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【百合】最推しが同級生だった挙句、弱みを握られ抵抗虚しく性的にタコ殴りにされるまでのお話。  作者: 中毒のRemi
第三章 期待の新星、VTuber灯アカリの電撃デビュー 東京編

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第76話 人間観察

 夕方頃。

 人通りが多い大きな橋の上で、手すりに体を寄せて、私はSNSの様子を見ながら下を通る車を見下ろしていた。


「多い」


 流石は元日の都会、それも日本で一番人がある集まる場所――東京だ。

 どこもかしこも人だらけだ。


 周りを歩く人はみんなオシャレな人だらけで、今を楽しんでいて、そして外に出ることを恐れていない。

 私はこんなにも恐ろしく感じていて、外なんか知りたくないと思ってるのに。

 

 でも、それでも他人というものを何も知らない私は、人について知っていく必要があるのも理解している。


 どれだけ私が底辺な人間だとしても、それでもある程度は社会に溶け込む努力をしなければならない。

 この世界は弱肉強食で、字の如く弱者は喰われて死ぬだけなのだ。


 私は人というモノを知らなければならない、他人というものを知らなければならない。

 そして時間をかけてゆっくりと、一般人に近づいていくのだ。


 私はスマホの画面に注力した。




 ---

 

 


 @sub_yuki_01

 新しくデビューしてきたアカリって子、マジでキモいと思うだけど、どう? なんか自分がやったいじめ行為を正当化してように見えて無理。


 @toyama_no_kaze

 つうか男がいないからって何? 結局は灯アカリとかいう恋人候補がいるんでしょ。ならダメじゃん。さっさと消えてくれよ。


 @pixel_art_lover

 なんか詩音の配信時間がめっちゃ減ったと思ったけど、きっとコイツのせいなんだろうな。


 @774_ordinary_user

 話し方がキモい。


 @nanimono_566

 シンプルに死ね




 ---

 

 

 

 私が清水さんを蹴り飛ばしたとき、少なからず自責の念はあった。

 悪いことをしていたという自覚はあった。


 では、今私に誹謗中傷の雨を降らせてる世間の皆々様はどうなんだろうか?

 その自覚はあるのだろうか?


 ……私はそんなモノがあるとは思えない。

 彼ら彼女らは正義の名の下に、私に非難の矛を突きつけている。

 これこそが万人の正義なのだ。

 

 きっとこんな事をする理由には、自分は何にも被害を被らないから、そうすれば勝手に相手が消えてくれる可能性を信じているから。

 それとただ日頃のストレスの吐口にもされているだろうし、理由は様々なのだろう。


 ――私は間違っているのではないだろうか?

 思うに私のように悪意を受け止めるのは間違っていて、もっと身勝手に他人のことなど気にせず暴れるべきだったのではないだろうか?

 

 文化祭の時、彼を嬲った私は一体どんな気持ちでやっていたのか。

 あまりしっかりと思い出す事ができない。


 ただ、もっともっと磨き積み重ねるべきなのだろう。

 人としてあるべき経験を、他人を蹴落として悦に浸る向上心を。

 その先に人として正しい在り方がある。

 私がまだ知らない、目指すべき理想が。


《元日なのに、こんなところで何をしているんだい?》


 気づけば、()が横に立っていた。


 私は、またか、と思った。

 

 だけど、それだけに私の思考は止まったりしない。

 

 当然このゴミからも、学べることはあるだろう。

 私は今、あまねく人の耳目を集め、その善悪を問わずに利用しなければならない立場にいるのだから。


「人間観察を……していました」

《人間観察?! いいね、俺も他人を見るのは大好きなんだよ! 俺は今の流行を知るために人の服とか持ち物を見てたりするんだけど、君は何を見てるの?》

「…………何を見ているのでしょうか」

《え?》

「私は長いこと友達がいなくて、それで引き篭もりにまでなりました。そして全部が上手くいかないまま罪の償いのために東京へ来て、飲まず食わず寝ずに必死に働いて、今ここに立ってるんです」


 私はそこで初めて、話しかけてきた男に視線を向けた。

 視線が交差した瞬間、何故か男の頬から血の気が引き、彼は二歩ほど後ずさった。

 

《そ、そうなんだ……凄いね》

「人間社会とは弱肉強食の原理のもと成り立っている。それは絶対不変の原理だと思うんです」

《わ、分かるよ。弱かったら不幸になるだけだもんな》


 肯定する言葉が聞こえた瞬間、私は彼の手を両手で優しく包み込んだ。

 そのままなぞるように指先をさすり、甘く囁く。

 

「えぇ、本当にその通り……弱ければ不幸になる。だから私達は他人を騙してでも幸福を勝ち取らなければなりません」

《そ、そうだっ! その通りだと……思う》

「分かって頂けて何よりです」

《おぉふ……まぁ、ここで話すのもなんだからさ、一旦一緒にコンビニでも行かない? 好きなもの奢るよ?》

「……良いですね。行きましょ――」


 私はそう言ってどこぞの馬の骨とも知れぬ男と、当然のように腕を絡める。

 そのまま深い闇へと続く誘いに、身を任せようとした――その時だった。

 

「アカリ、そこで止まれ」

「ん?」


 後ろに振り向くと、何故か傘を持った宮本さんが立っていた。


「誰だ、あんた」

「あぁ? 俺はソイツの――」


 なぜか彼は私を直視してきたので、私はひどく億劫な気分になりながらも、ただ怠惰に視線を合わせ返した。

 

 数秒の沈黙の果てに。

 宮本さんは吐き捨てるように、とんでもない言葉を言い放った。


「――ソイツのセフレだ!!」

「……………………………………」

「はぁ?! セフレだぁ?」


 あまりに低俗で、救いようのない嘘。

 

 私は男に絡めていた腕を無造作に解き、彼を置き去りにして宮本さんへと歩み寄った。


「ん?」

 

 そして彼の目の前に立ち止まり、その股倉を、一切の躊躇なく蹴り上げた。

 鈍い衝撃音と共に、宮本さんがその場に膝から崩れ落ちる。


「ぐっ、あ――っ!?」

「えぇ!?やばコイツら……退散しよ」


 ナンパ男は蜘蛛の子を散らすように、都会の雑踏へと消えていった。


「言うに事欠いてそれですか? 失望しましたよ、私」

「…………ざっけんなや、このクソアマ…………それはこっちのセリフだ……ボケ」

「ここで話すのも何ですね。もっとマシな場所に出ましょうか」


 私はうずくまる彼の襟首を無造作に掴み上げると、犬の散歩でもするかのような足取りで、その重い体を引きずりながら歩き出した。

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