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17. 潜入捜査難航です



間が空いてしまいました。

申し訳ございません!!





最近、アイラとの触れ合いが増えていたから以前の遠征よりも彼女が恋しい。

離れている事がこんなにも辛くなるなんて…。

いつだって思い出すのはキスをした時の甘い時間。

小さな肩を抱き寄せ、彼女の匂いと体温を感じたら一気に体の熱が上がり、我慢が出来なかった。

色の白い肌に色づく桃色の唇はふっくらとして柔らかく、零れる吐息に理性が奪われる。

傍に居られないから、記憶を辿りあの日をより鮮明に思い出す。

無理して自分を送り出そうとするアイラがいじらしいと思った。

歪んだ笑顔に泣きそうな表情。



離れている間に他の男に奪われてしまったら…。

想像だけで怒りが湧いてくる。

一日も早く任務を全うし、アイラの元へ帰りたい。




**************************



しかし隣国に着いた時点で俺達の思惑が外れた。

真剣に討伐を考えているのはアルカレジ王国側だけだったのか。正直俺は討伐だけではなく、この国の王族も滅ぼしてしまいたい感情に捕らわれた。




騎士団一行は隣国アラドバハルに到着し、すぐにアラドバハル国王の元へ挨拶に伺った。

エドガー様が前に、一歩後ろでラキが跪く。

エドガーが挨拶と討伐協力の旨を伝えると、国王から感謝の意を告げられ、すぐにでも潜入捜査に向かう予定だったのだが謁見の間に同席していた王女様にエドガーとラキは気に入られた。

天使をモチーフにした絵画から抜け出したかのように美しいエドガー様、男らしさの中に少年のようなあどけなさが残るラキ様。

どちらを選んでも美味しいわぁ~なんて言い出したのだ。

この国の王は娘にかなり甘い。周りで聞いていた家臣達も失礼極まりないその態度に、ただ首を横に振るばかり。誰も止める事が出来ない。



いや、そんな場合じゃないからな?



エドガー様はすっかり王女様をゴミ屑を見るような目で見る。

高位貴族のエドガー様ならともかく、平民風情の自分が王族に対してそんな態度を取るわけもいかず、フォローしたら「ラキ様ったら自分からアピールしてくるなんて嬉しいわ」と言いだし、城への滞在を余儀なくされた。



くだらない会話に、怒りで味なんてしない食事会の後、通された部屋に置いてあったクッションに顔を当てて叫ぶ。

『どの国の尻拭いを俺達がやってやろうってんだよ!? こんな事やってる場合じゃないんだよ!!』

バフンッ! クッションを思いっきり殴る。

クッションに顔を当てて怒って叩くとか、どこの乙女だよ…。

だが、他国の城内の一室。

騒いで暴れるわけにもいかない。

城に挨拶に来たら、出して貰えないってどんな拷問?正直怒りで血管がブチ切れそうだ。

エドガー様に相談に行くと彼も不満が溜まっていたようで、明日には本格的に捜査を進めると王に進言して下さった。



「いや、王女との親交も少し深めて頂いて…」なんて馬鹿親父が…もとい、国王が言うからエドガー様もついには「あれにも私にも婚約者がおります」と言ってネックレスを首から取り出す。そして続けて「時間の無駄であるようでしたら何もせず国に帰りますが」とひと睨みすれば「ひぃ…。あ、明日からでも動けるよう手配致しますっ」と額の汗を拭った。



そして、やっとの思いで開始した潜入捜査。

さすがにアルカレジ王国の第四騎士団団長ラキ・ヘルナートの名前は知れ渡っているので、アイラの兄の名前を勝手に使ってアルト・ミルファーと名乗った。

用意して貰っていた偽りの経歴書で執事見習いとして潜入する。

これなら屋敷のどこにいても怪しまれない。

体格が良いのは鍛えてるから護衛もこなせると話して誤魔化した。



潜入して数日後にはアルカレジに残った第二騎士団・アルバート部隊がガシュット伯爵と第三騎士団関係者を捕縛したと連絡を受けた。

完膚なきまでにやられ、アルバート様を恐れて投降したガシュット伯爵は自分の知っている事はすべて話すし、捜査に協力もするから殺さないで下さい。と泣き付いたそうだ。

ナイネール侯爵を泳がせる為に、捕縛後も監視下の元で連絡を取り続けてさせている。

話しを聞く限り、あちらは実に順調だ。

騎士団の本来の仕事が発揮されている。



ラキも仕事の合間に屋敷で働く使用人からさりげなく情報を聞き、ナイネール侯爵の日常の行動はすぐ把握出来た。どの部屋が良く使われるか、またどの部屋が人の出入りが少ないのか。

