14.
「アイラもっと見たかっただろう? ごめんなぁ。なんか人が集まっちゃって」
「そんな事ないよ。みんなで盛り上がって凄く楽しかった。交換券まで貰えたし嬉しいよ」
ひらひらと券を振って見せると、ほっとしたようにこちらを見てくる。
食堂はここから少し離れている。
歩いて向かえばちょうどお昼を過ぎた頃になるだろう。二人は散歩も兼ねてゆっくり歩いて行く事にした。
街は活気に溢れており、天気も良く人出が多かった。
「あっ、このお店でこの間フローラとお揃いの髪飾り…、今日付けてるの買ったの」
可愛いでしょ?とラキに見えるよう後ろを見せる。
「あぁ、これね。 訓練場で見たよ。 緑の木々の中にポツンと赤い花が一輪咲いてたから、おかしいなって気付いた」
「えっ!? この髪飾りでラキにばれたの?」
話しを蒸し返すような話題を振ってしまったと顔を顰める。しかし、ラキがそっと髪飾りに触れながら「アイラの髪と肌の色に合ってて、綺麗だよ」なんて言うからボッと顔が燃えるように熱くなる。
それを見たラキも右手で顔を扇ぎながら「いや、あの、髪飾りが綺麗…。って違う! アイラに似合ってて良いって言うか…、 いやぁ~。しかし今日は暑い!!」ふぅ~、あちぃね。と言って今度は両手で扇ぐ。
「ふふ。ラキったら」
変に褒め上手じゃない所が安心出来る。水が流れるが如く女性を褒める言葉が出る様じゃラキではなくなってしまう。
【腹ペコ食堂】に着くとお昼を過ぎていたので店内も少し落ち着いていた。
交換券を見せると『ペアチケット』との事で注文しなくても自動的にから揚げタルタル大盛りセットが出てくる。
「ラキィ~。二人とも大盛りなんだけど、私が食べきれなかったらラキ食べれる?」
「余裕だろ」
「ラキは余裕な事だらけだね」
まぁなって言っていたけど、運ばれてきた料理は本当に多かった…。
結局、ラキも食べきれなくてお店の人がお持ち帰り用に詰め直してくれ、帰りに取りに来れば良いと言ってくれた。
【腹ペコ食堂】なんて良い店なんだ。
またご利用させて頂きます。
「フラワーガーデンは最後に行くとして、次はどうしようかなぁ」
「あ、俺も行きたい所出来た。忘れないうちに行ってもいい?」
「いいよ」
ラキに手を引かれるまま歩き出す。
しかし、少しすると行く手方向から喧嘩のような騒ぎ声がして来た。二人で顔を見合わせるが、怒声と共に女性の悲鳴が上がった。
咄嗟にラキが私の肩を掴み、建物の中に入る。
「アイラ、ここを動くな。中に居ろよ?」
ラキは!?と聞く間もなく、すぐに現場へと駆けて行った。
「お前、ウジが湧いているぞ! 腐ってる! 腐ってるのに、何で生きてるんだよぉぉ」
男の手にはナイフが握られている。
絡まれた女性は腰が抜けて立てない状態になっていた。
凶器を持っている為、周りで見ている人達も右往左往するばかりで助けたくても動けない。
「化け物め!! 俺が! 殺してやる! ごろじでやるぅ!!!」
男は涎をたらし錯乱状態だ。そして、女性を突き飛ばし馬乗りになる。
腕を振り上げナイフを降ろそうとした瞬間
「そこまでだ」
ラキが背後にぴったりと付いた事に男は全く気が付かなかった。
振り上げた腕を握り、首に手刀をあて意識を奪う。
「あ、誰かなんか縛る物あります? あと被害女性の方お願いします」
誰もが近寄れなかった男をあっと言う間にやっつけてしまった。時間が止まったかの様に誰も動けない。
静寂を破ったのは
「紐ってこれでも良い?」近くの店から店主が紐を持ってきてラキに手渡す。
周りで見守っていた女性達も慌てて倒れた女性を抱き起す。
男を縛っていると騒ぎを聞きつけた自警団団員二名が駆け付けた。
「えっ! ラキ団長!? お疲れ様です。 あれ? その男は…、騒ぎの原因ですか?」
その声に少年が目を輝かせて
「ラキ団長って!? あの強いお兄さん、【黒の騎士】団長様!?」
少年はすぐにラキに駆け寄り、足にしがみ付く。
すると今度は周りで見ていた大人達がわぁっと歓声をあげた。
「さすがは【黒の騎士】の団長様だ!」
「あの強さだものぉ〜、この国は安泰だわぁ」
「ラキ団長、有難うございます!」
「有難うございます」
などと騒ぎが大きくなってきた。元々街の住人は第四への信頼と憧れが強い。
「いやいや、皆さん、有難うございます。騒ぎにしちゃってすみませんね」
ぺこりと頭を下げると、ラキは少年の頭を撫でそっと足から離す。
敬礼しようとする自警団員を制止し、近づくと小声で話す。
「薬をやっている可能性が高い。幻覚症状まで出てるから第四騎士団にこいつを連れてってくれ。それと、どこで手に入れたか吐かせろ」ポンと肩を押す。
ニッと笑って
「俺は今日休暇中なんでな。後は宜しく」
そう言うと、ラキは急いでアイラの元へと戻った。
アイラはラキの戻ってくる姿を見て強張っていた力を抜いた。無事だった…。
大丈夫だとは思っているが刃物を持った相手に素手で立ち向かうのは危険な事に変わりない。
「アイラ、ごめんな。怖かっただろ?」
「大丈夫…。ラキは? どこも、何もない?」
「何ともないよ」
アイラの頬に手を添えるとアイラも手を重ねてキュッと握った。
「あれ、 なんだったの? 変な事言ってた。ウジ湧いてるとか…」
「………。 後で話すよ」
「うん」
騎士団の仕事は危険と隣り合わせだってわかってるし、ラキは強いから大丈夫だって思ってる。だけど、やっぱり怖い。ラキにもしもの事があったらって思うと怖いんだよ。
遠慮がちにラキの胸元にしがみ付く。
するとラキの腕が背中に回り、アイラの頭の上に顎を乗せる。
「なんだ? やっぱ怖かったか? 大丈夫だよ」
大丈夫だ。と言って背中を撫でてくれた。
「うん。 …ラキ。 怪我したら嫌だよ? 居なくなったら嫌だよ…?」
「怪我はぁ…。わからんが、絶対に居なくならない。安心して良いよ」
チュッとリップ音を立てて、アイラの頭にキスを落す。
「さ、行こうか」
不安は無くなるわけじゃない。
でも、その度にラキが話を聞いて私の心配事を取り除いてくれる。
ラキに会う度に好きが更新されていく。
今日、ラキに聞いて欲しい。
好きだと伝えたい。




