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【百合】最推しが同級生だった挙句、弱みを握られ抵抗虚しく性的にタコ殴りにされるまでのお話。  作者: 中毒のRemi
第一章 出会い編

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第30話 同級生に子守歌で眠らされ、羞恥に悶える最推し

 行き着くとこまで行きついてしまった気がする。

 けど結局最後の一線は越えられなかった。

 ……でもそれで良かったのだろう。

 

 性的虐待を受けた人に、私は虐待した人間と同じような真似をしかけた。

 未遂――いや、もう世間的な目で言ってしまえば、やり切ってしまったようなものだ。


 だけど何とか自分の欲求を押し殺して、最後の最後に耐えきる事ができた。

 なんならコンビニへ行く直前に、月宮さんは空元気でいつものように、雰囲気を戻そうとまでしてくれた。

 私から酷いことをしたのにも関わらず。


「はぁ、最後のチャンスだったのに。……私はここで止まれる良心を残してたんですね」


 ……きっとそういうことができる機会があるとしたら、今回が最初で最後だっただろう。

 でもここで止まれて良かった。


 好きな人を一方的に愛する事ができるのも、私個人としてはアリだけど、やっぱり私は相思相愛でいたい。

 男性のように精を吐き出して終われるのならともかく、やっぱり私は一夜なんかで満足できないのだ。

 

 月宮さんとはできる事なら、良好な関係のまま長く付き合いたい。

 でもそれは友人としてではなく、恋人としてで……そしてそれがどれだけ希望のないことかも理解している。


「まぁ先の事は、未来の自分に託すとしましょう」


 私は適当に絆創膏とみかんゼリーを2つ買って、ホテルに戻った。

 



 ---




 スマホを確認すれば、時刻は二十三時半を回ったところ。

 

 部屋に戻ったあとは、なんとか何事も無かったような雰囲気で、私達はゼリーを食べ終える。


 食べ終えると、私は先に自分のベッドへと身体を投げ出した。


「月宮さん、私と一緒に寝ませんか?」

「…………」

「安心して下さい。絶対に何もしませんから」

「……さっきのアレがあった後に、よくそんなこと言えたね」

「それを持ち出すなら、貴女をこのまま野放しにして寝るのが怖い、私の気持ちも考えて下さいよ」


 そう返すと月宮さんは、つーんとした何とも言えない顔をしながら、私のベッドに縁に座った。

 どうやら一緒に寝るのを許してくれるようだ。


 そして彼女は少しどもりながら、口を開いた。


「こ、告白の件なんだけどさ――」

「その話はやめて下さい」

「…………」


 私は食い気味で話を断ち切る。


「月宮さんが私に恋心を抱いてないことくらい分かってます。そして今口にしようとしたのは告白を【断る】または【お試しで付き合う】のどちらかの内容だった筈です」

「…………ん」

「そのどちらも私からすれば、関係の終わりへ続いてるようにしか見えません。月宮さんがもし私との関係を続けて良いと思うなら……」


 私は縁に座っていた彼女の腰を引き寄せ、背後から抱きしめるようにしてベッドへ倒れ込んだ。


「いえ、これ以上の言葉は不要ですね」

「あ、茜ちゃんっ?!……何もしないって」

「何驚いてるんですか。別にこれ以上は何もしませんよ」


 ……とはいえ本当に何もしないのでは、結局彼女が眠くなるまで、無意に時間を浪費するだけだ。


 さて、どうするべきか。

 ――そんな時、私は不意に閃いた。


「あっ……!」

「どうかしたの?」

「今、月宮さんが一緒に眠くなれる良い方法を思いつきましたよ! 私が眠れない時期によくシオンちゃんにやって貰ってた方法です!」

「……凄く嫌な予感がするんだけど、言ってみて」

「それは、私が羊の子守唄を歌ってあげるというものです!」


 羊の子守唄。

 ただただ羊の数を数えるだけの事である。

 これをシオンちゃんが、深夜配信でやってたのを今思い出したのだ。

 私はこれで不眠症だった時によく眠れたのを記憶している。


「ねぇ…………本当に凄く嫌なんだけど、それ以外の方法を思いついたりしない?」

「しません」

「私はこのままこうしてもらえれば眠れるから、本当にそういうのは…………凄く恥ずかしいっていうか……」


 背中越しに嫌がっているのがひしひしと感じる。

 

