表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
97/97

番外編「写真入手大作戦ー滅ー」


――拝啓、ショウ様へ


赤薔薇の副官マーシャです。


私は実質この赤薔薇で一番上の人間として

貴方様に謝らなくてはなりません。

こうなるもっと前から貴方には謝罪すべきだったのだと、

今にしては後悔ばかりする次第です。


今頃貴方は聖街に着いている頃でしょうか?

良いですね、聖街。

さぞかし荘厳な大理石造りの教会が街の至る所に建っていることでしょう


さて、コチラの話に戻りますが、

我々赤薔薇はというと、現在「ショウきゅんヘブン教」なる異教が広まり始めました

信者は赤薔薇とウィル・フライトの女性人機たちです。


本当に申し訳ないです。

何故こんな事になったのか、

かつての美しい内装だった赤薔薇が......腐った汚薔薇の如き乱れた装飾に........


「ぐぅっっ!!!」


謝罪文であるはずが一切本人には送られないものを

一心不乱に打ち込んでいたマーシャ、その打ち込む強さは次第に増していき、

かと思えば突然打ち込みを辞めて耐えきれずに机へと額をめり込ませる。


「恥すぎるっ、幾らなんでも恥過ぎるっっ!!」


ガンガンとヘドバンを繰り出して机に深く深く頭を下げ、

しかし勢い余って?激突し机を自分より低くさせるマーシャの部屋に放送が鳴った。


『副か、あっ間違えた

助祭マーシャは今すぐ礼拝堂へ来なさい

今日はショウきゅんヘブン教の立教である目出度い日

何人(なんぴと)もこの日を(ないがし)ろにすることは(ゆる)されないのです。』


「き、来てしまった.....」


ガタリと椅子を吹き飛ばして立ち上がったマーシャは

迫り来る信徒たちの足音に焦りながら立ったまま打ち込みを続ける

部屋のすぐ目の前まで足音が聞こえる頃に打ち終え、しっかり保存して電源を切り、隠した。


「助祭司マーシャ様!

お迎えに上がりました!!」


バンッ!と勢いよく開け放たれた扉から赤薔薇の人機が数名雪崩込む


「.......すまない、

今日という日に祈りを捧げていたところだ

すぐに向かおう」


「こんな日にも祈りを怠らないとは.....」


「何と敬虔な方だ....」


彼女たちから見ると、マーシャには後光でも差しているのか

膝を付いて両手を組み合わせる体勢のままマーシャは迎えの者たちに優しく返答する。

立ち上がってその者たちをゆっくりと通り過ぎ、

扉から廊下へ出るマーシャは先程打ち込んだ最後の言葉を心の中で読み上げていた。


ーー


ショウ様、これから貴方のアレをお披露目するという儀式をもってして、

このショウきゅんヘブン教なる宗教が始まろうとしています。


何かの間違いであって欲しい

夢であって欲しい

そんな願いを込めながらこれを打ち込んでいます。


貴方がまたこの地を訪れる時までに、きっとこの宗教を崩壊させてみせます。

「貴方は世界の希望であって欲情のはけ口ではない」


そう心から思う、一人の友人としてーーショーメン


ーー


両手を組み合わせ厳かに歩くマーシャだったが、

いつの間にかあの部屋の前に到着していた。

その部屋とは以前の隠し部屋、

今では手前の司令官室までもが礼拝堂として改装されている。


「助祭司マーシャ様、到着されました。」


付き人が扉の奥に声をかけ、両側の扉を開く、

開かれた部屋の内部を見れば

最奥にショウの姿を形作ったモザイクアートが教会のステンドグラスみたいに配置され、

その前には赤い布が被せられた額が木の台に置かれている。


「良く来ました。助祭司マーシャ、こちらへ」


額の横にはウェディングドレスを纏った人機が手招きして立っている。

ウェディングドレス人機の顔は布で隠され見えないが、

以前司令官室に報告へ赴いた際、

あの人のポケットから飛び出ていた布が顔に被せられているとすぐ分かり、

その人物が間違いなくバレッタだとマーシャには解るのだった。

(まあ、そんな物など無くてもこの中で一番ヤバそうなヤツがバレッタに決まっているが)


『皆さん、お揃いになりましたね?

それでは、これより立教の儀を始めるといたしましょう』


バレッタの声で信徒たちは跪き、

一斉に声をあげる


『彼の言葉は我らの癒し

彼の笑顔は我らの癒し

彼の身体は我らの癒し

私達はショウ様の一切を()で尽くさん

ショーメン!』


「ショーメン」


理解不能な狂言の合唱を終え、バレッタが前に出る


「皆さん、コチラにありますは我らの秘宝

ショウきゅんの秘蔵写真でふ!(じゅるり)」


最後がネチョッとしたバレッタの言葉で

信徒たちの方からも何箇所からかゴクリと聞こえた。


「我らが生涯()で通すこの写真をお披露目する前に

先ずはこの教会に寄贈して下さった

ウィル・フライトの代表者にお言葉をいただきたいと思います。

どうぞこちらに」


拍手の中バレッタに促され出てきた

ウィル・フライト所属の女性人機三人が(がく)の前に立って口を開く


「この写真を撮った一番の功労者であるフェルニ......

