クーロンブギウギ
今夜もまもなくナイトクラブの開店時間。
バンドマンたちはステージで音の調整中。デイジーたち歌手は身支度を終え、控室でおしゃべりをしながら出番を待つ。フージエはカウンターに入り、すでに来店している客から注文を受けた酒の提供中。
ホールではラムとウェイターのロウがスポットライトの確認をして回っている。
ロウはラムが用心棒をしていた頃の同組織にいた若い組員で、反社側でも必ず仁義を通すラムをとても慕っていた。ラムが用心棒から足を洗った際には、組織を抜けてまでラムを追ってきた。
初めはラムに相手にされなかったが、なかなか仕事に就けずにクーロンで路上生活をするようになると、さすがに見かねたラムに仕方なく雇い入れてもらったのだった。
「よし、終わり。オレ、デイジーたちに声かけてくるわ」
お調子者で気楽者だが、気が短いところがある。とはいえラムを慕ってるだけあって、仕事はきっちりとこなす。
ラムがバンドマンに目配せすると、それまで思い思いに鳴っていた楽器が鳴り止み、そして、まったりしたジャズの演奏が始まった。
店内は一気に大人のリラックスタイムへと変わる。
仕事終わりにジャズを聴きなら酒を飲むこのひと時は、このクーロンでの数少ない娯楽の一つだった。
少しして、ロウに呼ばれてきたデイジーたちがステージ脇にスタンバイすると、それに合わせてまったりした演奏が終わる。
バンドマンたちが目配せすると、サックスとベースのゆったりしたリズムが始まる。そこへパーカッションが入り曲に深みを加える。
スタンディングマイクに両手を添え、しっとりと歌い上げていく。
目を伏せ、観客の疲れを癒すように、優しく切なく。
観客もゆっくりと酒を嗜みながら、ステージを鑑賞する。
演奏が終わると、拍手を送る観客にデイジーは一礼した。
コントラバスのベースがリズムを鳴らし始め、デイジーが重ねるようにメロディを口ずさむ。
次もしっとりした曲かと思いきや、軽やかなピアノが入り、パーカッションが一気にアップテンポにする。
個人的にはしっとりした曲よりもノリのいい曲が好きなデイジー。バックコーラスの二人とともに曲のリズムに乗り腰を捻りながら、上機嫌に歌い上げる。
客もみな笑顔で大いに盛り上がり、ホール全体が一体感に包まれる。
曲が中盤に差し掛かるとデイジーはスタンドからマイクを外した。そして歌いながらステージから降りていき、客の座るテーブルを順番に回っていく。デイジーを見慣れた常連客でも、いざ自分の席に彼女がが回ってくると、拍手をして大いにテンションが上がった。
座席から立ち上がり、リズムに乗って同じく腰を捻り踊り出す客。
指を鳴らし、一緒に歌を歌う客。
演奏をつまみに、静かに酒を味う客。
そして演奏が終わると、客は盛大な拍手や口笛を吹き、ホールはより一層盛り上がっていく。
今夜も夜は更けていき、そして平和な一日が終わる。
しっとりした曲のイメージはこちら:
暗号
https://www.youtube.com/watch?v=avXR3L2ndkw&list=RDDzQvNT8377M&index=2
龍巻風
https://www.youtube.com/watch?v=DzQvNT8377M&list=RDDzQvNT8377M&index=1
原曲はこちら:
暗号
https://www.youtube.com/watch?v=CYT9DPJdtS4
龍巻風
https://www.youtube.com/watch?v=RPWDeLqsN0g
テンポの速い曲のイメージはこちら:
上海ブギウギ
https://www.youtube.com/watch?v=nsg3llGngvs
もともと周杰伦のファンなのですが、今回の話のイメージにぴったりの英語のジャズをちょうど発見!良かったらぜひ聴いてみてください。