素人のナイネール侯爵の後を付けて書類を見つけるのはラキにはとても簡単だった。

エドガーと相談し、書類はまだそのままにして置く事にする。

書類が無くなると何かが起こっているとバレてしまうので、次の取引日時と相手を控えて現行犯で捕縛し、その後に書類を押収する。

そしてナイネール侯爵が捕縛された事が知れ渡る前に書類に記された貴族もすべて取り押さえようというのが新しい作戦だった。

実行日は一か月後。

その前に薬の現物がどこにあるのかも探りたいのだが…。

こちらが難航している。



「アルトくぅ~ん! どこにいるのぉ?」



「~~~~~~っ…」



潜入捜査は順調だ。って言いたい…。

現在、ナイネール侯爵邸に潜り込んで2週間近くになろうってのに。屋敷の仕事ばかり覚えて順調です。職場の皆さまともすっかり仲良し。覚えが早い!なんて褒めて貰って嬉しいです。

褒められて成長するタイプの俺としてはやる気に満ち溢れてまぁ~す。

…って違うんだよ!!



こんなはずじゃないんだよ。

難航してる!!

しかもくだらない内容で!!



『屋敷の女性陣からの絶大なる人気』



先に潜入している騎士団のメンバーにも「ラキ団長は顔が潜入捜査に向いてないんですよねぇ…」と言われる始末。それ、早めに言って貰えない?




初日の挨拶の時から婚約者が居ると匂わせた。

女王の事があったので最初から自分には決った女性がいると周知させた方が良いと考えたのだが、余り効果が無かった。

もちろんネックレスも屈んだ振りして首から出して見せた事もあった。

だが他の男性使用人が言うには、この国では結婚さえしていなければ婚約者から奪うのは批判もされないらしい。



ネックレスの風習は?

と聞いたら「少し前の情報だな。貴族は別として一般の若者の間では廃れた風習だよ。アルトは古風だなぁ。でも、そこが一途な男性に愛されたいって女性陣の心に火を付けたみたいだけどな」と言われた。

「一途な男性は浮気なんてしないですけど!?」

俺の常識との違いに頭を抱えてしゃがみ込んだ。



どうやらこの国に入国した途端に俺には女難の相が出ている可能性が高い。

「君たち仕事してるの?」と聞きたいくらいには、かわるがわるメイド達がラキを探して歩いている。

この人数に監視されている状態では探し物をするのは効率が悪い。まるで手練れの女諜報員の様だ。

彼女達を撒いて薬を探そうとするのだが、大きな声で名前を呼ばれると持ち場を離れている事がバレてしまうので非常に難航した。



結局現物を見つける前に取引当日を向かえてしまった。

特に移動させている様子もなかったから捕縛してから屋敷を捜索するのでも問題ないだろう。また薬を作っている建物はエドガー様の指示でアラドバハルの騎士団に監視させていた。



当日のラキの配置は取引現場に使用される部屋だった。

余り使用されないと聞いていた部屋は人の出入りが限られている。どうやらその部屋を専用としていたようだ。



辺りを確認し、素早く中に潜り込む。

両開きの棚の中に身を潜め時が来るのを待つ。武器はナイフのみ。



すると予期せぬ来訪者が現れた。









【ある日のアイラキ】



第四騎士団にはラキよりも年上の部下がたくさんいる。

でも、みんな若いラキを団長として認めているし支えてくれている。

頼もしい人達だ。


「お〜! ラキ団長! いつもアイラちゃんと一緒だな」

夜当番の帰りに酔っ払った第四の団員に会った。


「出来上がるの早いですね」

ラキが苦笑する。


「お前達、イチャイチャ【しりとり】でもして帰んのか?」


ラキと顔を見合わせる。

【しりとり】でイチャイチャ?どうやって?


すると団員がアイラの似てない声マネで

「ラキィ〜、【しりとり】しようよ。 始めは アイラ! ラ、だよ?」

自分を抱きしめるようにしてクネクネしてる。

私、あんな事しないもん。


また声を変えて

「じゃぁ、 ラキのキ」


「キ、キ、キ〜… キス。 なんて言ってチュウとかしてんじゃ無いのぉ〜嫌だよぉ〜」

ガハハハ〜


げ、下品。

アイラは絶句した。


ラキは団員の背中を押して帰宅を促す。


「いや、あの、悪い人じゃないんだ」


「うん」


「「 ………… 」」

無言になる。


「ラキ。 【しりとり】しようか?」


「えっ?」

ラキの顔が朱に染まる。


「アイラ! ラ だよ?」


「えっ? 何!? えっ!? ラキ?」


「キ、キ、キ〜… 」


ゴクッ

ラキの喉が鳴る。


「キック!」

ばすんっ!

アイラにお尻を蹴られる。


「何でぇー」


帰り道にアイラの笑い声が響いた。









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