表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
102/104

第九十六話「自慢の息子」


「.......ショウ.....?」


「お父さんっ!お父さんっっ!!」


ダンに縋り付きながら叫ぶショウ、涙がボロボロと零れ落ちる息子を

ダンはぎこちない動きで見上げ、声をかけた。


「.....すまない、ショウ

ベレムナイトにトドメを刺す時.....破損していたコアに奴から思わぬ反撃を受けた......

どうやら私は、もう....ダメらしい」


『隊長!隊長ぉぉ!!』


ショウの叫びを聞いて機械軍の人機や

シンたちが脚や体を引きずりながら集まってきた。


「お前たち....よく時間を稼いでくれた......

お陰で、ベレムナイトを........撃退することが.....できっ」


「ダン隊長、それ以上喋ってはいけません!」


ツヴァイがショウの横でしゃがみ込み

今にも動力の消えそうなダンに叫ぶ。


「待っててお父さん!

今リペアツールで直してあげるからっ!!」


震える手で大きくひび割れ本体と乖離しているコアを触ろうとするショウをダンが止める。


「無駄だ....新しい機体と今すぐコンバートできる設備でもない限り

この崩壊は止められない.....それより聞いてくれショウ」


「そんなの嫌だよ

絶対に直してみせるから」


徐々に細くなるダンの声に涙の止まらないショウは

ダンの言うことなど聞くまいとリペアツールを震えながら構える。


「頼むショウ、父さんからの最後のお願いだ」


信じたくはないが手の施しようがない状態に絶望していると

力を振り絞って懇願する父と目が合い、ショウは悔しいが話を聞こうと頷いた。


「っっ!!

......わ、分かった.....」


「そうだ....それでいい......」


物わかりのいい息子に安堵して息を整えるダンにショウが続きを促す。


「.....それで?お願いって??」


「......お前の母親のことだ」


「!? 僕の.....お母さん?」


予想外の話題にショウは驚くが、ダンはそのまま話を続ける


「聖堂の地下でメッセージを見ただろう?

あの部屋にはかつて巫女を見つけ出した時の捜索に特化した機械が数多く設置されていた

それを使ってメッセージの発信元を調べるんだ

そうすればお前の母アイの元に辿り着けるだろう」


「お母さんは......まだ生きてるの?」


今にも消えそうな父から聞かされる母の所在に

ショウは複雑に混乱して質問する。


「いや、アイは身体が弱った。

最後に言葉を交わした時も状態は芳しくなくてな、あそこから回復できる見込みは......無い...

それにあの状態でお前を産むという選択をしたということ、あのメッセージの内容からも恐らくアイは......」


母の最期を予想するダンだったがどう考えても

まだ生きているとは言えず、最後の言葉は濁るばかりだった。


「そっか.....」


「ぐっ!がぁぁ!!」


「お父さんっ!?」


どうやら長々と話していたのが悪かったのか

ダンの状態が危険度を増す、ショウが心配するが構わずダンは話を続ける。


「どうやら本当にここまでのようだ

ショウ、お前は世界の希望だ。

この絶望を終わらせるのはお前だと、私はいつまでも信じている」


ダンはショウから一瞬たちとも目を離さず語り続ける

その目は機械であるのに熱い涙が流れているようにも見え

望みを託す希望に満ちているようにも見え

優しく微笑んでいるようにも見えた。


「それと、これは人機軍の隊長としてではない、お前の父として言う

人類の希望だからといってそれを必ず背負う必要は無い、

正直に言えば私はお前に傷付いて欲しくないんだ、分かるな??」


「うん、分かったよお父さん」


父の心からの言葉にショウは何度も何度も頷いて

その優しさをしかと心に刻み込んだ


「あぁ、お前は自慢の息子だ。ぐぅっ!

.....ハァハァ...........アイ....今...... そっちへ......」


ショウを見つめ続けていたダンだったが

息子の表情に安心して目を離し、真っ青な快晴の空を見上げる

そして虚空に向かって妻の名前を呼んだかと思えば

その光っていた目や動力が静かに光を失って遂に機能を停止した。


「お父さんっ!お父さんっっ!!

