、あああぁぁぁっっ」
なぜここまで一方的なのか、
それはまず第一に尋常じゃないほどの加速だ、
一瞬姿を捉えたと思えばこちらが吹っ飛ばされている。
「フッ、ウイルスごときにはできない芸当だろう??」
鼻で笑うべレムナイト、
次はその声と逆方向から攻撃を受け
二人はさらに飛ばされた。
そう、第二にこの別方向からの攻撃が厄介なのだ、威力はそこまで強く無いのだが、
これのせいでこちらの反撃が鈍るのである。
「これでどうだ!!」
マーカスがいつの間にか少し離れた場所で相手の動きを観察し、
多段ロケットミサイルをべレムナイトの動きに合わせて展開、見事に命中させた。
「やったかっ??」
京愁が吹き飛びながらべレムナイトが爆炎に包まれる姿を見て喜ぶ
しかし冷静なトルミナは炎に飲まれたはずの奴がゆらりと動いたのを見逃さなかった。
「まだです! 火の中の影が動いています!!
.....噓でしょ? 全く効いてない!?」
「お粗末な火力だな、こんなくらいでは.......ん?」
炎が掻き消え、無傷でそこに立つべレムナイトが
驚愕するトルミナたちにダメ出しし、かと思えば何かに気付いて天を仰ぐ
それを見て三人も同じように空を見た。
「クソッ、加勢してぇけど俺の実力じゃ足手まといになっちまう
とはいえあの三人でも劣勢だ、なんかいい策は......ん?
あいつ急に空なんて見てどうし.....?
んん? 何だアレ??」
三人とべレムナイトの戦いを見ていることしかできないコールたちや人機軍も
異変に気付いて空を見上げる。
「上空に何か居ます! あれは....ロケット.........?」
人機軍の何名かが望遠スコープを使用して目標を捉え報告した。
「操縦席がある模様、ズームして確認します.......って教皇様が乗って居られる!?!?」
「何を言ってる、そんなところに教皇がいるはずないだろう
あの屑は街中で馬鹿をやった後に取り巻きがシェルターかどこかに連れて行ったはずだ」
未確認ロケットにありえない人物が乗っているとの報告にツヴァイが反論するが
そのすぐ後に街のスピーカーからその人物の声が聞こえてきた。
「おお!迷える子羊たちよ
教皇ヤンソルム様だぞぉ〜〜」
「なんだ!?スピーカーからどっかで聞いたことある声が....」
確かに聞こえた聞きたくない声に聞き間違いか?と疑い呟くツヴァイに
追い打ちをかけるようにその人物はスピーカーからまた声を出す。
「ヨッス、ちょっくら上空から回線使わしてもらってるわ」
「ファッ!? あの屑教皇!?
まじでロケットに? いやでもなんで!?」
まだ半信半疑だが仲間の報告やこのねっちょりした声(個人の感想です)が
アイツの居場所をハッキリ伝えてくるため、ツヴァイも信じざる負えなかった。
「でも、あの教皇様.....
以前とは雰囲気がかなり違うような...?」
ナフタが教皇を名乗る人物の特徴に違和感を感じるが
自称教皇がどこから聞いているのか反論してくる。
「何を言う、俺は教皇ヤンソルムであるぞいぞいぞい」
「うん、喋り方が......」
「なんかおかしい......」
ララとリリも教皇の口調が以前と違うと声を揃えた。
「悪いな、ちょっと色々混ざっちまいました
たまにあるんだよね、色んなとこで変装していると、
どれがホントの自分か分からなくなるのよ~」
「変装!?
あいつ偽物なのかよ!!」
コックピットの映像が街中に展開されているモニターに映し出され
そこには確かにあの教皇の姿が映っていた。
「何年も前から計画していた聖街での作戦だったが、まさかこんな形で失敗するとは....
まあ過ぎたことはもういいだろう。
不本意だがコラプト様の命令だ。今回だけ手を貸してやろう、感謝しろよ雑魚ども?」
「コラプト...?まさかお前!
コラプト・グウェイドの手下なのか!?」
予想外に出てきたコラプトという名前に
シンは思わず声を大きくして教皇に問いかけ
そのやり取りにコメットも屑が絡んでいることを察知して割り込んできた。
「グウェイド?
またあの屑が絡んでるわけ?」
「いかにも!俺はボウリー
コラプト様の右腕だ!!」
殺意のこもったコメットの質問も物ともしない偽教皇は
自身の名前を高らかに名乗る。
「ボウリー!?
傭兵団の仲間だったあいつじゃねぇか!?!?」
これまた予想外の名前に今度はコールが驚いて叫ぶが
その話を聞いてボウリーも興味深そうに反応した。
「んん?ああ、それは俺の配下のやつだな
憧れるのはいいが下っ端が敢えてボウリーを名乗ったか.....
それは感心しないな、よし後で粉々にしておこう」
「屑の右腕かなんだか知らないけど
ごちゃごちゃ言ってないで降りてきなさい...よっっ!!」
映像に映るボウリーなる人機の一つ一つ動きが癪に障るのか
屑の仲間というのが気に入らないのか、その両方か
コメットが辛抱たまらず地面に転がる鉄パイプを拾い上げて
ボウリーの乗るロケットに投擲した。
「うぉぉぉっ!? あっぶねぇ〜
当たったらどうすんだよバカタレ!!」
「当てるために投げたんでしょうがっ!」
鉄パイプ一本分横に逸れ不発に終わった攻撃にお互い怒鳴り合う。
「さっきも言ったがこっちは手助けしてやろうって言ってんだぞ!?」
「んなもん信用できるかっての」
あくまで協力的な姿勢を崩さないボウリーと
それを全く信用できないコールたち、話は平行線だったが
そこへ厄介にもべレムナイトが入ってくる。
「こんな時に仲間割れか??」
いい加減変なやり取りから全く進展しない相手方に痺れを切らしたのか
直近でボウリーと怒鳴り合っていたコールに急接近するべレムナイト
そのとんでもないスピードの一撃をなんとかかんとか受け流してコールが吹き飛ぶ
「くっっ!!」
「だいぶ消耗しているようだな? これではすぐに片が着きそうだ。
仲間割れしてるみたいだが警戒して危険な芽は摘んでおくとしよう」
防戦一方の人機軍を見下しながら新手を警戒し始めたべレムナイトが
今度は一気に空高く舞い上がっていった。
「目立ち過ぎたな、こっちに来やがるッッ!!」
急接近する相手の動向を捉えようとモニターから見切れるボウリーに
コールが納得はいかずとも指示を飛ばす。
「手助けするにも準備してねぇだろっっ
とりあえず今は逃げろっっ!」
あっという間にボウリーの真下百メートルに接近するべレムナイト
その形状は先ほどコメットが投げた鉄パイプよりも太く鋭い一本の槍のように形を変え
ロケットを貫かんとグングン昇っていく。
「準備してない?逃げろ??
バカ言うな
準備ならもう....終わってる」
真下の轟音など無いかのように冷静な声で喋るボウリーが
ロケットの中で幾つかのボタンをピッピッと押した。
「風穴を開けてやろう」
標的の撃破を確信し、それでも冷たく無機質な声を出すべレムナイト
だがその目の前にはロケットではなくオレンジ色の光が一面を覆っていた。
「なんだありゃ.....」
「凄まじい攻撃だな.....」
地上から見上げていたコールたち、
その視界に隕石が降り注ぐのが見えた。




