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第九十話「戦えない者たちへ」


ショウは運んできた機材をエーミールと共に戦況がしっかりと映るように設置していた。


「これでよし!」


「なるほどね、この映像は街中に中継されてるし、それを利用して

この戦いを腰抜けの腑抜け達(避難者)に見せてやるってとこかしら?」


機材を運び終えた途端、

またヨガ的な動きを再開しながら毒を吐くエーミールに

ショウは首を横に振って返答する。


「少し違いますね....」


「というと?」


「彼らは戦わないんじゃなく、戦えないんです

そんな彼らをぼくは腰抜けや腑抜けだなんて思ってません」


そう答えるショウの真剣な表情の中には

共感と悲しさが含まれているように見える。


「じゃあ何故この映像を彼らに見せるの?」


バツの悪そうな顔をしつつ

納得しきれていないエーミールが続けて聞いた。


「ぼくは戦えないことを否定しません、

でも絶望して部屋に閉じこもることには反対です。

戦えないことを言い訳にして後ろめたさから逃げ、

うずくまって目を背けることを許せません。

今何の為に、誰が戦っているのか、

それを彼らに見てもらうためにこの映像を用意したんです。

子供なら何も分からないのは当然で、

母親は例え一緒に隠れていても我が子を守る時には命に変えて抵抗するでしょう。

そして今隠れているのはかつて誰かを、何かを守るために戦ってきた、

守る大変さを誰よりもわかっている元兵士たちです。」


「.............」


「ぼくだって戦えない一人です.......

ぼくに力がないばっかりに多くの人が死んでしまった。

.......この背中にはぼくを庇って犠牲になった人たちが沢山います。

でものしかかっているんじゃない、皆支えてくれているんです!

ぼくは伝えたい、守られる者には守られる者なりの責任があることを!!

今まさに彼らの為に戦ってくれている人達の為に、

そしてなにより絶望しきって何もかも諦めてしまっている彼らの為にも.......」


胸の前で大事そうに両手を重ね合わせるショウ、

かつての恩人たちに想いを馳せるその声や言葉には重みがあった。

今まで守られ続け、何度も悔しさを味わった末の重みは映像を通して、たしかにーー


ーー


「ぐっ!銃身を潰しやがったか!!」


先程まで火を吹いていたバルクの獲物は、

真っ白な大理石と地面に挟まれて可哀想なほどひしゃげている。


「また素手に逆戻り....あぁ!?」


潰れたガトリングに挟まっていた腕を引き抜き、

動作確認をしているバルクが気配に気付いて振り返ると、

すぐ目の前に破城砲本体が迫っていた。


「マジかよ.....」


ドドーンッ


「バルク様!?」


突然の大爆発に振り返る機械たち、

そこには丘の方に設置されていたはずの破城砲が

バルクの立っていた場所で火を上げながらボロボロになって横たわっている。


「ソ、ソンナ..........

.....テッタイ....テ、撤退ダ!」


総大将の喪失で機械軍の統制は一斉に崩れた....かと思われたが、

なんと破城砲でできた火の海から声が聞こえた。


「撤退だぁ?

誰だそんなこと言い出した奴は??」


燃え盛る破城砲の中から聞こえる声、

少し間をおいて破城砲は上に真っ直ぐ吹き飛び、爆ぜた。


「こんなんで....俺が...殺られるわきゃ......ねぇだろうがっっ」


破城砲の下から出てきたバルクは頭部の右半分は凹み、

もう半分は外装が剥がれ、中の配線やアイパーツが剝き出しになり、

四肢も支えとなるパーツ以外は全て地面に脱落してしまっている。


「なんでアレで生きてんのよ!?」


フラフラだがまだ機能している機体に驚愕するセレナへコメットが冷静に答える。


「落ち着きなさいセレナ?あの様子じゃどの道すぐ壊れるわ」


冷静に宥めるコメットの横にコールが並んで声をかけた。


「そうみてぇだな。一気に畳み掛けるぞ!」


「うん、油断せずに行こう」


さらに隣に並んだシン。

四人は同時に走り出し、瀕死のバルクを一斉に攻撃する。


「っっ!! くぅっ!

ぐぁっ! ごばぁっっ!?」


フラフラになりながらも四方から迫る攻撃を最小限の動きで避けようとするバルクだったが、

すぐに限界がきて被弾する。


「まだだ、まだ終われねぇ.....

