てまねき
こっちに おいで と 手招きされた
心 の 何処かに ぽっかり と 穴が空いていた
その 穴を 何か で 埋めたかったから
その 手招きされた 方向へ 歩き出した
ふら ふら と 歩いている 歩き つづける
その 手招き する人は 真っ赤な口紅を塗っている
口元は 笑っている
こっちに おいで こっちに おいで
その 手招き する人の 側まで 近付いた 時
背後から 猫 の 鳴き声 が 聞こえてきた
振り返ると 一匹 の 猫が 数メートル 先に
座って こちらを じっと 見つめていた
猫 は 私の方を見ながら 私が歩いて来た方向へ
身体の向きを変えて 私の顔を見ながら
こっちへ行こう こっちへ帰ろう と 私に
言っている ように 感じた
すると 手招きする 真っ赤な 口紅の 人 は
大声で こっちに おいで こっちに おいで と
まくしたてる
その様子を見て 猫は 真っ赤な口紅の人 に
向かって シャー っと 威嚇した
私は この時 遠い記憶が 蘇り この 猫は
私が 子供の頃に 家に居た とても 可愛がっていた 猫に そっくりだと 気がついた
私は 猫の 側に 駆け寄り 猫の 頭や身体を
優しく 撫でた
すると 手招きする 真っ赤な 口紅の 人 は
苦り切った顔をして チッ と 舌打ちをすると
何処かへ 消えて行った
私は 猫を 撫でながら 私は どうかしていた
ありがとう と 語りかけると
猫は ごろごろ と 喉 を 鳴らしながら
目を細めて 私を見て 小さく 鳴いた




