二十九話 再会
……一人に、なってしまったわ。
私から積極的に人脈を作りに行っても良いのだけれど……如何せん私は『贅沢三昧の我儘女』として名が通ってしまっているし、旦那様みたいに人気があるわけではない。しかも、女にビジネスの話をされても本気にする貴族は少ない……というか、ほぼいない。それどころか、嫌な顔をされる方が想像できるわ。
かといって、女性に話しかけるのも……さっきみたいに、誰が旦那様のことを慕っているのかわからないものね。
要するに、暇だわ。
私は基本的に働いたり行動したりする方が落ち着くから、何もすることがないとものすごく時間の経過が遅く感じるのよね……。
さっきから視線は感じるのだけれど、誰も話しかけてこないし……。まぁ、妥当ではあるのだけれど。
アイゼンベルク公爵夫人に改めて挨拶に伺うのもいいけれど、流石主催なだけあって、常に人に囲まれている。大人しく壁の花になって、旦那様の帰りを待つのが良さそうね。
そう思って、適当にそばにいたウェイターからグラスを受け取って、壁際に寄った。
……それにしても、さっきの出来事には少し……驚いたわ。いえ、旦那様が人気だということは、社交界に疎い私でもわかっていたのだけれど……。まさかワインをかけられるほどだとは思っていなかった。まぁあの美貌だもの、仕方ないわよね。それに、そんな人気の男性が選んだのが、私みたいな悪女ですもの。家格だって、決して高くはない。みんな「なんであんな女が?」と思っているに違いないもの。
だって何よりも、私が一番思っているから。
「……そういえば、どうして旦那様は私を結婚相手に選んだのかしら?」
旦那様は、私のことを好きだと仰るけれど……最初はそうじゃなかったはずよ。だって、初対面で「興味がない」と仰ったのは、旦那様の方でしょう?
いえ、まぁそもそも今の私を好きになったきっかけも正直よくわからないけれど……旦那様ったら、好きだと仰るばかりでその理由を話したりしないんだもの。けれど、とにかく最初は私のことを好きではなかった。それそころか、白い結婚を宣言するくらいだもの、嫌悪さえしていたはずよ。だって、悪女の噂を信じていたくらいだものね。
かといって、マガーリッジ子爵家の娘に求婚するメリットはないわ。だって、貧乏貴族なんですもの。メリットよりも、デメリットの方がずっと多い。それでも正直、結婚したばかりの頃は政略結婚だと割り切っていたけれど……旦那様との関係が変わった今、歩み寄りのためにもそれくらいは知っておくべきなのかもしれない。
「……こればかりは、旦那様に直接聞いてみないと……早く帰ってこないかしら」
そんなことを呟いていた、その時だった。
「さっきから一人で何をブツブツ言っているんだ? ルチナ」




