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【百合】最推しが同級生だった挙句、弱みを握られ抵抗虚しく性的にタコ殴りにされるまでのお話。  作者: 中毒のRemi
第三章 期待の新星、VTuber灯アカリの電撃デビュー 東京編

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第71話 誰も信用できない(月宮:視点)

 私は3年もの期間をVtuberとしての活動に心血を注いできた。

 寝る間も惜しみ友達との遊びも、縁を切られない程度に最低限にして。

 ……学生として青春を捨てて、必死に頑張ってきた。


 もちろんこの活動自体が、私の心の支えになっていた部分はある。

 それはとても大きいものだ。

 アメの提案に言われるまま、嫌々やり始めた仕事だったけど、今はもう本当にとても大好きな仕事だと言っていいくらいに、配信業が好きになった。

 ファンのみんなも、それを理解してくれていると思ったのに……


 彼氏がいるなどという偽り火は、消えることなく燃え広がっていく。

 あんなよく分からない合成のような動画が、あまりに影響力を持ったせいで。


 そして私は無実の茜に矛を突き立ててしまった。

 自分では何を言ったのか殆ど思い出せない。

 きっといっぱい悪いことを言ったのだと思う。

 その中で言い放った最たるものだけは、頭に残っている。


 ――自殺教唆。

 

 私は茜に死ぬよう強要してしまった。

 ただそれだけなら私の印象にも薄かっただろうけど、彼女はそれに頷き、迷うことなく自分で自分を刺そうとまでしていた。

 更に私は泣いてる彼女相手に更に精神が昂ってしまい……


「……最低だ、私」


 思い返してみて分かる。

 アレは今までの彼女が流してきた涙とは、全くの別物。

 あの顔はおそらく、過去に同じようなこと言われた経験が……あるのだと思う。

 

 私は過去にいじめを受けていた訳ではないから、断言できないけど、それとは別ベクトルで嫌な経験をしてきた。

 その経験から察するにきっと私は……過去に彼女を虐めていた子達と同じことを口にした。

 それも追い討ちまでかけて。

 

「謝らないと……」


 私は暗闇のなか手探りで、スマートフォンを拾い上げた。

 液晶が放つ暴力的な光のなかには、無数の通知が溢れかえっている。

 

「あぁっ……!!!」


 画面を直視するだけで、心臓が握り潰されそうだった。


 私はそれを読めるだけの精神力は残っていなかった。

 

 きっといっぱい返さなきゃいけない返事があるだろう。

 マネージャーや他のみんなが心配してメッセージを送ってくれていたりもするんだろう。

 

 でも、今の私には無理だ。

 もしもそれに、ネットで書いてあるような事が含まれていたらと思うと、とても見れない。

 

 もう泣きたい。

 叫んで喚いて全部ぶっ壊してしまいたいのに………………私の脳裏には、あの茜の涙がこびりついている。

 

 そしてアメがここを出る時に言っていた一言。

 彼女はこの件を解決するのは茜と言っていた。

 

 炎上の解決。

 まず炎上に解決などない。

 たとえ何ヶ月か経ち、ある程度火が完全に消えた後でも、それは何かある度に蒸し返される。

 特に自分に非があったり恋愛関係のことなら、それは顕著に現れる。

 

 だから解決などできない。

 できるわけがない。

 しかもそれをこなすのはアメではなく茜なんて……あまりに荷が勝ちすぎている。

 他人と接触するのを極度に嫌う茜にそんな真似が……


 その時だった。

 突如私の家の玄関が扉が開けられた。

 そこに立っていたのは、アメの父――つまりは私の今の親に当たる人が立っていた。


「詩音……大丈夫かい?」

「お父さん……」




 ---




 お父さんは荒れ果てた部屋を、黙々と片付けてくれた。

 私はただ部屋の隅で膝を抱え、その背中を見つめることしかできなかった。


「詩音、話はあの子から聞いてるよ。一度うちに戻ってくるつもりはないか?」

「ごめんなさい……それはできません」

「私達は詩音が家を飛び出して寂しいんだ。雨なんかずっと昔から家にいないことの方が多いし……」


 アメ……私をこの場所に縛るために、わざわざ家族まで動かしたのか。

 余計な事を。

 

