ティーフォートゥー【Tea for Two】
ジャムを頂き、感想をランハート様と言い合い、次の栞とのイメージに合う物はどれかと考えていると、ドアがノックされ、ジュリアさんが静かにまた入って来た。
「失礼致します。こちらはお二人にサービスです」
「私達にサービス?何かな?」
ランハート様がジュリアさんにそう聞いて、私もジュリアさんが運んで来た物を見つめると、少し大きめのケーキが一つ、そして新しいポットと共に運ばれてきた。
「ケーキ?」
「ええ、一人ではちょっと大きいでしょう?だから二人で仲良く分け合って食べる。そんなケーキを店で出してみたんです。そして、一つの大きめのポットでお二人で仲良くお茶も分け合って。ランハート兄様、何か食べて来たわけではないでしょう?ソフィー様、仲良く二人で食べて下さいね!」
ジュリアさんはそう言って可愛く微笑むと、私達の間にケーキを置いた。
「一つですので、少しお二人はこう、近くによって下さいね。椅子を動かして隣に来たら食べやすいですね…ちょっと移動して頂いても?」
ジュリアさんに言われ、私達は席を立つと、ジュリアさんはテキパキとテーブルと椅子を整えると私達を隣同士に座らせた。
「さ。どうぞ、ランハート兄様!ほら!」
「え、こんなに近く?」
腕が当たるほど近くに椅子は寄せられた。
ちょっと恥ずかしい。隣同士で座って食べるのは学園のベンチにいるようだわ。
「ランハート様…」
私がランハート様の方を向くと、ランハート様は困った顔してケーキを見つめていた。
「このケーキを分け合うのか。面白いが…。いいのかな?ソフィー様が嫌では無ければ私は、共に食べれるのは構わないが」
「ええ、私は嫌では。ここは個室ですし、他人の目は気になりませんし」
「では、取り分けましょうか。ジュリア、取り皿は?」
ランハート様が取り皿を受け取ろうと、ジュリアさんを呼ぶと、ジュリアさんは可愛くウインクをした。
「ランハート兄様、そのケーキは少しずつ、一緒に食べるのよ。取り皿は無し!二人で一つって言ったでしょ?」
「え?ないのか?」
「あら、取り皿がないのね。私、綺麗に食べられるかしら…」
落とさないかしら?と不安に思っているとジュリアさんがケーキの説明を始めた。
「しっとりとしたパウンドケーキでクリームも何も入っていません。とてもシンプルなケーキなの。でも、レモンの香りとバターの風味を感じられる味だと思います。形が崩れないように少し固めに焼き上げているので、問題なく食べられると思います」
私が、ケーキをじっと見ていると、ランハート様から声が掛かった。
「では、ソフィー嬢が嫌でなければ、分け合って食べますか?」
「え。いいのですか?」
ランハート様と?同じものを?一緒に食べる?
え、いいの?
いいのかしら。
「はい。では、ランハート様と一緒に食べたいです」
私が胸に手を当てて答えると、ジュリアさんが「では、正しい食べ方を説明しますね。ランハート兄様、違うわよ。ちゃんと説明を聞いてね。まず、ケーキをフォークで小さく取って」
「ん?こうか?」
「そうそう、それを、ソフィー様に、差し出すの。あーんって」
「あーん。は?え?」
「え?」
いいのかしら?え?ランハート様にあーんされるの?
「ほらほら!ソフィー様!」
いいの?そんなご褒美?私、今日が命日にならない?女神様の元に召されないかしら?
私がジュリアさんの方を見ると、ジュリアさんは、ぐっと手を握り込んで、うんうん、と頷いてくれていた。
「では、あーん?」
ああ、口を開ける姿なんて恥ずかしいけれど、でも、ランハート様も固まって、ジュリアさんに何か怒っているけれど、もう、コレは食べていいのよね?ランハート様がさしだしてくれた物を食べないなんて選択肢があって?否、あるはずがないわ。
ぱく。
私は差し出されたままのケーキを頬張った。
もぐもぐ。
ごくん。
「美味しいですわ」
「………!!!」
「わー!女神様、可愛い!サイコー!!」
ジュリアさんが喜んだ声を上げ、私は口元をナプキンで拭いた。
チラリとジュリアさんを見ると、嬉しそうに笑ってくれている。こんなに優しく可愛い方だもの。ランハート様が特別に思うのも無理はないわ。
でも、先程の仕草。はしたなかったかしら?ランハート様に向けて口を開けるなんて。ただ、確かに美味しかったわ。ランハート様から頂くと、百倍くらい美味しくなるのではなくって?
「ソフィー様、ソフィー様も、ほらほら!!!」
「え?ええ。私も?」
「そうですよ!お返しに、あーんです!」
そう言う作法なのかしら?でも、ランハート様と親しいジュリアさんが言うのなら、間違いはないのかしらね。そうだわ。私もジュリアさんの様に、明るく、可愛くなりたいわ!そうすれば、ヤキモチも焼かないはず!!!
私はジュリアさんにしっかりと頷くと、固まったままのランハート様の前に私もケーキを差し出してみた。
「あーん、ランハート様」
私がそう言うと、ランハート様の口がかぱっと開き、もぐっとケーキを食べ、もぐもぐとランハート様は口を動かされて、ごくんと食べられた。
これは可愛いわ。
「ジュリア様。コレは大変宜しいわ。ランハート様がとっても可愛いと思います」
私がそう言うと、ジュリアさんは、机をバンバンっと叩きながら
「くう!!いい!カプ推し!いや、もう推し変したい!ランハート兄様推し!一筋と思っていたけど、こんなに女神が尊いなんて、てえてえなんて言葉じゃ足りない!カプ推し決定」
「ジュリア様?この、あーんは何度もして宜しいのでしょうか?」
「ええ、勿論、好きなだけ、あーんをしていいですよ」
「成程、こういう仕草が可愛い女性と言う事かしら?難しいわ」
私がジュリア様を見て、頬に手を当てて考えると、「ちょっと女神、可愛すぎ、もう、ちょっと一曲弾かせて…」
と、シュバっとジュリアさんは部屋から出て行くと、すぐにバイオリンを持って来て、「すー」っと深く深呼吸をした後、綺麗な旋律で有名な愛の曲を弾きだした。
「ジュリアさんは…素敵ですわ…」
思わずジュリアさんに呟き、ランハート様の前に「あーん」と言いながらランハート様にケーキを食べさせながらもジュリアさんに見惚れた。




