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【百合】最推しが同級生だった挙句、弱みを握られ抵抗虚しく性的にタコ殴りにされるまでのお話。  作者: 中毒のRemi
第二章 文化祭編

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第53話 推しの家にご招待

「お姉ちゃん、たくあん解禁おめでとう!!」

「今後は無理しちゃダメだからね?」


 文化祭からひと月以上経ち、11月の中頃。

 ようやく私は大好物を食べる許しを得た。

 

「…………入院費は全部自分で払ったのに今まで禁止だったの、普通に虐待じゃないですか?」

「教育の範疇よ」


 元々は、祖母に勧められて食べるようになったたくあん。

 気づけば好物となってしまい、挙げ句の果てには食べると、高血圧のせいで鼻血が出るという体質になってしまったのが今の私である。

 なので私は大好物を食べるために、基本的に運動を欠かしていない。


 もっとも、家から一歩も出たくない私が行うのは、室内で縄跳びとスクワットを1時間近くする程度だが。

 

「そもそも!私が入院したのは極度のストレスが原因であって、食べ物のせいじゃないですからね!?!?」

「知ってるわよ、そんなこと。でも丁度良い機会だったし、塩っぽい物を制限するチャンスかなって思って」

「入院するまではきっちり運動もしてたんですけど!!!!??」

「まぁまぁ、そんな怒らないでもいいじゃない。たくあんばっかり食べてないで、ケーキでも頬張ってた方が女の子らしいわよ」


 どうやら我が家の母は、食の恨みというものの恐ろしさを知らないらしい。

 

 普通に一生忘れないと思うし引きずると思う。

 1ヶ月も好物を制限されてたの。


 そう思いながら、一本の長いたくあんを丁寧に切り分けていた、その時だった。

 

 まな板の横でスマホが震え、LINEが通知を告げた。

 包丁を置いてメッセージを確認すると――


『今週の土曜日、私の家に泊まりにこない? 美味しいお菓子もあるよ』


 私の指は考えるより先に動いていた。

 

『行きます』


 食の恨みがどうのと頭を巡らせていた矢先に、まさかお菓子で釣られてしまうとは。

 お泊まりに行けるのは純粋に嬉しいし、一介のファンに過ぎない私が家に入れてもらえるほどの信用を得られたことも誇らしい。

 ただ確かその日は、詩音さんと弦巻さんのコラボ配信があった気がするけれど……

 

「お姉ちゃん、何ニヤけてるの?」

「別に……ただ2日後はお泊まりしに行くので、夜ごはんは作れないとだけ言っておきます」

「好きな人の家にお泊まり? 最高じゃん」

「はいはい、そうですね。好きな人好きな人」


 妹の軽口を適当に受け流しながら、私はたくあんを切る作業に戻った。



 ---




 土曜の昼下がり。

 送られてきた住所を頼りに辿り着いたのは、駅のすぐ近くに建つ綺麗なマンションだった。

 

 中学卒業と同時に実家を出て一人暮らしをしている彼女。

 これほど学校に近い場所を選んだのは、通学の手間を極限まで省きたかったからだろうか。

 ……そんな思索を巡らせていた時だった。


「……?」


 視界の端に鮮やかな色が混じった。

 私の眼鏡は興味のない人間を等しく白く塗り潰す。

 その中で遠くを歩く黒いパーカー姿のシルエットだけが、確かな実在感を伴って動いていた。


「あれ? 詩音さん、わざわざ私を駅まで迎えに出たのでしょうか? ……別に道に迷ったりしないのに」


 そう思って、私は前を行く彼女を追いかけようと駆け出した。

 けれどその時。

 

「茜〜! こっちこっち!!」

「え?」


 背後から聞き慣れた声がして、思わず振り返る。

 そこにはマンションの入り口で、大きく手を振る詩音さんの姿があった。


「どこ行こうとしてたの? マンションの名前も書いてあるのに」

「いや……え?」

「どうかした?」

「……いえ、さっき私の目の前を歩いていませんでしたか? 黒のパーカーを着て」

「私がそんなの着るわけないでしょ。茜じゃあるまいし。っていうかまたその格好なの?」

「だって外に出る時は便利ですし」

「……信じらんない。明日は買い物決定ね」

「わっ、悪いですよ、そんなの」


 ……それにしてもおかしい。

 私のこの眼鏡は、興味のない人間を白く塗り潰すはずだ。

 だとしたら、視界の中で色を帯びていたあの人物は一体誰だったのだろう。

 

 私の服のセンスとほぼ変わらないし、遠い鏡越しで自分を見ていたとか???

 もしくはお化けの可能性さえある。


 ……怖くなってきたかもしれない。

 外そうかな、この眼鏡。


「何ぼ〜っとしてるの?」


 詩音さんが不思議そうに私の顔を見つめていた。

 

 一旦この話は置いておくとしよう。


「いえ……確か昔、詩音さんは日曜日は天井を眺めてる日って言ってた気がするので、邪魔するのもアレかなーって思いまして」

「その習慣は……最近しなくなったの。っていうか最近の日曜日はいつも茜と通話してるんだから、天井なんて眺めてる暇ないでしょ。……さては買い物に行きたくないからって、話を逸らそうとしてる?」

「そ、そんなことないですよ」

 

 まぁうん……行きたくはない。

 普段外に出ない私にとって、服を買うのは無駄な投資に近い。

 お洒落着なんて宝の持ち腐れだ。


 そんなやり取りをしながら、私たちはマンションのオートロックを抜け、詩音さんの部屋へと向かった。



 

 初めて入る友達の部屋。

 少し高揚した気分で足を踏み入れた瞬間――そこには、絶句するような光景が広がっていた。


 初めて入る友達の部屋。

 少し高揚した気分で足を踏み入れた瞬間――そこには、絶句するような光景が広がっていた。

 

「えぇ……」

 

 中々に酷い有様だった。

 ……いわゆるゴミ屋敷といったところか。

 

 人を家に招くなら、最低限の掃除くらいは済ませておくもののが常識だと思っていたけれど、どうやらそれは違ったらしい。

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