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第八十六話「子の心、親は偲ぶ」

大変申し訳ございません、完成稿を投稿したつもりが未完成稿を投稿しておりました。

修正しましたのでお知らせします。


「デヘンはね……あの時レミリアを失ってからずっと探し続けていたの、

未成年の意識は消滅したと聞いても、探し続けた。」


「.......そう...」


あぐらをかき、腕を組みながら話すセレナの話を

エーミールは体育座りで聞いていた。


「世界中を探し回っても見つからない事で諦めかけていたアイツは、サディスって奴に騙された。

そしてある日、サディスを追っていた私たちと出会ったのよ。」


「.......」


「デヘンの協力でサディスを撃退した後、デヘンはアタシ達の仲間になったの。

ショウと出会ったことでレミリアが生きてるかもしれないと思ったみたいよ。

そしてその希望に賭けていたわ.....」


「.......デヘンを仲間に入れてくれてありがとう」


正座になり姿勢を正したエーミールは深々と頭を下げた。


「お礼なんて要らないわ。

......むしろアタシたちはアンタに謝らなくちゃいけないくらいだもの......」


「??」


セレナはエーミールの丁寧なお礼に動揺はせずとも、

少しバツの悪そうな顔をして話す。


「.......この街の近くにある沼地で、アイツは機械軍からショウやアタシたちを庇って死んだの。」


「っっ!? (そんなに近くにいたというのに......)

......そうだったの....」


こんなにも近くに居ながらも最後を見とれなかったという事実に

エーミールはただただ驚き、ショックを受けているようだった。


「ショウから聞いた話だけど、アイツは

"ショウという人類の希望を守る。

もしレミリアに 会えたら、

『お前を今でも愛している、結婚できなくてすまない』そう伝えてほしい"

と言っていたそうよ」


「...........」


先ほどまで前を向いていたエーミールだったが

だんだんと顔が俯き、背も猫背で丸まってしまっていた。

相手のことなどお構いなしのセレナはそのまま話を続ける。


「あんなにレミリア、レミリア言ってたアイツが

赤の他人の......それも男のショウを守るなんてーー」


「……やめて」


「?」


少し強い語気が飛び、セレナはビクッとして口を止める。

前を見ればエーミールが肩を小刻みに震わせながら立ち上がっていた。


「それ以上聞いたら……

私.....あの子たちを止められなくなるわ.........」


セレナがヤレヤレ....と面倒そうに話しを途中で終わらせ立ち上がって部屋を去ろうとすると、

エーミールはパリッとした声で宣言した。


「……装備を作るわ」


流れていない涙を拭う仕草をしたかと思えば

エーミールは机から降り、真っ直ぐ前を見つめる。


「....今から間に合うのかしら?」


腕組みしたまま壁にもたれるセレナは

エーミールの言葉を待ってましたと言わんばかりに質問を吐く


「フフッ、この天才を舐めてもらってわ困るわ

明日の午前九時だったかしら?

それだけ時間があればあの子たちへの手向けくらい余裕で揃えられるわよ」


「お手並み拝見ね?」


自信満々のエーミールは胸を張り、右手を手に当て、セレナはフッと笑って返す。

二人の間にはいつの間にか心地良い空気が流れ出していた。


ーー


「....とまあ、こんなことがあったのよ」


「そうだったんですね。

でも、ミアさんを見る限り、

前と変化はみられませんよ?」


ショウは昨晩の話を聞いて件の装備を作ってもらったであろう

ミアを見るがどこも変わった様子がなく、いつものミアがそこに居るだけであった。


「ノン、ノン、ノン!

いくらワタシが許したと言っても直接あの子たちを戦わせるのと、

戦いの役に立たせるのとはまた別の話よ、

ともあれ何も考えないで飛び込んだミアは、後で叱らなくちゃね?」


右手の人差し指を左右に振りながら左手を腰に当てる

エーミールの発言に、いまいち理解しきれないショウは

先を促すように呟いた。


「.....えっと?」


「あぁ、つまりね?

あの子たちの得意を活かしつつ、

戦いに役立たせる方向で手打ちにしたの!

うん!ちょうど準備が出来たみたいね?