 アメは自分ではあまり私に干渉してこないくせに、他人を使ってこういうことばかりしてくる。


「私達はきみの親なんだ。まだ子供なんだから――」

 

 ありがたい話だけど、もうこれ以上他人の親に迷惑をかける事はできない。

 元々弦巻家を飛び出したのも、私の収入が完全に安定し、高校の入学先が決まったからこそなのだ。

 このマンションの一室はもちろんお父さんの名義だけど、費用は私が全額払い。


 昔は本当に助かったけど、もう私が世話をされる必要性はない。

 これからは私が彼らに恩を返すべき番なのだ。

 だから……


「ごめんなさい。気持ちは嬉しいんですけど、1人にしてもらえると助かります」

「そうか……すまない。またくるよ」


 そう言ってお父さんは去って行った。



 ---



 そして12月24日がすぎた。

 炎上はの勢いはみるみる増していく。

 デマの数もそれに比例するように、膨れ上がっていく。


 もうこの規模で私の顔が拡散されているとなると、学校内でも噂されている頃だろう。

 これじゃ普通に外を歩くこともできないかもしれない。


 だけど3日ほど経って、心はほんの少しだけ落ち着いてきた。

 まだ殆ど眠れないし、連絡アプリは三日前に全部消しちゃったけど……お菓子ならちょっとずつお腹に入るようになった。


 けれど余裕ができた分の隙間時間には、あの時の茜の涙と、自殺を決心し自らに刃を差し向けた光景が、フラッシュバックするようになった。

 

「茜…………ごめん、茜……ちゃんと謝らないといけないのに……」


 今は他人と話すほどのエネルギーはない。

 

 私はsafaliで捨て垢を作って、Tmitterのタイムラインを覗き見る。

 

 やはり火は消えていない。

 ……いつ消えてくれるのだろう。

 

 早く消えてほしいと願っても、それは消えない。

 もう何もかもが後手に回っていて、ダメダメだ。

 私は何か悪いことをしたのだろうかと思ってしまう。

 みんなに好かれるよう、しっかりと努力してきたはずなのに……


 その時また玄関の扉が開かれた。

 チャイムも鳴らずに。

 

 ……またお父さんだろうか。

 重い体をひきずるようにして、私は玄関に足を向けた。


「やぁ、詩音」

「は?………………はぁああああああッ?!?!」

「ドーナッツ買ってきたんだけど食べるよね?」

「な、なんで……あんたがこの住所知ってんの?」


 玄関に立っていたのは――坂本鈴菜だった。


 コイツが私の現住所を知っているのは、明らかにおかしい。

 私の住所は友達の誰も知らない。

 そしてアメは、死んでもこの場所を他人に吐いたりしないはず。

 なら茜が……?

 いや、ありえない。

 茜もアメ同様、そんな真似は絶対にしない。


「まさか……」


 最悪の可能性が頭をよぎり、私は後ずさってその場にへたり込んだ。

 住所が既にネット上に晒されているのではないか。

 その恐怖が、一瞬にして思考を支配した。


「やだ……まだ死にたくない」


 一度体が震えだすと、もう止まらなかった。

 歯の根が合わず、カチカチと乾いた音が漏れる。

 

 幼馴染だったはずの鈴菜さえ、今は命を脅かす襲撃者に見えた。


 震える指で110と打とうとするが、視界が滲んで指先がうまく動かない。

 

「ち、ちょっと待ってええぇぇ?!?!絶対に何か勘違いしてるよね???」

「……っ…………」

「詩音、ここは一旦落ち着こう?! ね? ステーイ! ステーイ!!」


 鈴菜は慌てて手提げ袋を床に置き、降伏するように両手を高く掲げた。


「答えて……なんで鈴菜がここを知ってるの?」

「そうだよね? それを答えないといけなかったよね?!」

「…………」

「ここを教えてくれたのは、マキちゃんのお父さんだよ!『私じゃあの子の支えになれない、だから頼んだ』って言われてね。まぁこっちからマキちゃんの家に押しかけてその返事を貰ったから、タイミングが良かったのかな〜……なんて」


 それを聞いた瞬間、私の指から力が抜け、スマートフォンが床の上に滑り落ちた。

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