第四話「拠点」
昨日、初めて感想をいただいて、思わずビクッてなりました。
暖かい感想、嬉しぃ、嬉しぃ、嬉しぃ、
森を抜けた一行の前に、無骨な岩肌が広がっていた。
その中央――むき出しの岩の中に、分厚い鉄扉がひっそりと埋め込まれている。
巨大な錠と警告灯、そして地中に続く冷たい空気。
まるで地面そのものが息をしているようだった。
シンがショウの肩に手を置き、少し誇らしげに言った。
「ようこそ、ショウ。ここが僕たち人機軍“ガラクタ部隊”の拠点――
《エクスペンダブルズ・ホーム》だ!」
ショウは目を丸くしてその鉄扉を見上げた。
「……これが、拠点……?」
ガラクタ部隊の仲間のひとりが笑いながら言った。
「この拠点にいるのは、非戦闘用の機械や旧式の戦闘機械ばかりだ。
その中に、40代から50代の人間の意識が移された者たちが集まってるんだよ」
「えっ? 40代? じゃあ、シンや助けてくれたみんなって……そんな年齢なの?」
ショウの素直な疑問に、シンは苦笑して肩をすくめた。
「いやいや、僕たちはポンコツだから……」
すると別の仲間がすかさず言い返す。
「年齢でいえば20代なんだけどな……!」
「ポンコツだなんて、そんなっ!」
「いいんだよ、ショウ。ホントのことだしね」
「誰も気にしてねぇよ!」
短い笑いが生まれ、空気が少しだけ和らぐ。
その時、低い声が響いた。
「――談笑中すまないが、工場長に会わせてもらえるかな?」
ダンだった。
ガラクタ部隊の仲間が敬礼し、頷く。
「了解です、俺が案内します」
「頼む」
「隊長、我々は周囲を警戒します」
「無理はするな」
「はっ!」
ダンが案内役とともに鉄扉の奥へと姿を消す。
一行もその後を追って拠点の通路へと入っていった。
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通路は長く、無数の配線と機械音が響いていた。
横に伸びる通路や部屋から、無機質な瞳を持つ機械たちがショウを見つめている。
「生身の人間だ……」
「幻じゃないのか?」
「信じられない……」
驚きとざわめき。しかし、そこには敵意など一つもなかった。
ただ純粋な、懐かしさと希望のような空気が満ちていた。
拠点の一番奥、ガラクタ部隊の休憩室にたどり着く。
「はぁ~……やっと帰ってこれたよ~」
シンは、昔の名残のように両腕を伸ばして伸びをした。
仲間たちもそれぞれ思い思いに腰を下ろす。
「ショウも遠慮せずにここに座って!」
「うん、ありがとう」
ひとりが笑いながら手を挙げた。
「そういや、まだ名乗ってなかったな! 俺は“コール”。ポンコツチームで一番マシなやつだ!」
「そしてコイツが――」
「何言ってるんです、お前が一番ポンコツでしょう?」
隣の機械が口を挟む。
「私は“トール”。“真面目なトール”で覚えてください。そしてコレが“お馬鹿なコール”です」
「ふざけんな! 馬鹿って言う方が馬鹿なんだこのバーカ!!」
「はいはい、わかりました」
トールがそのまま続ける
「そして今、隊長を案内しているのが“冷静なノール”です」
「なんか名前、似てますね」
ショウが首を傾げると、コールが勢いよく反応する。
「おっ、気づくの早いなっ!! シンなんて一ヶ月かかったんだぞ!3年前だったか?初めて会ったのは??」
「あー、実は僕あんまり覚えてないんだよね、その時のこと……」
「あん時はびっくりしたぜぇ、例え旧式でも人型をちゃんと保った機体が、ガラクタの山に倒れてたんだからなぁ」
「バカコール、話が逸れてますよ」
「バカは余計だ!」
「話を戻しますね。僕たち、実は兄弟なんですよ」トールが微笑んだような気がした。
「ノールが長男で、トールが次男、俺が三男――そして、」
「コール!」
トールが遮る。
「その話は今はいい」
「……ああ、わりぃ」
部屋の空気が少しだけ沈む。
ショウは理由がわからず、不思議そうにしていた。
その時、ノールが戻ってきた。
「任務完了――なんだこの重い空気は」
「ノール、案内は終わったのか?」
「ああ。隊長と工場長が、お前たちを呼んでいる」
「僕たちを?」
「ああ、執務室に向かってくれ」
「わかった。行こうか、ショウ」
「ちょっと待って! 僕も自己紹介しなくちゃ」
ショウは胸を張る。
「僕の名前はショウ。それしかわからないけど……よろしくお願いします」
「名前しかわからない? どういうことだ?」コールが首をかしげる。
「お前には一生わかりませんよ」トールがため息をつく。
「なんだとコラァ!」
ノールが二人をなだめながら、シンに視線を向けた。
「……何か事情があるんだな。教えてくれ」
シンは頷き、ショウの代わりにこれまでの出来事を話した。
話を聞き終えると、コールは金属の手で顔を覆い、声を震わせた。
「うぉぉ……そんなことが……三年も一人で……記憶もなくてぇぇぇ!!」
トールが肩に手を置く。
「困ったことがあったら何でも相談するんですよ」
ノールも静かに言った。
「俺たちが味方だ」
コールは涙を拭う仕草をしながら、うなずいた。
シンの一つ目の液晶パネルに微笑みアイコンが浮かび、ショウに声をかける。
「じゃあ、そろそろ行こうか」
「うん!」
二人は部屋を後にした。
残った三兄弟は、静かに顔を見合わせた。
「……似てるな」ノールが呟く。
「ええ、あの子にそっくりです」トールが続ける。
「話してると、まるであいつが戻ってきたみてぇだ……」
コールの声が震える。
ノールは静かに首を振った。
「あの子はもう帰ってこない。……俺たちは、見ただろ」
「わかってっけどよぉ……」
沈黙。
トールが小さく呟いた。
「あの少年……助けたいですね」
「ああ。何があっても、守ろう。俺たち三人で」
三人は静かに、しかし力強くうなずいた。
その頃、シンとショウは拠点の最深部――工場長の待つ執務室の扉の前に立っていた。
ジンキノヒョウジョウゲンゴカムズカシ、ワタシ、ジンキジャナイカラワカラナイ。




