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『老いの入口』  作者: 髙山志行
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第七章「発覚」 ー『適応障害』=通称「自律神経失調症」?ー

「こんにちは!」

 スレ違いざま、初老の女性からあいさつされるが…あまりに幸せそうな表情を見ると…「(そう)」と「(うつ)」。『こちらとは、反対方向に心を病んでいるのでは?』と勘ぐってしまう。

(人が捨てたゴミを拾うほどに人間ができてはいないが、自分のゴミは自分で処理する主義。それと同様、こちらから挨拶する事はないが、されれば返す事にしている)。

 午前中のこの時間なら、早朝に散歩に出てくる年寄り連中も退()けた後だし、若い夫婦の少ないこのご近所、母子(おやこ)連れで公園がにぎわう事もない。そう思って家を出たのだが…これでも多少は気がひける。『病気なのだから、引け目を感じる必要はない』と思いつつ、見た目ではわかりにくいし、ましてや発作の出ていない時は、いたって普通なのだから、なるべく人目につきたくない。

(もっとも、価値観など様々なものが「多様化」した時代。最近では、親の休日などの都合で、子供を休ませる人が増えたように、生活パターンも種々雑多。そういった点では、気楽な世の中になったものだが…「水は低きに流れるもの」。天才も凡人の中に入ってしまうと、並の人間になってしまうと言われるが…とある学者さんが提唱した「研究者各人の自主性に任せる」というもくろみが破綻したように、さも識者ぶった人間が語る「フレックス・タイム制」に対しては否定派だ。なぜなら…皆が一斉に同じ行動を取るからこそ、規律が保たれる。たとえ仕事ができたとしても、遅刻や欠勤が多い人間の評価が低くなる仕組みになっているのは、「やる事やってればいいんだろ」的な社員が蔓延(はびこ)れば、やがて(ほころ)びが出る。若い頃は、そんな事もわからず、気づかぬうちにそんな思考形態のタイプにもなっていたが…そういった、組織に不要・不向きな分子の矯正・排除が目的だからだろう。ゆえに、統率・効率のためには、個々人の通勤のための負荷や損失の増大には、目をつぶってもらうしかない)。

『リハビリには、長すぎたか?』

 ここのところ体調が大きく崩れる事もなく、今日は少し足を伸ばして、県営の大きな公園まで来ていた。入口まで、ちょうど30分ほど。

「ふう~!」

 お医者によって、言う事が違ったり…検査をするにしても、一週間待ちだったり…そして何より、症状の改善がみられないもので、不安な日々を送っていたが、少し気が楽になった。最近の経過を報告すると…。

 先日は一週間待って、父宅近くの病院で、胸部のCTとエコーの検査を受けた。

(最初に一か月通った病院では、そんな話すら出なかったので、この時点で切った)。

 最悪、洋画マーベル・ヒーロー『アイアン・マン』の「アーク・リアクター」ならぬ、「ペース・メーカー」が必要になるかもしれないと言われ…その後「24時間ホルター」装備。

(20年前とくらべると、ずいぶん小型になった。半分以下くらいか?)。

 長い事ほったらかしだったわけで『自業自得』だが…「ペース・メーカー」などと言われ『今にも死にそう!』な気分になって過ごした翌日は、夕方、ホルターを外しに病院へ。結果が出るまで、さらに1週間ほど待ち…「最悪、手術になるかもしれません」と告げられ、そんな事を言われた晩を悶々(もんもん)としながら明かし、翌日、紹介状を(たずさ)えて、大きな総合病院へ。そこで、同じ病院の別の科へも行くように指示され、昨日は初めての「心療内科」にかかる。

(今では「心療内科」と呼ばれているが、早い話、かつての「精神科」だ。まさか自分がそんな所に行くようになるなんて、思ってもみなかったが…その進歩・発展は、たとえば往年の有名作家に、なにがしかの病名を献上したりしている)。

 そこで最終的に頂戴した病名は『適応障害』…広く一般には、通称『自律神経失調症じりつしんけいしっちょうしょう』で通っている、早い話、「うつ病」の一種だ!

『自律神経失調症』は、「交感神経」と「副交感神経」とから成る「自律神経」のバランスが崩れた場合に起こるらしい。

(「自律神経」とは、血管・リンパ腺・内臓など、自らの意思とは無関係に動く組織に広がる神経系の事。呼吸・代謝・消化・循環など生命活動の維持・調節を行い、自分の意思とは無関係に絶えず活動している神経だ)。

「種々の自律神経系の不定愁訴を有し、しかも臨床検査では器質的病変が認められず、かつ顕著な精神障害のないもの」と定義され、疾患名ではなく「神経症やうつ病に付随する各種症状を総称したもの」と一般的には認識されているそうだ。

