七話 名前を教えて
「ここが私の部屋……ね」
すっかり執務室の掃除に夢中になって、肝心の自分の部屋を見るのを忘れていたけれど……。
なんというか……この部屋……すごく……。
「派手すぎないかしら……?」
私がぽつりと呟くと、使用人の彼女はビクッと肩を揺らしてこちらの様子を窺ってきた。
「お、お気に召しませんでしたか……?」
「いえ……まぁ、そうね、あとで模様替えを頼ませてもらうわ。家具は仕方ないとして……問題はあちこちに散乱している薔薇の花弁と、派手すぎるカーテンね……。ちなみに、誰の案でこの状態になったの?」
「その、だ、旦那様です……」
「…………なるほどね」
まぁ、伯爵からしてみれば私は贅沢三昧のワガママ令嬢だものね。
このくらい華美な方が満足するだろうと思ったのでしょうけど……私は機能性を重視するタイプなのよ。
でも、もっと殺風景な部屋を想像していたから……きちんとした部屋が用意されていたのは、正直意外だった。
初対面はあんな感じだったけれど、伯爵なりに私を妻に迎える気はあった、ということなのかしらね。
問題はなぜわざわざ私を妻に……というところだけれど……。
まぁそれは、本人に直接聞けばいいわ。
「夕食まで時間がないわ。ドレスのまま掃除をしてしまったから、少し裾が汚れてしまったの。夕食に相応しいドレスを選んでくれる?」
「はい! 好きな色はございますか?」
「そうね、赤でお願い。髪のセットは自分でやるから気にしないで」
「かしこまりました」
子爵家では節約のためにほとんど使用人を雇っていなかったから、自分のことは自分で出来るようになってしまったのよね。
令嬢らしくはないのかもしれないけれど……これが私だし、私はそんな私が結構好きだから、別に気にしていない。
「……あぁ、そういえば……まだあなたの名前を聞いていなかったわね。教えてくれるかしら? 私、あなたが気に入ったの」
一生懸命にドレスを選んでいる彼女に向かってそう問いかける。
すると、彼女はバッと私の方へ振り向いてから、弾けるような笑顔で答えてくれた。
「っスーザンです! よろしくお願いいたしますね、奥様!」




