第八十七話「強行で凶行な教皇御一行」
「ふ〜、私の仕事終わり!
というかコレちゃんと映ってた??」
疲れることのない身体で目一杯伸びをしながらヤンソルムは
部下たちに声をかける。
「教皇様、映ってます」
ヤンソルムとは違い、忙しそうな枢機衆たちは
少し鬱陶しそうに返事を返した。
「ホントかな〜?
あっ!これ、何か緑のランプがチカチカしてる!
これ大丈夫なヤツ??壊れてない?」
「大丈夫なやつですから!
もういいんで座ってください!!」
「あとから壊れてたとかやめてね?
私何も触ってないから、責任とか取らないからね??」
「分かりました!
分かりましたから早く退室してください!!!」
「ホントに責任取らないからね?」
映像は既に消えていたが音声はまだ聞こえており、
しつこく確認を取る教皇ヤンソルムと
枢機衆たちのやり取りがガヤガヤと続き、
締り悪く今消えたのだった。
ーー
「あの馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿、
バカバカバカバカばかばかバカバカ、
馬鹿教皇おぉぉぉ」
ツヴァイは拳を何度も一定のリズムで自身の額に打ち付けながら不満を垂れ流す。
「理解デキナイ映像ヲ検知、
ドノヨウナ意図ガアルノカ解析チュッーーガガッ!?」
意味不明な映像に固まっていたドローンが何機か砲台により撃ち落され、
その音で戦いが続いていることを思い出した両軍は戦を再開する。
「さっきの映像は何だったんだ!?」
「そんなことどうでもいいだろっ
まず目の前の敵に集中だ!!」
「良ク分ランガ気ニセズ突ッ込メェェ」
「映像に気を取られて何体か破壊し損ねたな
まあいい、これから破壊すればいいだけだ」
街壁に隠れ終えた人機軍を追い詰めるように機械軍たちが突撃し、
その後ろからバルクがガトリング砲を壁にお見舞いする。
「街マデ雪崩レ込メバ敵ノ守リヲ壊セルハズダ、
突撃ィィィ!!ガッ!?」
「ギャ!」
特に考えることもなく街に押し寄せていた機械軍たちは
最前列の機械が街壁を通って間もなくバランスを崩したようにガタリと
体を沈めたかと思うと、あっという間に粉々になった。
「ハッ!?」
なんと、目を凝らさないと見えない程の格子状に配置された極細レーザーが、
侵入した機体を瞬時に切断していたのである。
機械たちはようやくそれに気付き、ブレーキを踏んだーーが
悲しいかな、やはり押し寄せる鉄の塊、そう簡単には止まれないのである。
「トマレ!トマレ!!トマレェェェエエエ!!!」
前回の失敗を活かせたのか、
今回は早い段階で全体がブレーキをかけたが、
それでも前列の方はゲームセンターによくある
「メダル落としゲーム」のように押されて
木っ端みじんならぬ鉄っ端みじんに成り果ててしまった。
「チッ、何が起きてやがんだ??」
「バルク様、ドウヤラ北門ノ内部ニハ格子状ニナルヨウ
高出力レーザーガ配置サレテイル模様デス。」
「クソッ!
ウィルスがこんなにも手ごわいとは、
おい、アレは後どれぐらいで撃てる?」
「ココニハ電源ガアリマセンノデ
アト小一時間ホド掛カリマス......」
「そんなにチンタラ待てるわけないだろうがっっ
チャージを一基に絞って少しでも時間を早めろ!!」
最初こそ余裕そうにしていたバルクだったが
今のその様子は焦り散らかし、明らかに余裕がなさそうに見えていた。
(アレスの連中が来る前に手柄を立てる筈が
とんだ誤算だぜ、援軍が来ちまう前に何としてでも
この戦いを完全勝利で終わらせてやる。)
ーー
「.......あのレーザーも.........あなたが??」
北門に展開する細かい格子状のレーザー装置を
呆然と眺めながらエーミールがショウに問いかける。
「え?
いやいやいや!ぼくにそこまでの力はないですよ!!」
「そ、そうよね?
まったくワタシったらこんな幼い子が
レーザーいじれるなんて馬鹿みたいに勘ぐっちゃったわ~」
ハハㇵッと笑い否定する少年の
言葉にエーミールは正常な子供だと再認識して胸をなでおろす。
「はい、ゼロから作るには時間が掛かりすぎますから!
でも侵入者検知用のレーザーパルス装置があったので
ほとんど出力改造だけで済んで良かったです!!」
「……ちょっと待って、今なんて言ったの?」
「え?いやだから、レーザーの出力調整だけで済んだんです。」
「.....................」
エーミールは一度心の中でなでおろした胸をブッ叩いた。
「.........?