(「交感神経」は代謝・消化などの生命活動を活発にする働きをし、「副交感神経」は、それとは反対の働きをする。およそ12時間交代で優位が入れ替わるとされるが、「夜更かし」や「ストレス」などで脳を休める時間が減ると「自律神経」が興奮し、結果的に優位入れ替わりのバランスが崩れ、『自律神経失調症』になるという)。

 原疾患として「うつ病」や「パニック障害」、「過敏性腸症候群」や「身体表現性障害」などがあるパターンが多く、それが特定できない場合も「ストレス」が原因になっている可能性があるため、『適応障害』と診断される場合もあるようだ。

(「自律神経」の中枢は脳の「視床下部」にあり、「情緒」「不安」や「怒り」などの中枢とされる「辺縁系」と相互連絡していることから、心の問題とも関係する。「人間不信」などの症状が見られる事があるが、「仮病」と誤解された末、「うつ病」になる事も考えられるという)。

『自律神経失調症』には色々な発症があり、特定の症状のみが強く表われるなど、様々なパターンがあるそうだが…自分に当てはまりそうなのは、身体的なものでは「冷や汗」「(体の一部の)震え」「(緊張していないのに)脈が速まる」「血圧が上下する」「吐き気」「過呼吸」が、精神的なものでは「不安感」や「イライラ」「抑うつ気分」などだ。

(その他としては「めまい」「立ちくらみ」「耳鳴り」「頭痛」「微熱」「生理不順」から、「人間不信」「情緒不安定」といった症状などがあるという)。

 原因としては、「夜更かしなどによる自律神経の興奮」「脳の疲労」「ストレスや更年期が原因のホルモン・バランスの乱れ」などが考えられるそうだが…最初の「寝不足」にはそれほど強く思い当たるフシはないが、発症当時の状況を思い出してみれば、「疲れ」「プレッシャー」そして「老化」などが()げられるだろう。

(遺伝による場合もあるが、多くは日常生活のストレスに原因があるようだ)。

 たしかに休職したばかりの頃、「血栓(けっせん)」等を疑って…

(血液の(かたまり)が血管に詰まる事だ。「不整脈」など、脈に乱れがあるとできやすいと言う)。

磁気共鳴断層撮影装置(MRI)」を撮った脳神経外科で、示唆されていたのだが…一番ひどい時の状態は、「パニック症候群」のパンフレットに書かれた症状そのままだった。でも…。

『まさか、そんなことがあるはずない』

 そう思い、まったく気にも留めていなかったのだが…感情というものが、電気や酵素など、体内物質の化学反応だとしたら、きっと何がしかのホルモンなどの不足やバランスが崩れたためなのだろうか? でなければ、話題のケータイやパソコンの「電磁波」か、「呪い」や「祟り」の類い?

(たとえば、ケータイの普及…アンテナの増加にともなって、「伝書鳩」の帰巣率(きそうりつ)が激減しているというし、また、所有している旧式のカセット・テープ再生専用のヘッドフォンステレオ。ラジオではなくテープを聴いているのに、近くで携帯電話が鳴れば「ブ! ブ! ブ! ブ!」と反応する事には、ずっと以前から気がついていた。「放射能」同様、電波は目に見えないから現実感が薄いが、全世界的に、より身近で切実な問題だと思うのだが…「かつて自然に取れた物を、自然のままに食べていた頃は、虫歯など無かった」と言うが、それと同様、現代病として適応していくのだろうか?)。

 それとも、地震や気象、はてはマインド・コントロールまで可能だと言われる「磁力兵器」のせい?

(「3・11東日本大震災陰謀説」がある。「地震兵器」は、強力な電磁波でマインド・コントロールもできるというが…何事にも予算がかかるという事がわかってからは、莫大な費用のかかりそうな荒唐無稽な陰謀論には、懐疑的になってきた。大きなお金が動けば、計画が露呈しないはずはないからだ)。

『こんなふうに考えてしまうのも、病気の症状?』

 なにしろ、定期購読している雑誌は、超常現象専門誌とモーター・スポーツ専門誌。「オカルト」と「機械」。一見、対局に位置するもので、前者はたしかに「とんでもネタ」的な記事も多いが、信じるか信じないかは本人次第。それに多くは、正論を踏まえた上での異説なので、通説も学べるし、違った視点からものを見る事ができるようになる。

 たとえば、先に挙げたように、今では宇宙人の存在を否定するほうが、可能性は低い。

(猿人が登場した600万年前以降、たびたび「第三種接近遭遇」…じかに地球外知的生命体と接する事…があったと主張する人もいるが)。

 いまだに宇宙人との接触が実現されていないのと同様、霊魂との出会いも、まだまだ先の事なのかもしれない。

(だいたい、なぜ138億年前「ビッグ・バン」が起こったのか? 今の人類の英知では、想像することすらできないそうだ)。

「肯定もできないが、否定もできない」

(本当に物事をわきまえている人なら、こう語るだろう。なにしろ、そこまで研究している人がいない・成果が上がっていない以上、正否を証明する事ができないのだから)。

 一方のモーター・レースの世界も、現実の世界を、どれだけ正確に把握できるかが重要になる。高速走行中の幻覚や幻想なんて、もってのほか。「神を見た」などという、クラッシュした後のカリスマ・トップ・レーサーの言葉を、日本人的な感覚や常識で()に受けてはいけない。それはあくまで、宗教的な比喩だろう。

