表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢に転生した私は破滅フラグを回避したいだけなのに、なぜか貴族社会の救世主扱いされています  作者: おーちゃん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

67/80

67

第67話


「リリアナ様ぁぁぁ!!」


 地響きみたいな声。振り返ると、ガルド率いる騎士団がものすごい勢いで駆け込んできた。剣を抜いてる。怖い。こっちも怖いがガルドらも怖いぞ。


「ご無事ですか?」


「ガルド?」


 ガルドは私の前へ立ち、庇うように周囲を睨みつけた。威圧感に黒ずくめたちがさらに震える。

 騎士団長ガルドの存在そのものが、彼らにとっては絶望的な力なのだろう。人数でも多いし。


「全員拘束しろ」


「はっ!」


 騎士たちが一斉に動いた。男たちは抵抗しない。というか完全に戦意喪失していた。彼らはすでに降伏の意思を示していたから、騎士たちも簡単に拘束できた。


「まさか学園爆破計画が露見していたとは」


「えええええええ爆破?」


 今なんて? 爆破と聞こえたような? 私、そんな危険人物に遭遇してたのか。血の気が引いた。

 危なかった!! もし何か違う行動をしていたら、私はどうなっていただろう。その可能性を考えると、背筋が冷たくなる。死んでいても不思議はないか。

 するとガルドが真剣な顔でこちらを振り返る。


「リリアナ様」


「は、はい」


「単身でテロを阻止されるとは、素晴らしい」


「違います! 阻止してません!」


「しかも敵を威圧し、自白まで引き出すとは、さすがです」


「掃除してただけです!」


 私の説明を理解して。ガルドは聞いていない。瞳が完全に尊敬モードだった。やめて。その目やめて。私は本当に何もしていないのだぞ!

 すると今度は別方向から足音が響く。今度は誰ですか。


「リリアナ!」


 アレクシスだった。王太子自ら駆けつけてきたらしい。珍しく息が乱れている。焦った様子から、彼がどれほど心配していたかが伝わってくる。


「無事か!」


「はい。無傷です」


 アレクシスは私の肩を掴み、安堵したように息を吐いた。


「よかった」


 距離が近い。すごく近い。私の心臓が高鳴る。周囲がざわつく。私のことを心配して駆けつけたのかな。


「見ろよ、王太子殿下が心配している」


「あんなに取り乱しているなんて」


「公爵令嬢だけ見ているわ」


 やめて。余計な誤解増やさないで。周囲の人間たちが何か勝手に物語を作り上げていく。想像力の豊かさに、私は呆れるしかない。

 するとアレクシスは真剣な眼差しで言った。


「君は学園の救世主だ」


「救世主ではないです!」


「危険を察知し、一人で敵と対峙するなど」


「ゴミ拾いしてただけです!」


 まさかアレクシスから救世主と呼ばれるとは想像もしなかった。理由を言っても誰も信じてくれない。

 ガルドなんて完全に感動していた。瞳には星が輝いていたような気さえする。


「流石はリリアナ様です。判断力、勇気、決断力。すべてが完璧です」


「だから違うってば。私は騎士団の騎士じゃないよ!」


「王太子殿下」


 ガルドが低い声を出した。声には何か不穏な空気が流れていた。


「距離が近すぎます」


 アレクシスが眉を上げる。表情には、何かのライバル心のようなものが浮かんでいた。


「悪いか?」


「ガルドこそ、普段からリリアナへ近づきすぎだろう」


「護衛です」


「私は婚約者候補だ」


 空気がぴりっとした。待って。なんで張り合ってるの。ガルドの目が真剣すぎる。ガルドの目の奥に秘められたものが、何か深刻な感情であることは明らかだ。


「それでも近い」


「君に言われたくない」


 怖い怖い怖い。二人の圧がすごい。周囲の騎士たちまで、そわそわしている。身動きが取れない状態だ。私は慌てて二人の間へ入った。


「やめてください!」


 二人が同時にこちらを見る。圧が強い視線に、私は完全に萎縮してしまった。


「私はただ掃除していただけなんです!」


「だが結果的に学園を救った」


「違います!」


「リリアナ様は謙虚すぎる謙虚さもまた、君の魅力の一つだ」


「違うのぉぉぉ!! 怖かったのだからね」


 私の叫びは虚しく響いた。



 その後、私は正式に学園の守護聖女として表彰された。嫌だ。本当に嫌だ。せっかく平和に過ごそうとしたのに、むしろ状況は悪化した。しかも新聞には、


「公爵令嬢、単身でテロ阻止」


「王太子と騎士団長、共に守護を宣言」


「王太子と騎士団長との三角関係の行方は」


 などと書かれていた。やめて。なんで恋愛記事みたいになってるの。まるで私が何か大事を成し遂げたかのような表現だ。でも私は本当に何もしていない。ただゴミを拾っていただけなのに。

 私は頭を抱えた。掃除も失敗。ゴミ拾いすら危険。もう何をすれば平和に生きられるのかわからない。今度は何をしたら、この騒動が落ち着くのか。もう予測すら立たない。

 いったい私のシナリオ、どうなってるの?

 この問いに答えてくれる者は、この学園には誰もいないのだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