あ!やっぱりエーミールさんも気になりますか?
..........さっきの映像.....?」
ショウは急に静かになったエーミールを見て
真剣な表情になって語りだす。
ただただ自分の胸(浅はか)をブッ叩きまくっていたエーミールは
急なシリアス空気に追いつけず適当な返事をした。
「......え?.......ええ、そうね.......?」
「ぼくも気になってるんです。
戦ってる人たちは良いですけど
さっきの映像を見て隠れている人たちは何を考えてしまうか......
それに、さっきの映像がこれで終わるとは思えないんです!
より街に動揺を与えて混乱するのは間違いないと思うんです!!」
ショウが何を言っているのか理解しきれていないエーミールだが
捻りだしてそれっぽく返す。
「....それで....どうするつもりなの.....??」
「何とか撮影現場を押さえたいと思います」
「そう......気を付けていってらっしゃい」
一瞬止めるか迷ったエーミールだったが
ショウの真剣な表情に、送り出すこと以外の選択肢を選べなかった。
「はい、ありがとうございます。」
動揺を隠しきれないのか、心配してくれているのか
目が活発に泳ぎ回るエーミールに深々とお辞儀をしたショウは
協力者を呼ぶため、大声で声をかける。
「アンバー!
行かなきゃいけない所があるんだ!!
一緒に来てっっ」
「アオーーン!!」
待ってましたと言わんばかりに
姿を現したアンバーの背に乗りショウは飛び立って行く。
「うん......うん.......そうね.......それはいい考えだと思うわ...........」
一方、エーミールはまだ虚空に相槌を打っていた。
ーー
「なんとか街壁の内側に退避し、
こちらに攻められないようレーザーを展開できたが
相変わらず豪雨のような弾幕が永遠と続いているせいで
まともに反撃が出来ないな」
「壁に設置していた砲台は全滅、
街壁の上に設置してある砲台は
ドローンと戦闘が激しい正面以外は全滅させられています。」
「全くあの手数、千手観音みたいなやつだな」
「ありがたみなんて一つもないですけどね」
「兎に角あの手数を少しでもいいから減らさなくては」
「隊長、恐らくあれは一個人が操作できる範疇を超えている
推察では他に浮遊するガトリングを操作している機械がいると思われます」
「いい見解だ。
では早速操縦者探しだな」
自信満々に答えるダンの言葉が気になり
京愁は質問を投げかけた。
「ん?でもこの拮抗した状態でどう探すんだ??」
「ああ、こうするんだ」
ダンはそういうと右手の操作機のボタンを
幾つか押し、誰かと連絡を取りだした。
「こちら巣穴
偵察部隊、応答せよ。」
「こちらウルフ
巣穴、指示を願う」
「大仕事だ、機械軍を指揮するバルクの多すぎる手数
その手数の大部分を担っているであろう、
操縦者を探して破壊せよ。」
「ラジャー」
ーー
「なぜ街はパニックにならないのだ??」
「こんなはずでは.....
おかしい....パニックになった絶望の街と別れ、
我々と教皇様だけが生き残るという想定が
全く現実になる気配がない。」
教皇を退出させた枢機衆たちだったが
演説が思ったより効果をなしていない現状に
新たなる火種を探していたが、その願いは
自分たちの脅威となる人物が乱入してきたことで
打ち砕かれるのだった。
「やっと見つけた!!」
「何者だ!?」
とある建物の最下層、といっても地下一階のカフェスペースに
撮影機材が広げられたその場所、そこへショウとアンバーがたどり着いた。
「グルルルル」
「ヒィィィイイイ!!!!」
「逃げろっ!逃げるのだっっ!!」
アンバーの威嚇に屁っ放り腰で転げまわりながら
出口に走っていく枢機衆たちだが、
逃げる前にある人物のことを思いだした。
「いや待て教皇様を!」
「教皇様!ご無事ですか!?
侵入者ですっ早くここを離れっ」
バンッ!と扉を勢いよく開け放つが
「教皇様が.......既にいない??」
羽交い締めにしながら引きずり込んだはずの
教皇が忽然と姿を消している。
教皇の安全が最優先事項であるはずなのだが目の前の狂暴そうな獣で
それどころではなかった彼らは一瞬で見捨てるという選択をした。
「いないのであれば仕方がない
先ずは我々も退避しなくては」
「あ!まって話をっ!!
って、行っちゃった......
まあいいや、
それよりも映像を映していたのは......コレかな??」
ショウは店奥の中央に広げられた機材を眺め、
気になった機材をちょんっ!っと突っついてみた。
ピッ!