アッチを見てご覧なさい?」


「?」


エーミールが癖のあるポーズで指を差す。

そこには北門からショウたちよりもさらに後方にある建物の屋根、

その屋根の上に聖歌隊のメンバーがズラッと横並びに並んでいる。

やはり格好は初めて見かけたライブの衣装と何ら変わりはなかった。


「ルミナ・クワイア、戦線投入!!」


センターのミアが叫ぶと全員屋根から飛び降りる


「あぶないっ!!」


かなり高所からの落下、

いくら人機とはいえどショウは心配せざる負えないが、

彼女たちは余裕そうに返事を返す。


「大丈夫だよ!ショウ君!!」


横一文字が息を合わせて飛び降りたと思えば、

右手を伸ばしてその手に持ったものを

おでこのあたりで何かに引っ掛けるような動作をとる。


「えっ!?」


高所からのジャンプに

ショウは垂直に地面へと激突するであろう彼女たちを本気で心配しかけたが、

その心配は斜めにスルスルと緩やかに下降する聖歌隊の姿で阻止された。


「ルミナ・クワイア、参上!!」


寸分の狂いなく綺麗に着地したミアたちは戦場の後方最前列に降り立ち

各々の決めポーズをかます、その唐突の登場に

機械軍よりも人機軍のほうが呆気に取られているように見えた。


「ナンダアレ?」


「スキャン:武装反応ナシ」


冷静に分析する機械に続いて

攻め時を確信した機械たちが次々と動き出していく。


「タダノ雑魚ダ」


「アソコガ穴ダロウ、絶好ノ攻メ場所!」


「攻メロ、攻メロ!!」


絶好の穴場に群がろうと機械たちがミアたち目掛けて押し寄せるが、

聖歌隊の面々は落ち着いて自身のポジションに着き、

マイクを持って構えをとっていた。


「えへへ〜秘密兵器だよ!」


「新曲ぶちかますわっ」


「みんな~最後まで聴いてね〜?」


『ファンシーズ・ルミナ!!』


何処からともなく流れ出したイントロを気にも留めず

機械の群れが押し寄せる。


「ココダァア!」


その物量が聖歌隊へと伸びかけたところで、

別方向から横やりが閃き、三分の一程度の機械がバラバラになった。


「...........」


横やりを飛ばしたのはこの街では見たことのない機体


「.....すごい........」


その機体は言葉を発さず、ただ聖歌隊の前に立ち機械の侵入を許さない。

見たことのない機体がメンバー一人につき、二機編成で護りを固める

個々の強さも相当な機体たちの、その抜け目のない守護にショウも見惚れていた。


「これがワタシが用意した聖歌隊専用親衛隊

クワイエットガーディアンよ」


誇らしげなカリスマの声を聴きながら、

視線を親衛隊から離せないショウだが

頼もしい戦士たちの機体の中に見覚えがある者がいるように思えた。


「彼女たちには指一本触れさせない!

クワイエットガーディアン、隊長マルトン参ります!!」


一機だけどこかで見た覚えがある機体だと思っていたら

やはりコロンブス商団のマルトンが槍をブンブン振り回して

親衛隊たちの中でより多くの機械をねじ伏せていた。


「はぁ.......」


軽くため息をついたエーミールだったが、

そのため息は決して重苦しいものではなく

戦いに送り出した彼女たちの安全が予想以上にある現実に

安堵し、生まれたもののようであった。


「無言の戦士が姫を守る.....ワタシのコンセプトが台無しだわ.......

.....まぁ、いいかしらね? それであの子たちがより守られるんだもの........」


見下ろせば聖歌隊が彼女たちの戦い方で戦っている。

ミアたちの声がハッキリ聞こえ、

その声に呼応するようにエーミールは

彼女たちの勇姿を眺め、小さく呟く。


「……行きなさい

私の自慢の子たち」


実の子供の勇姿など一つも見れなかったエーミールは

今度こそ見逃さぬよう一刻たりとも目を離さないと誓うのだった。


ーー


「本当にここは戦場か?

