十八話 青
「ルチナ! もう怪我は大丈夫なのか?」
「はい、この通りすっかり元通りですわ」
「そうか……よかった」
私の姿を見るなり、旦那様はガタン!と椅子から立ち上がって、私の心配をする。それからほっとしたように表情を緩めて、ゆっくりと再び着席した。
給仕によってスープが運ばれている最中、私は思い切って旦那様に声をかける。
「旦那様、二週間前の件ですが……」
「あぁ……ルチナは俺のせいで怪我をしたんだ。なんでも言ってくれ」
「いえ、そうではなく……本来はあの日の午後、外出をするつもりが私のせいで中止になってしまったでしょう?」
「そんなこと、気にしなくていい。君の体調が第一なんだから」
……旦那様は、どうしてこんなに私の心配をしてくださるのかしら。ただのビジネスパートナー相手に……。
まぁ、初対面の時と比べたらこちらの方が大分良いけれど、あまり優しくされるのも……す。嫌なわけではないけれど、慣れていないから少し反応に困ってしまう。
子爵家では、頼りにされることはあっても、心配されることなんてなかったもの……。
「……ご心配いただき、ありがとうございます。ですが、私のせいで中止になってしまったことは事実ですから……。よろしければ、今日は一日王都に出掛けてみませんか?」
「……え?」
「気が乗らないようでしたら、断っていただいても……」
「い、いや! まさかルチナの方からそんな風に言ってもらえるなんて、思っていなくてな……。すまない、どんな顔をしたらいいかわからないが……嬉しいんだ、とても」
旦那様はそう言って、表情を緩めて私に微笑みかける。初対面の氷のような瞳とは大違い。まるで、雪解けのような暖かさがあった。
……一体、何がきっかけでこんなに態度が変わったのかしら……?
まぁ、それも本人に聞けば済む話ね。
「では、朝食が終わったら、早速準備をいたします。準備が終わりましたらお声がけいたしますので、少しの間待っていただけますでしょうか」
「あぁ、わかった。……それで、その、よければ……なんだが」
「? なんでしょう」
旦那様が耳を少し赤く染めながら、フイ、と目を染めながら小さく口を開く。
「……初めて夕食を共にした時のような……青いドレスを、着てくれないだろうか」
「はい、構いませんけれど……なぜですか?」
「……俺の瞳の色と同じだと言ってくれたのが、嬉しかったんだ。子供みたいな理由で情けないが……」
そう言って、旦那様は頬まで赤く染めて俯いてしまった。
私はどうして旦那様がそんな表情をなさるのかわからなかったけれど、それだけで喜んでもらえるなら、と了承する。
そういえば、結婚してもう三週間は経っているのに……二人きりで外に出るなんて、初めてね。
何か悪いことが怒らなければ良いのだけれど……まぁ、大丈夫よね、きっと……。