「うわぁ!?なんか鳴った!!?
よく分からないけど.......
早くこれをみんなのところまで持っていかなくっちゃ!!」
ショウがピッっと何かを押したことで
街中にショウの顔が映し出された。
『う~んこれどうやって外すんだろう.....』
『ワウ?』
『ダメだよアンバー
おもちゃじゃないんだ』
『クゥーン』
「また映像......ってショウ!?
何時の間にっていうかそこドコ!!?」
映像を見たシンやセレナは近くにいると思っていたショウが
なんとなく見覚えのある部屋で意味の分からないを放送していることに
不安が隠せないでいた。
「バカショウ!!」
「何やってんだよ、ショウって奴はよぉ......」
『アンバー急いで北門まで戻ろう』
『ワオォォォォン』
ショウは映像が流れっぱなしなことにも気付かず
一刻も早くこの機材をもって戻るのだと、
アンバーの背中に背負わせながら呟く。
『みんな必死に戦ってるんだ
ぼくもしっかり役に立たないと』
「!?」「ショウ......」「ったく.....」
純粋に誰かを思って行動するショウに
仲間を始めとする人機軍たちは心の中で
小さな火を灯されるたように鼓舞されたのであった。
ーー
「フッ......ショウ、やはりお前は私の息子だな........」
映像を見たダンは我が子の勇ましい姿に
笑みを零す、だがまだ終わっていない戦いに
気を緩めることはなかった。
「こちらウルフより巣穴へ
目標の操縦士と思しき機械を発見」
誇らしげに息子の姿を映像越しに眺めるダンだったが、
偵察隊の連絡で操縦士の機械が丘の上にいると報告をうけた。
「よし、流石の手際だ。
即刻破壊せよ」
「イエッサー」
偵察部隊が返答すると、
数秒後に丘の方から爆発音が聞こえ、無線でも報告が入る。
「目標撃破を確認」
「よくやった。今後は予定外の事態のみ事前報告とする。
円滑な任務遂行に勇む様に」
「了解」
丘からの爆発音の後、バルクの周りに浮いていたガトリングが力を失いガチャガチャと地面に落ちる
「フンッ
種に気付きやがったか
だが気付いたのはソレだけみたいだな」
「バルク様、破城砲チャージ完了しました」
「いいタイミングだ、ブチかませ」
ーー
「そろそろ時間だな?」
教皇は戦場の発生地へたどり着くべく屋根の上を渡って進んでいく
「.....あれは.......教皇様では??」
軽快にジャンプしている教皇を枢機衆たちが見つけて叫ぶ
「本当だ!教皇様!お戻りください!!
危険でございますっっ」
教皇は枢機衆たちの静止も聞かずにズンズンと戦地に近づいていく。
ようやく最前線である街壁の後ろにたどり着いた教皇は
降りてくるよう声をかけてきていた枢機衆たちへ
今までのお返しかのように大声で叫んだ。
「何を言っている?脱出するのだぞ??この街はもう用済みだ。
それともありもしない通路を永遠に探し回る気なのか???」
「それはそうですが......」
「もうよいからお前たちもそこへ立つのだ」
気にしてないと言わんばかりに手を横に振った教皇は
そのまま手を相手に向け、コイコイっと近くに来るように
ここまで移動して来いと指示を出してくる。
「.......こちらにですか??」
「もう少し右だ
そう、そこでいい.......
そこならば目障りも一瞬で消し炭だ」
「え??ーー(ジュッ)」
言葉の意味が理解できず間抜けな生返事を返す枢機衆たち、
その立ち位置は一瞬で赤黒い粒子に包まれ、
数秒後に粒子が霧散した時、
そこに広がるのは大きな真っ黒い煤だけだった。
「ふぅ、ようやく金魚の糞を切除できたな
これで心置きなく帰投できる」
教皇はそれまでの仰々しい身動きから一変し、
姿勢も猫背、なで肩になっている。
そして教皇は懐から何かを取り出し天に掲げ、発砲。
空に何かが打ちあがったかと思えば
間髪入れずにすぐ横の地面にドゴォォンと音速のロケットが突き刺さったのだった。
「コラプト様への手土産が一つもないとは、
これはまたあいつにドヤされることになりそうだ」
聖街編を書き終えたら休載すると思います。
それを書き終える前に休載になる可能性もあります(何とか切りよくいきたいですけどね?)
休載期間は今のところ未定となっています。
続編希望などでモチベが上がれば再開する速度が速くなるかもしれません
休載しない可能性もあります。
でも、筆が、、、筆がぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!