うわああああああっ」


父に縋りつくショウに何の言葉も掛けられず

周りを囲む人機たちはただただダンが安らかに眠れるよう祈る


「あぁぁぁ……っっ…」


すると突然、悲しみで絶叫していたショウが、

フッと急に意識を失って倒れてしまった。


「ショウっ!?」


「ショウ、大丈夫かっ!?」


「........ヒュウッ........ヒュウッ........ヒュウッ」


シンやコールが倒れこむショウを抱き起すと

その額には冷や汗を掻き、心臓の鼓動が異常なほど早く、過呼吸を繰り返していた。


「このままじゃ危ない!!」


「どうすればっ」


「ワンワンッ!」


切迫する容体に焦りを募らせ動揺していると

何か考えがあるのかアンバーが駆け寄ってきた。


「アンバー!!」


「ワンワンワンワンッ」


「ど、どうしたんだ!?」


「何かを伝えてるみたい」


ショウの横に立って翼を広げ背中を見せるアンバーにコールが聞く


「ショウを背中に乗せろってことか?」


「ワンッ」


「よし、分かった」


シンがすぐさまショウを背中に乗せるとアンバーはゆっくりと飛び上がって南に飛んでいく

よく見ればその奥には大型ヘリがこちらへ向かって飛んできていた。


「マーカス!」


戦友の合流に京愁の声が歓喜するが

マーカスは冷静に報告を求める。


「無事聖歌隊たちを送り届けた、そちらの状況は?」


「ベレムナイトの撃退に成功した。

その激戦でダン隊長が......亡くなった.....

現在そのご子息がショックで意識不明、

理由は分からないが南に連れて行っているところらしい」


「まさか.....隊長が........?

何とか助からなかったのか!!」


「ああ、我々が駆け付けた時にはもう......」


信じられない報告にマーカスが怒鳴るが

返ってくるのは自分たちの不甲斐なさを悔やむ京愁たちの落胆した力ない言葉だけだった。


「......その場にいなかった私に怒鳴る権利などなかったな、すまない。

いつまでも落胆していても何もならない、

とにかくその少年の容態を直ちに安定させる必要があるな」


悔やんでいるのは自分だけではないことに気付いたマーカスは冷静さを取り戻し、

今一番優先すべきことに注力しようと考えを改める。


「あんたショウのとこに向かうのか!?

頼む、俺たちも乗せてってくれ!!」


『お願い(します)!』


マーカスの考えを聞いてすぐにコールが反応し、

コメットに背負われたセレナとシンも同じく頭を下げて頼み込んだ。


「分かった、今ハシゴを下ろす。急いで登れ」


ーー


アンバーは涙目になりながらも必死に南を目指す。

背中から伝わる切迫したショウの状況に

もっと加速して目的の場所へ滑り込みたい気持ちをグッと堪え

ショウが落っこちてしまわないように速度を抑えて慎重に湖へ到着した。


「やっと追いついた!

っ!?見て!水竜たちが!!」


アンバーとは違い何の憂いもないマーカスは

最大限の加速でアンバーに追いつき、

その内部からセレナが手を伸ばして湖を指差しながら叫ぶ


「アイツら逃げずに待っててくれたのか?」


そこは戦いの前に水竜たちがいた場所

アンバーが丁寧に滑り込むとそこには変わらず水竜たちがとどまっていた。


水際に降り立つアンバーを追いかけるように

コールたちもヘリから飛び降りる


「ワンワンッ」


背中のショウを見せながらアンバーが水竜たちに呼びかける


「キューーー」


ショウの容態をみた父竜が

ショウを軽く咥えて顔だけ出るように水に浸からせた。


「キュー、キュー」


心配そうに擦り寄るキューイが苦しそうに唸るショウを見て声をかけるが

ショウはその声に何も返せず眉間にしわを寄せてうなされるばかり


「キュー........」


自分の家族を救ってくれた恩人に何もしてあげることができず

その無力さにキューイは一粒の涙を落とした。


すると涙がポチャリと落ちた場所から神秘的な光が波紋のように広がり

母竜がその波紋に合わせ、頭をショウのおでこにトンッと乗せる。


不思議にも涙から生まれた波紋は全てショウの中に入り込み

光は徐々に薄く薄くなって消え、ショウの顔はやがて穏やかな表情に変わった。


そしてゆっくりとその瞼が開いてショウは意識を取り戻した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