九話 衝撃
※アーノルド視点
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正直、幼い頃から結婚に興味はなかった。というより、したくもなかった。
だが貴族の家に生まれた以上、そんなことは許されないとわかっている。
自分は妻を娶り、子を作り、跡継ぎを育てなければならない。
貴族に生まれた宿命のようなものだ。
自分で言うのも何だが、俺と結婚したいと媚びる女は多い。
だが、やはり誰と話しても俺の心が揺れることはなかった。
自分のことを性格が良いなんて思ったことは無い。
正直、クランドール家に嫁ぐ女は不幸だとすら思っている。なぜなら、俺が妻を愛することは一生有り得ないからだ。
だからせめて、自分の人生に道連れにするのは、罪悪感を少しでも抱かないような……そんな最悪な女がいいと思った。
そこで選んだ女が、ルチナ・マガーリッジだ。
子爵家の財産を湯水のように使い、贅沢してばかりのワガママ令嬢。そのくせ社交界には顔を出さず、家の繋がりを作ることもない、最悪な貴族の娘。
丁度良いと思った。
断られる想定は一切していなかった。なぜなら、そんな女に求婚するのは自分くらいのものだろうと確信していたからだ。
そして実際に、縁談はすぐにまとまった。
そしてあの女……ルチナを迎え入れた時、彼女は俺の顔を見て惚けていた。
____あぁ、またか。この女も結局俺の顔しか見ていない。
ルチナは思っていた以上に美しい容姿をしていたが、それでもやはり俺の心は動かなかった。
運命の恋なんて信じていない。だから、これでいい。
初夜はすっぽかした。
いけないことだとわかっていても、悪女ならこのくらいのことは許されるだろうと思った。
それから俺は、ルチナから逃げるように一週間ほど王都で仕事をこなし、家に帰ってきた……わけだが。
「ここは……本当に伯爵邸か……?」
俺は、自宅の門の前で呆然と立ち尽くしていた。
あんなに荒れていた庭が、美しい芝生に生まれ変わっている。それどころか、花のつぼみがキラキラと輝いていた。
だが、間違いなくこの屋敷は俺の家だ。
だが、これは一体……。
「お待ちしておりました、旦那様」
____突如凛とした声が鼓膜に響いて、俯いていた顔を上げた。
俺が考え込んでいる間に、目の前まで近付いてきていたらしい。
そしてそこには、燃えるような赤いドレスを身にまとっている美しい女…………ルチナが、立っていた。




