18.
★戦闘シーンがあります。苦手な方はお気を付けください
ガチャ、
「アルトくぅ~ん、 居る?」
(そんな馬鹿な…。もう侯爵達が来る時間だぞ? 早く立ち去れっ!!)
耳が拾った声にあ然とする。
願いも虚しく、ラキを探しに来たメイドが部屋の中へと入ってくる。
「アルトくぅ~ん。ここに入るの見たんだよ? どこに居るのぉ?」
(ちょっとマジで怖いんですけど!? 俺、入室する時ちゃんと確認して入ったからね?)
どこから見られていたのか。
ここで働いてる女性陣は国に帰ったら諜報員としてスカウトした方が良い。
残念ながら騎士団の連中より優秀だ…。
シャッ。
カーテンを開けてテラスを確かめる音。
「ここには居ない…」
ガタンッ。
椅子を引いて机の下を調べる音。
「ここも居ない…」
(怖い、怖い、怖い、怖い)
ラキは心の底から恐ろしいと感じた。
脂汗が額に浮かぶ。申し訳ないが幽霊的な怖さだ。
戦場でだってこんな思いはした事がない。
「アルトくぅーん? ……」
コツ、コツ、コツ
ラキが隠れた棚の前で足音が止まる。
見つかるのなんでどうでも良いがシチュエーションが怖過ぎる!!
「ここだな!」
ガッ!
扉の取っ手が握られる。
ひっ!!
「おい!! ここで何をしている!!!」
「ナ、ナイネール侯爵様」
申し訳ございません。とメイドは謝り立ち去ろうとするが別の声に引き止められる。
「待ちたまえ。 ナイネール侯爵、良いではありませんか。 彼女には新しい薬を試して貰いましょう」
「えっ? 薬って…、何のお話で、 キャッ!!」
いやぁ、離してと続くが口を押えられたのか唸り声に変わった。
(まずい。エドガー様達が到着する時間にはまだあるが、彼女を助けないと犠牲者が出てしまう…)敵の人数も把握せず飛び出すのは不本意だがラキは意を決して棚のドアを開けた。
「彼女を離してください」
棚からのこのこ出る姿はこの場では格好が悪く間が抜けていた。
「お前は新しく来た執事見習いだな? この女とここで逢引きでもしていたか」
「あ、逢引き!?変な勘ぐりは止めてくれ。 全員捕まえてやるよ。心当たりは、 あるだろ?」
さっと敵の表情が変わった。
ナイネール侯爵を後ろに隠し、敵が剣を抜く。
部屋に武器を持った人間がざっと10人程に人質一人。
だが、部屋の広さとこの人数で剣を振り回すには動きが鈍いはず。
それがわかっていない辺り鍛え上げられた騎士ではないのだろう。
「おい、この女がどうなってもいいのか!?」
案の定、人質を盾にしてきた。
想定内だな。
ラキはすぐさま隠し持っていたナイフを人質を押さえている男の腕に投げた。
寸分の狂いもなく刺さったナイフに男は悲鳴を上げ、メイドを突き飛ばす。
敵も人質に構っている場合ではないと反撃に出る。
「うわぁーーーー!!」
剣を高く振り上げて襲ってきた所をラキにサイドに避けられ、腕を掴まれ、くるりと回転したかと思うとあっという間に剣を奪われた。
周りで見ていた人間、誰一人目で追えなかった。
「さ、どっからでもどうぞ?」
言葉とは裏腹に全く打ち込む隙がない。
怯んでゴクリと唾を飲むが、ナイネール侯爵の激が飛び、剣を構えたラキに向かうしかない。
次々に敵を倒すラキにナイネール侯爵が
「お前は誰だ!! ただの執事見習いなんかじゃないな!?」と、がなる。
「アルカレジ王国、第四騎士団団長 ラキ・ヘルナート。お前たちを捕縛しに来た!」
一瞬、動きが鈍くなった敵を容赦なく切りつける。
出入り口を塞いでいた敵を倒した後、メイドに声を掛ける。
「早く逃げろ!」
腰が抜けているのか中々立てないようだが、縺れながらも走ろうとすると倒れている敵に躓いて転倒する。
「邪魔だ!! どけ!」部屋から逃げ出そうとした敵がメイド目掛けて剣を振り上げる。
まずい!!
咄嗟にラキはメイドを庇った。
ザシュッ!
左腕を男の剣が掠める。
ぐっ。
痛みに歯を食いしばりながらメイドを外に投げ出した。
「早く! 行けぇ!!!」
そのまま下から薙ぎ払うように襲ってきた男を切りつける。
男の剣を握っていた方の腕が地面に落ちた。
しかし、ぐにゃり。とラキの視界が歪む。
眩暈にも似た感覚だ。と思ったとたんに足に力が入らなくなり体が痺れる。
「やったぞ! 俺、隣国の騎士団長を仕留めたぜ!」
男は痛みで脂汗を流しながらも目をぎらぎらとさせて歓喜に叫ぶ。
「ぐへへっ、俺の剣にはなぁ、毒が仕込んであったんだよ。死ね!」
残りは4人、ナイネール侯爵は残っているが取引相手の貴族は逃げた。
だが屋敷に居る他の騎士団に捕まっているだろう。それで今の非常事態も伝わる事になる。
もう少し、エドガー様達が来るまでもう少し時間稼ぎをしなければ…。
手に握る剣を杖にして立っている状態だ。
人質も逃げたし…。もう十分かな…?
舌も痺れて来た。体の感覚がなくなってくる。
激しく動いたから毒が回ったか…。
アイラ…。
アイラ、ごめん。
毒には多少は耐性が出来ているが、症状が出るのが早い。
速攻性の毒を使用していたのだろう。
ぼんやり毒について考えいていると、いつの日にか見たアイラの笑顔が浮かんだ。
待たせているのに……。
最愛の人を残して、こんな所で死ぬわけにはいかない!!
闘志が消えない瞳を見て敵が怯む。
何だよ、コイツ…などと言っているがラキは再び剣を構える。
もう誰も逃がさない! と殺気を放ち出入り口前に立つ。
「待たせた」
ラキの肩に手を乗せ、体を支えてくれる人物が現れる。
振り向けば肩に手を乗せていたのはエドガー様
その後ろには第二騎士団・エドガー部隊の面々の顔があった。
あぁ。
これで大丈夫だ。
緊張の糸が切れ、安心するとラキは意識を手放した。
【ある昼休みのラキ】
食堂でテーブルに肘を付き頬杖を付きながら、くるくると良く働くアイラを見守る。
可愛くてたまらん。
目の前にあるコーヒーカップに視線を落とし、持ち上げ一口飲む。
その一瞬目を離した隙に
「わっ、ごめんなさい!」
「いや、こちらこそ」
テーブルを拭きに行くアイラにぶつかりそうになった団員がアイラの両腕を支えていた。
団員が席に着くと友人達が『何だよ。羨ましいな』『柔らかかったし、良い香りがした』と高揚して言ってるのでムカつく。
次の訓練でアイツしごく!
こうやって第四騎士団のレベルは上がっていくのであった。