なんかフェスが始まってる気がするぞ??」


「でもその方が実戦感がなくて戦いやすいだろ?」


「それもそうだな!!」


二人で厄介なバルクをいなしながら

近くにいる機械を粉々にして雑談を楽しむダンと京愁にマーカスがつっこむ。


「いや、曲がファンシーなんで気が抜けそうになるんですが......」


「戦闘BGMだ、そう思えば問題ないぃ......だろっ!!」


右ストレートで殴り飛ばそうとしたダンだったが

バルクは咄嗟にガードし、ズザザザッと後ろにさがった。


「ええぃい!」


すかさず京愁の追撃が迫るが、バルクが

「フッ!」っと笑うと

京愁は何かを察知して一気に後ろに飛び退いた。


「おうおう、感がいいな? 面白い奴と戦えてうれしいぜ?」


「それはどうも」


「最初こそサシだから拳を選んでたがそうも言ってられねぇな、

戦闘スタイルを変えるとしよう」


ぞんざいに返す京愁を気にも留めず

バルクはおもむろにステップを踏んだ、かと思えば

京愁の真後ろに立っていた。


「っっ!!?」


「ああ?

今のを防ぐか、随分と戦闘センスがあるじゃねぇか」


ドンッ!っと振り下ろされる拳を刀で受け流し

間一髪で防ぎ切る京愁はダンの横までさがる。

そして二人揃ってもうひと飛びさがり、距離をとった。


「あの重装備でここまで早く動けるのか!?」


「近距離から中距離までこなすとは分が悪いですね」


超速の移動を目にして驚くダンと

冷静に分析する京愁にバルクが自慢げに話を広げる。


「まだまだこんなもんじゃないぜぇ?」


バルクが両手を広げたかと思えば、

丘の奥から何かが飛んできて両腕に合体した。


「ガトリング....砲......?」


両腕にくっついたのはガトリング砲、

だが、それだけではない。

丘のほうを見れば、両腕はすでに埋まっているのに

まだまだガトリングがこちらに向かっているのが見えてしまった。


「嘘だろ......」


飛んできた残りのガトリング砲は合体するわけではなく、

バルクの周りを浮遊していた。


そして、一言で銃身は標的を捉え、


「弾幕祭りだ」


火を噴いた。


「手数が多すぎるっ」


マーカスは上昇して距離を取り、

京愁とダンは弾幕を浴びながら辛うじて街壁の裏に隠れる。


「オマエらぁ!戦線を押し上げろぉぉおお」


「ラジャー」


「畳ミカケロ!」


一方バルクはこの絶好のチャンスに

指示を飛ばして戦場の空気をガラリと変えた。


「後退しつつ迎え撃て、戦線を破られることだけは避けろ!!」


ダンは瓦礫を掴み、

盾にしながら未だ退避場所にたどり着けない兵士たちを回収していく。


「うわあああ!?」


「チッ、急いで立って走れ!!」


弾幕が目の前を通過したことに驚き、躓いてしまう兵士、

そこへ追加の弾幕が襲う絶体絶命の中を

街壁から水が流れ落ちるような動きで降りてきたツヴァイが担ぎ上げ、救出する。


「あ.....ありがとございますっ!」


「お礼はいいです。

動けそうなら引き続き戦闘への参加をお願いしますね?」


「了解です!」


掻いていない汗を拭うツヴァイと兵士の前方に謎のウィンドウが表示された。


「!?!?」


「あ〜、これ写ってる??」


突然のウィンドウにのけ反って驚くツヴァイだったが、

そのウィンドウに映るある人物のシルエットを見て、固まった。


「ナンダコノ映像ワ?」


「誰が流してんだぁ?」


「この声は!?」


戦場のあちこちから間抜けな声が聞こえ、弾幕は止み

ツヴァイは街全体にこのウィンドウが表示されているのだと悟った。


ウィンドウの映像が続き、一人の人機がハッキリと映し出される。


「皆の者、私は廻帰教の教皇ヤンソルムだ。」

今日は皆に重大な知らせがあってこのような場を設けているのである。」


ウィンドウいっぱいに映るは教皇、

彼は落ち着いた物言いで場を整えたかと思えば、

咳払いして話を続ける。


「昨日演説していた巫女様だが

調査の結果偽物であることが分かった!!

いいか皆の者?これは暴動じゃ、即刻偽巫女を捕えよぉぉおお!!」


画面を鷲掴みにして叫ぶ教皇の映像が途絶え、

あたりはすっかりシンッ.....としてしまっていたが、


「あんの馬鹿教皇がぁぁぁあああ!!!」

っと、プルプル震えるツヴァイが我慢できずに叫び散らかした。


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