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【百合】最推しが同級生だった挙句、弱みを握られ抵抗虚しく性的にタコ殴りにされるまでのお話。  作者: 中毒のRemi
第三章 期待の新星、VTuber灯アカリの電撃デビュー 東京編

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第75話 配信を終えて

 現在時刻1月1日、16時頃。


 控室に足を踏み入れると、先輩ライバーたちの熱気が肌にまとわりついた。

 いつの間にか人数が増えている。

 

 正月早々だというのに……よほど暇なのだろうか。


《お帰り〜アカリちゃん! 配信良かったよ!!》

《良かったのかアレで? 俺はだいぶヒヤヒヤしたし、なんならかなりのアウト寄りだろ》

《でもまぁ、首の皮一枚繋がったって感じじゃない?》

「ふぅ……」


 周りに人が多いってだけで、私の頭はリソースを使ってしまう。

 やっぱり人が多いところは嫌だ。

 人が多いところに行くのなら、最低条件でも詩音さんがずっと隣にいて欲しく思う。


 ――『死んでよ』


 あぁ……ダメだ。

 気持ち悪い。

 頭が痛くなってくる。


 既に頭がジンジンと鳴り響き、耳鳴りが凄い。

 弦巻さんにもらった薬がなければ、とっくの昔にぶっ倒れてしまっているのだろう。

 

 2週間近くを殆ど眠らずに過ごせているだけでもだいぶ御の字だが、もうかなりキツめだ。

 さっさとこの都会を離れて、家で眠ってしまいたいものである。


 私は人目のつかない席へ深く腰沈め、目頭を指先で強く押さえた。


《アカリさんはお疲れって感じ?》

「まぁはい……それより今のSNSの状況を誰かまとめて喋ってもらっていいですか? どうなってるか気になってるんです」

《それは俺が――》

「私が教えてあげるよ、茜っち」


 すると目の前には弦巻さんが立っていた。

 いつの間にか眠りから覚めていたらしい。


「キミは、私がした提案を覚えてる?」

「百合営業って話ですよね。貴女は百合営業で働く私に期待してるとかいう話」

「そうそうそれ。実はアレ別に全く期待してない……っていうか意味ないんだよね」

「なるほど? なら、私が今やった配信に何の意味があったんでしょうか」

「意味ならある。それに私が期待してたのは、茜っちが初配信でどんだけはっちゃけてくれるのかってところだったしね。そこから先の百合営業なんかあったところで、もうその頃には日が鎮火してるよ〜」


 そう言って彼女はスマホを差し出しTmitterの状況を見せてくれた。

 弦巻さんの説明は、簡潔でその上的確だった。

 

 曰くこれまでネット上の反応は、詩音さんを叩いて数字を稼ごうとするハイエナたちが支配していた。

 だが、灯アカリという特大の不純物が投入されたことで、ネット市場は未曾有の大混乱に陥っている。


 一つ目の影響。

 まず私はこの事件の主な相関図を、配信上で視聴者に示した。

 その私が喋った話の影響により、視聴者のなかで「本当に詩音を叩くべきなのか」という疑念と混乱が生じた。

 彼女の所感で見たところ、この前まではシオンさんへの叩きがとても目立っていたが、それでも実態としてはそれほど数は多くなかったという。

 

 もともと詩音さんを熱心に叩いていた層は、実は声が馬鹿デカいだけの少数派だった。

 今や己の間違いを認めて手のひらを返した者と、意地でも信念を曲げないアンチが、ネットの各所で泥沼の殴り合いを演じている。

 そのうち私たちがあずかり知らぬ場所で、彼らは勝手につぶし合い、何かする必要もなく炎上は自然消滅を辿るという。


 そして二つ目の影響。

 新たに世間が向けるべき悪として、私と清水さんが浮上したこと。

 これによって詩音さんの影は大きく退き、矛先は私と清水という元凶へと切り替わり始めた。


「ふふ……馬鹿な人達ですね」

「ん?」

「私が配信中に考えていたことは、いかに詩音さんに集中してるアンチを私と彼に分散させるかという一点のみ。まぁ清水さんは有名人でもなんでもないので、被害を被るのは私だけですけど」


