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十七話 歩み

 あの図書室での事故から、二週間が経った頃だろうか。

 私の怪我もすっかり綺麗に治って、専属医も「もう大丈夫ですね」と太鼓判を押してくれた。


 別に打撲と出血だけだったから普通に動けたのだけれど……。私が屋敷内を動き回っていると、スーザンやバートンは止めてくるし、旦那様はとても辛そうな顔をなさるから。

 この二週間は大体ベッドにいたのよね。子爵邸にいた頃は熱があっても仕事をしていたから、退屈で仕方なかったわ……。


 それだけ心配してくれているというのはありがたいけれど……。私が強くあることが当たり前だった子爵邸との境遇が違いすぎて、どうしたら良いかわからず少し戸惑ってしまう。


 けれど、ようやく今日から外出も解禁された。同時に、スーザンに言われたことを思い出す。


『怪我が治ったら、今度は奥様の方からお誘いしてみるのはいかがでしょう』


 ……受け入れてもらえるかは、わからないけれど。でも、旦那様は結婚初日と比べて、明らかに変わった。

 いえ、今の人格が元々の彼なのかもしれない。初対面の時とあまりにも態度が違いすぎて、正直少し驚いているけれど……。


 だから、確かに私も少しは歩み寄って見ようと思ったの。ビジネスパートナーという表面上の繋がりだけではなく、夫婦として……。


 ……私も、少しは変わらないといけないのかしらね。

 もう私はマガーリッジ子爵家の娘ではなく、クランドール伯爵夫人なのだから。



 そんなことを考えながら、私は二週間ぶりにダイニングルームの広いテーブルに着いたのだった。

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