十二話 瞳とドレス
「……今、なんて?」
部屋で勉強をしている時のこと。
スーザンから信じられない言葉を聞いて、私は思わず自分の耳を疑った。
「え、えっと……旦那様が、一緒に夕食をお摂りになりたいと……」
「……ど、どうして……?」
どうやら、聞き間違いではなかったらしい。初夜どころか結婚して一週間顔を合わせていなかった妻と、今更食事ですって?
……一体、何を考えているのかしら……。
「旦那様は……奥様と、仲良くなりたいとお考えなのではないでしょうか?」
「そんなことあるかしら……? だって、顔を合わせたっきり初夜も何もかも放り投げた男なのよ?」
「そ、それはそうなのですが……」
スーザンが困ったように眉を下げる。
正直、旦那様が何を考えているのかさっぱりわからない。
あるとしたら……先程私が使用人の前で伯爵様を糾弾したことを責めるつもりなのかしら?
……そうだとしたら、中々に面倒な性格をしているなと思うけれど……。
それとも、スーザンの言うように本当に私と親睦を深めようとしているの?
そうだとしたら、心変わりが早すぎないかしら……。
「あ、あのぅ……奥様……」
「……あぁ、ごめんなさいね。大丈夫、ちゃんと行くから安心して。着替えないといけないから、手伝ってくれるかしら?」
「は、はい!」
スーザンが顔をパッと明るくする。
侍女を不安にさせるなんて、これじゃ私が主失格ね。
「何色のドレスになさいますか?」
「……そうねぇ」
私はそっと目を閉じて、旦那様の顔を思い浮かべてみる。
思い浮かぶのは、さっき私に怒られた時のポカンとした表情。あれはちょっとスカッとしたわね。
「……ふふ、青色のドレスにするわ」
あの時に見開かれていた美しい空色の瞳が、なんだか妙に印象的だったから。それだけよ。




