番外編 ~ライター~
思いつきの話のため、今は番外編としています。
今後、本編として入れるかもしれないし、逆に削除するかもしれません。。。
クラブ閉店後。
ラムはカウンターに入ると今夜の売り上げの計算をし始めた。
その隣でごみをまとめていたハイリーだったが、そのラムの横顔がふいにあの人と重なり、改めてまじまじと、しかしラムに気づかれないよう手を止めずに見つめる。
不思議なくらい似ていて、本人なのではと思ってしまうほどだった。
と、突然ホールの電灯が消え、目の前が真っ暗になる。
舌打ちするラム。
恐らく電器屋がまた何か拾ってきてそれの修理を試したのだろう、この辺り一帯が停電となったのは間違いない。
停電に慣れているラムは持っていたライターをつけるとすぐに辺りが照らされ、橙の光がラムの手元を中心に明るくする。
そしてライターをカウンターへ置くと、薄暗いままラムは売り上げの計算を続けた。
ペンを握ったまま顎に手を当て、真剣な表情で数字を見るその様にハイリーはあの人そのものだと思った。
ただ、一つ違っていることがある。
それは、仕事の席には決して酒は置かなかったこと。
と、今しがたラムが記入した数字が違うことに気づき、ハイリーは売上表を指さして指摘した。
一か所誤りを見つけてしまうと、果たしてすべて合っているのか気になるというもの。売上表を自分の見やすい向きへとずらし、一つ一つ数字を確認していく。
結果、数字の誤りは一か所だけだった。
すべて合っていると伝えるためラムに視線を戻した、その時———思ったよりもラムの顔が近くにあり、ハイリーは驚きのあまり体が固まり動けなくなってしまう。
すると。
それまで一緒に売上表の数字を見ていたラムの視線が、ゆっくりとハイリーへ移動する。
ハイリーは視線をラムから外すことができず、至近距離でラムと見つめ合う格好となり、それが余計に緊張を加速させなお一層にハイリーの体を硬直させた。
時が止まったかのように二人の沈黙している間もライターの明かりは二人の顔を照らし、1つになった大きな影が壁に映し出されていた。
どのくらいそうしていたのか、間もなく電気が復旧し、ホールに明るさが戻ってきた。
同時にハイリーの体もようやく緊張から解放され、自由に動けるようにはなったけれど、今のほんの数分の間に、生きた心地がしないほどの緊張からどっと疲れが押し寄せ、今度は体が重くてたまらない。
肩を貸そうか、というラムの申し出を断りぎこちなく寝室へ急ぐハイリー。その後ろ姿を、ラムはただ不思議そうな表情を浮かべながら見送った。