 私からすれば一度も試してないというのに、そんなに嫌がられても……って感じだ。

 人間に睡眠は必要不可欠。

 眠れないのなら、下らないプライドなんて捨てて、打てる手はすべて打つべきなのだ。

 

「ちなみに私の家で寝泊まりした時、一睡でもできましたか?」

「できて…………ない」


 ……あの時、妙に機嫌が悪いと思っていたけど、やっぱり眠れなかったのが原因なのだろう。

 それを知ってこのまま彼女を放置する選択はない。

 

「なら尚のことダメですね」


 私は彼女の細いお腹に右手を添え、左手をその小さな背中に回した。

 

 子供をあやすような一定のリズム。

 掌から伝わる彼女の微かな体温を感じながら、トントンと優しく背を叩き、低い声で羊を数え始める。


「では、頭の中でぼんやりと情景を浮かばせて下さいね。…………羊が一匹…………羊が二匹…………」

「ちょ、ちょっと待って!!何で私は背中を叩かれてるの??? 意味わかんないだけど?!」

「子供を寝かしつけるのには、有用なやり方らしいですよ。本能的に母の鼓動を感じれるからとか何とか。誰かが説明してた気がします」

「私は赤ちゃんじゃない!!」

「はぁ……うるさい口ですね」


 暴れる彼女を抑え込むように、私はお腹に置いていた右手を移動させ、その唇を強引に掌で覆った。


「〜〜〜〜っ!!」


 まだ何か言っているようだけど、結構ガッチリ塞いでいるせいで何を言っているかは分からない。

 ……というか、普通に抵抗しないで欲しいんだけど。

 

 子供扱いされることに、コンプレックスがあったりするのだろうか。

 だとしても申し訳ないが、ここは受け入れて欲しい。


「…………それ以上騒いだら、()()()()――しちゃいますよ?」


 彼女の耳朶に唇を寄せ、熱を孕んだ吐息とともに囁く。

 

 途端、彼女の動きが石のように止まった。


「もう一度最初から最初から始めますね。……羊が一匹……」


 再び、単調なリズムを刻み出す。

 口を塞いでいた手をゆっくりと離しても、彼女はもう置物のように静かだった。

 やがて強張っていた彼女の身体から少しずつ力が抜け、呼吸が深くなっていく。


「羊が500匹………………もしかして眠っちゃいましたか?」


 問いかけに返事はない。

 静寂が部屋を満たし、彼女がようやく深い眠りの底へと沈んだことを悟った――その時だった。


「お母さん……」


 意識の底から零れ落ちたような、か細い一言。

 その後に言葉は続かなかった。

 

「……寝言」


 母親を呼んでいるだけだというのに、これほど可愛くない寝言というのも中々無いだろう。

 月宮さんの家の事情を知らなければ、もっと楽観的にいられたのに。


 ……今思えば私の寝かしつけを彼女が嫌がっていたのも、遠い過去の記憶を想起させてしまうから、無意識に嫌がられたのかもしれない。

 これで結局成功してしまったのだから、結果論として正しかったのだが、少し申し訳なさが残る。


「よくないですね、私。……犯罪でもなんでもない事に、反省ばかりしてしまうのは」


 倫理観なんてものは、法律が許し限りの範疇で全部無視した方が、人生を楽しめるというのに。

 …………こういう無駄な事の積み重ねで、更に自分が嫌いになってくる。


 そして、こんなことについて深く考えてしまうのも良くない。

 考えすぎているのも疲れている証拠だ。


 思考を止めるように、私は腕の中の温もりを強く抱きしめた。

 

「好きです……大好きです」


 届くことのない愛を、眠る狂獣の耳元に囁く。

 

「ずっと…………いつまでも一緒にいてください」


 先の見えないこの関係を断ち切りたい。

 そんな自身の隅っこにある想いを無視するように……本能のまま言葉を口にして、私はゆっくりと眠りに落ちていく。

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