ある日のアイラキ 【飴】
【ある日のアイラキ 婚約初期】
コンコン。
「はぁ~い!! 開いてるー。 今、手離せないから入って」
入口のドアを開けて不満顔したラキが入ってくる。
「おいおい。鍵はちゃんとかけとけって」
「だって、外出たり入ったりしてたから」
アイラは陽当たりの良い窓辺の下に新聞を引いて、その上で植木鉢から土を出していた。
「うわぁ、凄いなぁ~」
「花を新しく買ったから入れ替えようと思って」
まずは土を天日干しして、新しい肥料と混ぜて植え替えようかなと考えている。
「ふぅ~ん。 じゃ、それ終わったらご飯行こうぜ」
「やったぁ! すぐ終わらせるから待っててね」
ラキはテーブルの椅子を引いて座って待つ事にした。
テーブルの上には懐かしい飴が瓶に入って置いてある。
赤、白、オレンジ、黄色。すべて味が違う四角い飴。
「アイラ~。この飴、一個貰っても良い?」
夢中で土いじりをしているアイラは振り返る事もなく「いいよぉ」と返事をする。
蓋を取ってカラコロと混ぜて、好きな味を選んで口に入れる。
から、ころん。
口の中で転がすと甘酸っぱい味が広がった。
「私も一個ちょうだい。 手が汚れてるから口に入れて欲しい」
瓶をカラコロ回して「何味が欲しい?」と確認すれば
「私、オレンジ。 あれが一番美味しい」
と返事が返ってくる。
「はいはい。オレンジね」
と言ってアイラの元へと移動する。
「はい。 お口、あ~んして下さい」
アイラは出した花をガサガサと揺すって根についた土を取り除いている。そんな調子なので、口だけを大きく「あー」と開ける。
ぱくん
「オレンジ美味し…」
「……」
「ん? 何だか飴が生温い…。 心なしか角が丸くなって…」
「…ブフフッ」
頭から湯気が出そうな程、アイラの顔がみるみる赤くなる。
「ちょっと~~~!! これ、ラキが食べてたのでしょぉ!?」
ぶわぁはははは!!
「だっ…て、それが、最後の一個だったから」なんて言いながら大爆笑する。
「ちょ…! 信じらんないっ!! 無いって言えばいいのにぃー!!!」
倒れてお腹を抱えて笑うラキに、涙目のアイラがラキを叩こうとする。が、泥だらけなので振り回す事しか出来ない。
騙されて悔しいアイラがガリガリと飴を勢いよく噛み砕く。
「もう! もう!もぉーー! ラキのばかぁー」
あ~、 かっわいい。
俺、アイラが居たら一生幸せ。
**************
【ある日のアイラキ 婚約後期】
コンコン。
「はぁ~い。 今手が離せないから中に入ってー」
がちゃりと開けて入って来たのは思っていた人物だった。
「だからぁ。物騒だから鍵はかけておけって言ってるだろ?」
何度目かのやり取りにラキも少し呆れ気味に言う。
「ごめん、ごめーん」と反省の無い返事が返ってきた。
室内に入ると台所で何かやっているのか、良い香りが部屋に充満していた。
声がした方へ行くとアイラが何かを作っている。
「今日はラキが来るから、夕飯はハンバーグにしようと思って。ちょっと座って待ってて」
わかったと返事をするとテーブルの方へ移動する。
良い香りはセロリと玉子のスープだったかぁ。
なんて考えながら椅子を引くと、テーブルの上には前と同じ飴が瓶に入って置いてあるのが目に入った。
アイラはこの飴がお気に入りで買っては瓶に移している。
「飴、一個ちょうだい」
「いいよぉ~」
アイラは肉を捏ねていてこちらを振り向かない。
蓋を開けて、何を食べようか。と物色して口の中へと放る。
「私も一個ちょうだい」
アイラは学習しないなぁ。
いつかのやり取りを思い出しながら、少し楽しくなってきた。
また、いたずら心に火が付いたのだ。
「何味が良い?」
「オレンジ」
それを選ぶ事は知っていたよ。一番好きな味だからね。
カラコロ。
瓶を左右に振り、飴を探す。
一つ取り出すとアイラの元へ行った。
「はい、あーんして」
楕円形に整えていて、こちらを振り向きもしない。
ぱかりと口を開いて「あー」と言っている。かわいいでしかない。
覗きこんで小さな舌の上に飴を置く。
「…ん? ラキ。これオレンジじゃなくてミントだよ?」
「じゃ、取り換えよっか」
「え?」
アイラの顎を取ってこちらに顔だけを向けさせる。
ミントが香る唇に近づき、自分のそれと重ね、唇を割って舌を入れる。
「ん! んんっ!! んふぅっ…」
口の中を舌で探り、飴を取り出す。
彼女の口から取り出した飴を歯で挟んで見せつける。
「間違えちゃった。これは俺が食べようと思った味だ」
それだけ言って半開きになってわなわなしているアイラの口に新しいオレンジの飴を入れた。
「~~~っ! ら、ら、ラキのばかぁーーー!!」
よし! 今日こそ泊まりたい!!
やっぱ俺、アイラと居られたら一生幸せ。
薄々バレてます?
ラキはキス魔です。
アイラ見ると可愛くてすぐちゅっとしたくなっちゃう。(本当はずっとしたかった)