(たとえば、幼女レイプ殺人犯の出稼ぎ外国人の自供にあった「悪魔が降りてきた」みたいな供述にしても、しかり。個人的には…日本語風に表現すれば「()がさした」といった意味だと解釈している)。

 現実離れした状況にあって、しっかり事実を把握していないと、大変な事になる。しかし…。

『どうして、こんな事になってしまったのか?』

 憶測はともかく…。

『ガラスのチキン・ハートなのか? 単なる「男の更年期障害」なのか?』

 かつてはレースに参加して、さんざん緊張する場面を経験していたというのに…。そこで、フトある考えがひらめいた。

『気力も、体力同様に衰え、寿命と同じように、一生で使える量が決まっているのではないか?』

 逆境にあったからといって、精神が鍛えられるとは思えない。多くの場合、心がすさんで終わってしまう事は、およそ人間が経験できる極限の精神状態「戦争」をみてもわかるだろう。心を病んだ帰還兵の話は枚挙にいとまがないが…「戦場」で鍛え上げられ、人間的に成長して帰ってきた…などといった話は、聞いた事がない。少なくとも最前線で、殺すか殺されるかの状況下にさらされて、まともな精神状態でいられる方が異常だろう。

(どちらにしろやっている事は、「人殺し」だ。かつて「ジョン・レノン」氏が勲章を授かる時、「戦争の英雄」として叙勲した人たちの不平や批判に対し反論したように、胸を張って誇れるようなものではないが…もっとも『戦争』は、「利権争いの最終局面」。「殺人が目的」の『殺戮』や『虐殺』と違い、『江戸城無血開城』のような、戦闘が生起しない戦いだってある。それゆえ、いまだに容認されている訳だ)。

 それにたとえば、名君や賢帝と呼ばれた人物でも、最後まで、それを貫き通せる人は、意外に少ない。晩年は、悲しくも情けない末路をたどった例も多い。きっと成功の途上で、「精気」(とでも呼べばいいのだろうか)を使い果たしてしまうのだろう。

(「君主制」といものは、人類40万年の歴史の最後の二千年に登場した、かなり進んだ政治形態。『世界の歴史』をローマへと読み進んで、「皇帝」というものが生まれた。あたかも、ギリシャ時代の「民主主義」や「選挙制度」から後退したかの印象を受けるが、「都市国家」から「領域国家」へと統治範囲が広がる過程で生まれた「必要悪」。そんな歴史を経て、最後はヨーロッパの、ひいてはアメリカの発展へとつながって行くわけだ)。

 ゆえに、若くして非業の死を遂げられたヒーローは、幸いなのかもしれない。

(いったい幾人の同時代人が、後世に名を残すだろう? ワー・ヒーローが不要となった現在、「アインシュタイン」博士と「ビートルズ」くらいのものだろうか?)。

 また、身長に遺伝の要素が大きいのと同様、長生きの家系というのもあるものだ。それに、「一生に心臓が打てる脈の数にも、限りがある」という説がある。それで、鼓動の早い小動物は短命なのだそうだ。

(なるほど、電気製品の寿命も、その起動回数や稼働時間だったりするものだ)。

 そろそろ、若い頃にスポーツをしていた人間が、ポックリ()く年齢。むしろ、「失調症」の症状が出なければ、一気に「心筋梗塞」とかに向かっていたかもしれない。

(特に競技中ずっと、脈拍数の限界とされる180回以上を打ち続けると言われるモーター・スポーツ。心臓などの循環器系のトラブルで最期を迎える人が多い)。

『古代マヤ暦』が終わるとされる今年。薬で治るのなら、それにこした事はないのだが…「心臓」の方は、また別物かもしれず…いまだ予断を許さない? 明日は新たな病院で胸部のCT検査があり、また発作が起きないか心配だが…昨日の診察で、「病院巡り」もひと段落。「血栓」の薬も変わったところで…値段は高いが、食事の制限がほとんど無い物…しばらく様子見だ。


 そんなわけで…昨日の、雷を伴った雨を降らせたのと似た、大きな雲が張り出してきたので、園内はそこそこにして帰宅。

(近頃は温暖化のせいだろうか? 見た目にダイナミックで良いのだが、たとえば「台風一過の晴天」などが無くなり、いつまでもグズグズと尾を引くような雲が残るものだし…「秋の空」のような、季節の変わり目の切れも悪くなった)。


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