八話 大改造計画
「これで全員かしら」
一人で夕食を摂ったあと、今度はロビーで使用人全員に囲まれていた。
いえ、囲まれていた……という表現は適切ではないわね。だって私が集めたんだもの。
「はい、彼らがこの屋敷の使用人でございます」
バートンが私の問いかけに丁寧に答える。
時間がない中、私の指示通りに動いてくれたみたい。やっぱり本来は優秀な執事長なのよね。
使用人達は……今から一体何が始まるのかと、やはり怯えた表情をしている。
怯えていないのはバートンとスーザンの二人くらい。
「今日からあなた達には、今までよりもしっかり仕事をしてもらいます」
ざわ、と戸惑いの声が上がる。
まぁ、それはそうよね。彼らは今までも仕事をしてきた……つもりだったのでしょうから。
「いいかしら。この屋敷は正直言って荒れているわ。でもそれはあなた達のせいじゃない……。指揮を執る人間がいなかったから。そうでしょう?」
「…………はい」
「だから、今日から私がこの家を取り仕切ります。もちろん私も手伝うし、全員に指示を出すから安心してちょうだい」
「お、奥様も私たちと同じお仕事をされるのですか!?」
私の言葉に、スーザンが驚いたように声を張り上げる。
「私こう見えて、家事と節約は得意なの。庭の整備だってやってたのよ? それと、バートンが今までやっていた書類仕事は私が引き継ぎます」
「で、ですが……あれは経営の知識なども必要で……」
「あら、こう見えて私、子爵家ではいくつもの事業を展開していたのよ。まぁ、そのせいで社交界には顔を出せずに、贅沢三昧な無能のワガママ令嬢……なんて噂が広まっていたみたいだけれど」
私がクスリと笑いながらそういうと、何人かの使用人たちが気まずそうな顔をする。
噂を鵜呑みにしていたのでしょうね。
まぁ仕方ないわ。そういう噂って刺激的だもの。
「私が来たからには安心してちょうだい。この家をこの国で一番素敵なお屋敷に変えてみせます。だから……まずはあなた達全員の名前を教えてくれるかしら? 一度聞いたら覚えられるから」
私がそう話すと、使用人たちは目を見開いた。
……おそらく旦那様は、使用人の名前どころか顔もまともに覚えていなかったのでしょうね。
沈黙が流れる中、バートンが一歩前に出て深々とお辞儀をした。
「執事長を務めております。バートンと申します。旦那様がいない今、奥様はこの家の主人です。なんでも仰ってください」
「助かるわ、ありがとう。貴方には今日から書類の補佐ではなく、使用人の指揮を執ってもらうからよろしくね」
「はい、かしこまりました」
続いて、スーザンがパタパタと前に出てきて、ガバッと頭を下げた。
「スーザンです。よろしくお願いいたします!」
「ありがとう。あなたは私の侍女として身の回りのことをお願いするわ」
「こ、光栄です……!」
……二人に続いて、戸惑っていた使用人たちもポツポツと挨拶をしはじめた。
その度に私はお礼と、これからやってほしいことの指示を一人一人に伝えていく。
二人のおかげで物事がスムーズに進んで助かるわ。
____実はこういう流れになるよう、バートンとスーザンには事前に話を通しておいたのだけれどね。
所謂サクラのようなものだけれど……。
まぁ、何事も準備が必要でしょう?
そうして全員の自己紹介が終わったのを確認してから、私は再び声を張り上げた。
「ありがとう、皆の顔と名前は完璧に覚えたわ! 旦那様が帰ってくるのは……いつだったかしら?」
「一週間後になるかと存じます」
……妻を娶って、いきなり一週間も不在にするなんて本当に信じられない男ね。
まぁでも、好都合だわ。
「では一週間後、帰ってきた旦那様の驚く姿を想像しながら頑張りましょう。この屋敷を全員で改造するわよ! さぁ、各自持ち場についてちょうだい!」