せめて何人かだけでも潰してやる。

ウォォォラァァァァアアア!!!」


渾身の一撃を地面に放ち、

四人に距離を取らせたバルクが、立ち上った土煙で隠れる。


「往生際が悪い事ね?」


無駄な足掻きと吐き捨てるコメット

それとは反対にセレナが叫ぶ


「な、何よアレ!?」


土煙から歩いて出てきたその機械は

脱落していた装甲が取り払われ、

かなりの細身になっていた。


「長くて......太い.......槍...??」


脱落していた装甲は

どういうわけか右手に集まり、

鋭いランスに形を変えていて、

その長さは細身になったバルクの機体とほぼ同じだった。


その鋭利な先端はこちらに向け構えられている。


「軽量機体は苦手だが、

一、二体壊すだけなら問題.........ないっっ!!」


こちらに向かって構えていたバルクがいつの間にか消え、

かと思えばセレナの左脇腹にランスが迫っていた。


ギィィィィンッ


「チィッ」


「こんっのっ!きゃぁぁぁ!?」


間一髪のところをライフルで受けたセレナだったが、

ライフルは砕け散り吹き飛ばされる。


「セレナ!」


「ダメよママ、アタシは大丈夫だからアイツに集中してっっ!!」


吹き飛ぶセレナを受け止めようと走り出すコメットだったが、

空中で回転して体勢を整えてみせたセレナに安堵し、

目の前の敵に集中し直した。


「わかったわ!

でもセレナはさがってなさい!!ナイフでは分が悪いわ。」


「悔しいけどそうするわ!」


「三人ならなんとか串刺しにできるな、

最大出力」


四人から三人に減ったことで微かな勝ち筋を見たバルクは

ランスを地べたにビタ付けし、

クラウチングスタートの姿勢に移る


「行くぞ?」


ドンッとバルクが地面を蹴った。

飛び出すランス使いは神速でコメットに接近するが

四つの紅い槍が間一髪のところで受け止める


「早すぎっっ!!」


条件反射で対応したコメット、

しかしランスは滑らかな見た目通り、

槍をものともせずに彼女の腹部に到達しーー


「コナクソッッ」


ーーたかた思われたがコメットが

受け止めるランスをコールが横から蹴りでカチ上げる。


「外したか、もう一度だ!!」


ランスと背中のブースターを最大点火していたバルクが

斜め上に突進し、再度攻撃を仕掛けようとこちらに向き直って上空でふわりと数秒滞空する。


「キューイッ、今だっっ」


「キュー!!」


空に浮かぶ敵目掛けてキューイが水鉄砲を放つ、

一直線にしか動けないバルクは、

抵抗できずに水を受けた


「ヌガガガガガガガッ」


大量の水でショート寸前のバルク、

背中のブースターまでも水を被って動力を失う


「これで終わりだ!

ブレード!!」


バルクは力なく空から落ち、

その真下にいたシンがブレードを展開し、

空に向かって振り抜いた。


「俺は.....アレス...ギアに.......」


力なく落下していたバルクは

真っ二つになって左右に転がった。


ーー


北門で蛮機の長が崩れた頃、街中の方には突き刺さっていたロケットに少しの細工と整備をして発射準備を整える教皇らしき人物がいた。


「どうやら機械軍の負けらしいな.....

いや...だが、これは......?」


ロケット内部のレーダーに映る

距離的には少し離れた場所の印を見つめながら

ヤンソルムは首を傾げる。

だが、これからこの場を離れる自分には関係の無いことだと直ぐに興味を失ってロケットに乗り込んだ。


「まあ、束の間の勝利を味わう奴らに少し挨拶しておいてやるか」


『エンジン点火』


ククッと笑うヤンソルムのロケットは

豪炎を上げながら宙に浮き、空を目指す。

ただ真っ直ぐ上がるかと思われたそれは、

北門の上空へ向かって

ゆっくりと上昇していくのであった。


ーー


「た、倒した.....?」


シンの左右に転がるバルクの残骸を見て

人機軍たちが動きが止まる。


「バルク.....サマ??」


力なく倒れる総大将の姿が信じられない機械軍たちも目の前の光景に固まっていた。


「やった.....やったぞ、勝ったんだ.....」


「生きてる......」


「僕たちの勝利だぁぁぁ!!」


『ウォォォオオオ!!!!』


ポツリ、ポツリと喜びの声が上がり始め、

トドメを刺したシン勝鬨が上げる。

それに呼応するように人機軍は歓喜した。


「ニ、ニゲロ.....

今度コソ撤退ダァァァアアアッ」


凄まじい歓声に後退る機械軍たちは、

我先にと北門から外へ退却しようとごった返す

その時、門前に空から黒いものが降ってきた。


ズドンッ


逃げ帰る機械たちを眺めながら勝利を確信した雄叫びが、

一発の衝撃音で掻き消え止まる。


「え?」


誰もが北門に落ちてきた物から目が離せなかった。


「申し訳ないウイルス諸君

我々の部下たちが随分と世話になっているようだ」


北門に溢れていた殆どの機械を着地の衝撃でスクラップにした漆黒の物体、声を発するその物体が変形し人型に変わる。


それは、エクスペンダブルズ・ホームで遭遇した、機械軍 戦闘部隊(アレス)の指揮官ベレムナイトだった。


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