彼女はレイダーズとの戦いで亡くなりました..........彼女は....」


真ん中の人機がハンカチを目の下に当て、

流れない涙を受け止めながら、ポツリホツリと語るが

最後まで言えずによろけてしまう。


両脇の二人が支えようと抱き抱え、

左に立つ人機が変わって言葉を続けた。


「彼女は言いました、この写真は布を掛け、

見ないで想像することにこそ価値がある。と

今まで私たち三人はその言葉に従い、

布を取ることはありませんでした。

しかし、このバレッタ司祭様が仰ってくださったのです!!

『教会としてこの写真を公に出すことでこの写真の真価が発揮される、

フェルニさんはウィル・フライトの現状での最大の価値を示しただけなのだと』

その話を受けて私たちは寄贈を決心したのです。」


代表者の発言に周囲からは「おお...」と感嘆の声が所々から小さく出ていた。


「(いつから司祭になったんだあの人)」


偉業を成したかのような雰囲気に一人ついていけないマーシャは心の中で毒を吐く。


「別にフェルニ氏が悪い訳では無いのです。

ウィル・フライトだけでは教会の設立は無謀でした、

彼女もそれをわかっていたのでしょう.....」


熱弁する代表者の横から出てきたバレッタが彼女の手を取り、

目を合わせてこくりと頷いた。


「ありがとうございました。

それではお披露目へと移りましょう」


感謝の言葉とともに彼女たちを最前列に並ぶよう促したバレッタは

観衆の前に向き直り、額に掛けられた布の端を手に取った。


「これより、ショウきゅんの秘蔵写真をお披露目します。

その名もなんとっ!『湯上りショウきゅん』です!!」


バサッっと勢いよくめくられる布、バレッタの手元を始点として大きな波を描きながら

一気に額から舞い上がり床へヒラリと落ちていく


「(ショウ様申し訳ございません!!)」


布が剝がされる寸前に顔を覆ってしゃがみ込むマーシャ、

この最低な集まりを許してしまったことを悔やみ目を背けるが、

耳からは不快な歓声が入ってくる。


「わぁ.....」

「はわわわ......」


皆が助祭と仰ぐマーシャがまさか軽蔑しているなどと誰も思わず、

人機たちの視線は額に釘付けになっている。


そしてその視界にはショウのあられもない姿がいっぱいに.......


『はぁっ!?!?』


間抜けな叫びの大合唱にしゃがみ込んでいたマーシャも立ち上がって額を見る。


「ああ.....ショウ様、我々はまだ罪を犯してはいなかったようです...........」


額いっぱいに写るのは、肌色の塊だった......

肌色の塊ということはショウということなのか?そう思うだろう

いや、塊なのだ。ブレブレのもはや人間なのかも分からないほどにブレた肌色の塊が

写真いっぱいに写っている。


「うそ.....フェルニ.........?

あなた、『ショウ様のお裸を激写した!』って

あんなに自慢していたじゃない??」


「まさか......緊張で手が震えてこんな写真しか撮れなかったの.......?」


最前列で膝から崩れ落ちるウィル・フライトの三人、

その音でバレッタも異変に気付く。


「.......へ?

うん!?!?」


お披露目の責任者として布を取り、

大歓声の中で讃えられながらショウの写真を見れると考えていたバレッタだったが

静まり返った信者たちの空気に気付いて遅れて写真を見る。


ただただ肌色の塊だけが写る写真にバカみたいな声を出し、

もう一度写真を覗き込んで綺麗な二度見を披露した。


「すみません、バレッタ司令官さん。

私たち仕事があるので、持ち場に戻りますね?

司令官さんも遊んでないで早く仕事してくださいよ??」


信者??たちはいつの間にか聖堂の入り口にまで下がっており、

深い深いお辞儀をするとそのままそそくさと外へ出ていった。


「 あっ.....!ちょっと待って!!

みんなちょっと待ってぇぇぇぇ!!!」


大勢の信者が一刻にして離れ、聖堂に残るは絶望した三人の人機


「フェルニ、だからあれほど布を取るなと言っていたのね......

ごめんなさい、あなたの言いつけを破ったばっかりに......

私たちはもうこの写真をゴミとしか見れないわ」


それと、何故か感動に打ち震え、天を仰ぐマーシャ助祭


「ああ、ショウくん。

こんなにも早くこの邪教を排除できるとは

今後はここまでの被害が出ないよう私が完全に止めて見せますからね??」


初期メンバー(笑)だけがその場に取り残され、

一番期待していたバレッタが力なくその場に倒れこむ。


「(......この日をもってショウきゅんヘブン教は大きく開かれ

かの廻帰教をも超える信者数で世界一の新興宗教になれると思っていたのに)

ニャンデコンニャコトニ........??」


悲しさのあまり、うつ伏せで倒れるバレッタの両目から

オイルという名の涙がダバダバと流れ出し

大きな大きな水たまりを作ったとさ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