 これで激情した彼が私の情報――顔写真なんかあげてしまってくれても良いし、反応がないまま沈黙してくれてもどちらでも構わない。

 詩音さんの影が薄くなっていく限り、全てが私の利に事は運ぶ。

 傷つくのが私だけで済むならそれで構わない。


 もちろん世間がそう簡単に矛を収めるなんて私は期待してないので、やはりここから暫く私が一方的に嬲られるフェーズに入るだろうし、そうなるべきだ。

 そして今私に降りかかる誹謗中傷は、私が詩音さんに与えた傷より生優しいものである。

 私は人を理解するため――同じ立場としてものを見るため、甘んじてこの現状を受け入れなければならない。

 

《やだこの新人、配信中にそんなこと考えてたの?》

《あの内容ならまあそうなるわな。おかげで運営的にはシオンにたかっていた蛆虫が分散して万々歳だろうけど。今度はアカリにアンチが集中する。都合が悪くなれば、この子の首を切って「お騒がせしてすみませんでした」でチャラ、か?》

《そしたら事務所の正気を疑われる以外は、すべて元通りになるのかもね》

「…………お前ら言い方が酷すぎるだろ。確かに内容は褒められたもんじゃないが、うちのエースが一人倒れれば、あとは連鎖的に沈んでたはずだ。俺らは結果的にコイツの手腕に救われたんだよ。あんま適当言ってんじゃねえよ馬鹿共が」

《《《《…………》》》》


 なんか弦巻さんの話を聞いている最中に、離れた席の先輩たちが口論を始めていた。

 ウザいから、聞こえないところでやって欲しいものである。


「ここからは、特に茜っちが頑張るところとか無いと思うよ〜。流れ次第だけど……多分あの内容ならギリギリ良い感じに、火は落ち着いてくれるだろうね」

「……それは良かったです。あとは私が詩音さんに謝りに行くだけですね」

「や〜、茜っちは本当によく頑張ったねー。ここ数日間は結構楽しんで見せてもらったよ。ここまで頑張られたらお姉さんも認めざる終えないな〜」

「認める?……何を?」

「それはしおっちと茜っちの交際を、だよ」

「何を今更。それに貴女は別に面白ければなんでも良い側の人でしょう?」

「違うよ、違う違う。私はこれでもしおっちの将来を考えてだね――」

「はいはい、それより話の続きを……いえ、その前にそろそろプライベートを解禁しますか」


 私は今日という日が来るまで、仕事以外の一切の連絡を絶っていた。

 別に断つ必要があるほど連絡が来たりしないけど、集中してる時に一度でも絶対に邪魔なんてされたくなかったから、そうする必要があった。


 久しぶりにLINEを立ち上げると母から一件とメッセージが、坂本さんから一件電話が入っていた。

 母のメッセージには『いつ頃帰ってくるの?』というものだった。


 ……まぁ、今はガヤガヤうるさいし、後で『20時頃に帰る』とでも連絡を返せば良いだろう。


《アカリちゃん、同性愛者なんだって? 実はお姉さんもそうなのよ。ここは一つ、今から一緒に抜け出し――》

「不同意性交等罪」

《わぁあああ! 振られちゃった〜!》


 そう言えば昔、詩音さんが言っていた。

 Vtuberは頭のネジが外れていないと大成しないと。

 冗談とは言えど、16歳相手に平気でこの誘いを出来る人が複数人いるところ。

 それがVtuber業界。

 

 ……面倒くさい場所である。


「あぁ……頭が痛い」




 ---



 

 そして控室で休憩している間に、先輩方の仕事も終わったようだ。


「よ〜っし、全員のやる事が終わったし今から飯行くぞー! ちなみに数日前に予約は済ませてある」

「うぃ〜!!」

《フォオオおおお》


 宮本さんや弦巻さんを筆頭に、先輩たちのボルテージは最高潮に達している。

 

「これはお前のデビューを祝う会でもあるんだぜ。もちろんアカリも行くよな?」

「…………」

「ってのは冗談だ。愛する人の元に今すぐ戻りたいんだろ? 道草食ってないでさっさと帰るんだな。ガハハッ!」

「……すみません」

《あれ?アカリの事はマネージャー(マネちゃん)が送ってくれるんじゃないの?》

「それは……最後にちょっとだけ東京を見てまわりたかったので、遠慮させてもらいました。どうせ暫くここに来る事はないので」

《おぉん、寂しくなることを言うね》

《未成年が大人の付き添い無しで帰るとかアリなのか……?》

「茜っち、また今度ね〜」


 投げかけられる数々の言葉に、私は機械的に一礼を返し、出口へと背を向けた。

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