青龍、ぶち壊したい。
「その青髪はまるで夜明け前の朝の色。整った顔立ち。そして幼い頃から体術を体に叩き込まれて腕っぷしも強い。護衛につけるのもよし、妾として娶るのもよし、召使として使うのもよし。それ、競って〜」
司会をしているのは大輪の椿が描かれた着物を着た若い女。
着物を来ているけれど、目には仮面舞踏会につけていくような黒色の仮面がつけられていた。
私がステージの真ん中に立つと、客である参加者が惚けるような目で私の髪を見た。
そうでしょうね、だって私の髪は一生懸命マスターが小さい頃から育てていたんだもの。
あ、後ろの方に芹澤先生たちが見える。
ヤタちゃんはとても心配そうな目でこちらを見ている。それがこれからの襲撃への心配なのか、ただ単純な私への心配なのかは、わからないけれど、ヤタちゃんの実力と友達としては後者だと思いたい。
朱雀は司会の女を睨んでいる。多分、わたしのことを商品として紹介したのが許せないんだと思う。
何年も一緒にいるからわかる。あの子は私が侮辱されたりすることを決して許さない子だ。
芹澤先生はヤタちゃん動揺、私の方を心配した目つきで見ていた。けれどそれに込められた真意は目に見えてわかる。
多分あれ、横にいる司会者の女の人に同情している目だわ。襲撃が始まったら私は真っ先にこいつを潰す。
多分、その時には私には多大なるストレスが掛かっていてこの人に八つ当たりでアッパーかますと思われてるんだわ。いや、芹澤先生、私の心配をして?!?!
玄武と白虎とシオンは何やらこちらをチラチラ見ながら話している。
うーむ、何で話してる内容わかっちゃうかな。だいたい口の動きでわかっちゃうのよね。
玄武が『あいつ、黙ってたら可愛いのにな』と。
シオンが『わかるが、口を開いたら、ただの未来の鬼嫁候補だからな』と。
白虎が『ちょ、シオン。青龍にバレたらどうすんのさ!しばかれるだけじゃ済まないよう』と。
いや白虎も含めて3人とも失礼だからね?!シオンに関しては鬼嫁って何?
そんなに、私、人使い荒かったっけ…まあシオンにはいっぱいわがまま言ってるけどさあ。
私が皆んなを見ているうちに、値段がつく段階まできた。
周りの悪い大人たちは大声を上げながら、値段を言い合っている。
私は芹澤先生の方を向いて一つ、頷いた。
すると芹澤先生も頷き、私は私の方なんて見ずに客の言う値段をどんどん高くしていく司会の懐に入り、
下から思いっきり拳でぶん殴った。
後ろでざわざわ言ってるけれど、多分皆んながいるから大丈夫。
「ふう、あんたね。人を商品のように扱うんじゃないわ。いつかあんたも同じようにされるわよ」
私は不安をぶつけて、彼女を見ると彼女の仮面は外れて、気絶していた。
彼女の仮面で隠れていた顔は焼けただれていて、見るに耐えないものだった。
だからといって、こんなことに加担して良いわけじゃないんだけれど。
私は気絶している彼女に踵を返して、舞台裏に行く。
目の前に次々と現れる組織の人間をばったばったと片手でなぎ倒していく。弱すぎない?
「やっぱり、ここにいたのね」
私は、広い部屋に大詰めにされていた子たちを、あらかじめ呼んでおいた補助部隊の人たちに引き渡した後、私は舞台裏に向かった。
そこには目に光が灯っていない、あの銀髪の少女が座っていた。
多分、客に手渡される前に何かしらこの業界の言ってはならないことを叩き込まれていたんだろう。
「…誰、あんた」
「私は、青龍。あなたを助けに来たの。一緒に逃げましょう?」
私が屈んで少女に目を合わせると彼女は泣きそうな顔をした後、私の顔をキッと睨んだ。
「…逃げない。どうせ嘘なんでしょ。沢山沢山殺した私を救ってくれる人なんていない」
「そんなの…私だってそうだよ…私も、沢山殺した。これからもきっとこれが正義だと思って人を殺す。だけど、私はあなたと逃げたい。あなたに生きてほしい」
職業殺し屋として、ここで彼女を逃がすのは間違ってる。きっと警察に引き渡すべきだ。
そう、私の中のサイレンはなっているのに、彼女には真逆のことを言ってしまう。
でも、でも私は本当は彼女に生きてほしいと心の底から思っている。
きっと過去になにか辛いことがあったのだろうか。
きっと何か、誰かに奪われて死にたくなるほど悲しいことがあったのだろうか。
でも、死にたいと思った時に踏ん張って生きた人だけが、きっといつか幸せになれるから。
「だから、逃げよう?」
「…はは、殺し屋さんよお。政府の犬がそんなことして良いのかなァ」
私は、勢いに任せて後ろを振り返る。気配を気づくことが出来なかった。
後ろには眼鏡をしたスーツ姿の男が立っていた。
背が高くて、筋肉も程よく着いている、30代くらいだろうか。
「その子には僕と来てもらう。彼女が輝ける場所を知っているからね」
「…お前、オークションの参加者か。なら渡せない」
彼はケラケラと愉快そうに笑って、私の目を見た。
「違うね。彼女に大切な人と会わせてやろうと思っただけなんだよねェ。どのみち、この組織には潰れて貰おうと思ってたしィ」
「…は」
彼の顔が先ほどとは違って優しく歪む。
「じゃあ、この子もらってくねェ」
「あ、ちょっと!」
私が不思議な感覚に陥っているうちに彼は少女を俵担ぎで連れて行ってしまった。
それでも追いかけなかったのは、少女が興味を惹かれていたからだ。
私は座ったまま少女と彼の後ろ姿を見ていた。




