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添い猫  作者: 神崎信


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142/213

てまねき

こっちに おいで と 手招きされた


心 の 何処かに ぽっかり と 穴が空いていた


その 穴を 何か で 埋めたかったから


その 手招きされた 方向へ 歩き出した


ふら ふら と 歩いている 歩き つづける


その 手招き する人は 真っ赤な口紅を塗っている

口元は 笑っている


こっちに おいで こっちに おいで


その 手招き する人の 側まで 近付いた 時


背後から 猫 の 鳴き声 が 聞こえてきた


振り返ると 一匹 の 猫が 数メートル 先に

座って こちらを じっと 見つめていた


猫 は 私の方を見ながら 私が歩いて来た方向へ

身体の向きを変えて 私の顔を見ながら

こっちへ行こう こっちへ帰ろう と 私に

言っている ように 感じた


すると 手招きする 真っ赤な 口紅の 人 は

大声で こっちに おいで こっちに おいで と

まくしたてる


その様子を見て 猫は 真っ赤な口紅の人 に

向かって シャー っと 威嚇した


私は この時 遠い記憶が 蘇り この 猫は

私が 子供の頃に 家に居た とても 可愛がっていた 猫に そっくりだと 気がついた


私は 猫の 側に 駆け寄り 猫の 頭や身体を

優しく 撫でた


すると 手招きする 真っ赤な 口紅の 人 は

苦り切った顔をして チッ と 舌打ちをすると

何処かへ 消えて行った


私は 猫を 撫でながら 私は どうかしていた

ありがとう と 語りかけると


猫は ごろごろ と 喉 を 鳴らしながら

目を細めて 私を見て 小さく 鳴いた





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