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ゾンビのミヤタさん~英雄が敗北した未来を変えるために、勇者の剣と愛と勇気と豊橋名産のちくわを携えやって来た二回目の世界、東北には太陽が昇り、花咲く明日への物語が始まる~【完結】  作者: 高山路麒
第十二章 失われた理想郷【第二部3】

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12-81 『虹龍』荒木イリスについて

 ――ハナコの視点から――


 最初に感じたのは全身の痛みだった。呼吸がままならない程の激痛に耐え、私は無意識に体を持ち起こし正常に動かない頭でどうにか状況を把握するため手当たり次第に視界にあるものを分析した。


「……皆さん! 生きてますか!」

「痛てて……なんやねんホンマ。生きてますか?」

「私は何とか。律子も生きてるな」

「ええ。黒鬼班は全員無事みたいね」


 その場にいたのは私、フィリアさん、黒鬼さん、ギバさん、律子さんの五名だけだ。随分と数が減っちゃったなあ。チーム明日花組は私とフィリアさんしかいないし。


「お嬢様……! お嬢様ッ!」


 頭から血を流していたフィリアさんはミヤタさんを見失った事でかなり慌てており、意識を取り戻すや否や必死で彼女の名前を呼んでいた。だけどその返事はにゃんにゃんバッジから返ってきた。


『みんなー! 生きてるー!? わたしのところにはチェルノちゃんとアトゥちゃんとメイリンさんがいるの!』

「お嬢様! ご無事でしたか!」


 フィリアさんはすぐに主の無事を知り安堵する。ただそれでも全員ではない。他の皆はどこに……。


『こちらヨシノ、こっちは紗幸とカネヒラがいる。生き残っている人間がいれば応答して!』

『こちらドーラ、ようわからんところに落っこちてもうた! 復帰は無理っぽい! せやけど周りでモブ連中がさっきの龍に襲われとる! 戦況はかなり劣勢、すまんが一旦連中と一緒に退却するで!』

「こちらハナコ、こっちにはフィリアさんと黒鬼さん、ギバさんと律子さんがいます!」


 しかし心配する間もなくヨシノさんたちからも連絡があり、私は全員の無事を確認してホッと胸をなでおろした。分断されたのは厄介だけど取りあえず一安心かな。


『全員生きてるね、良かった。けど外に出たらまたあの龍に襲われる。ネオユートピアを攻略しつつ内部で合流しよう。まずは安全を最優先でね』

『わかったの!』

『おう! 儂はあの龍を適当に引き付けとくわ!』

「了解しました!」


 他の皆も心配だけどとにかく今は自分たちの身を護らなくてはいけない。私は近くにあった布切れを発見すると、早速それでフィリアさんを手当てする事にした。


「フィリアさん、ちょっとじっとしててください。包帯になりそうなものがありました」

「え、ええ。ありがとうございます。とにかく早くお嬢様たちと合流しましょう」


 SPでありながら主の身を護る事が出来ずフィリアさんは珍しく意気消沈している。ちょっとレアな表情だから内心ウホッとなったのは内緒だよ。


「うーむ、死人が出ていないのは良かったですがあの化け物は一体何なんですか。律子さんはご存じで?」

「彼女は『虹龍』荒木イリス。荒木の一族の当主に使えるルミナリエスの一人よ。当主の側近でもありその強さは全メンバーの中で最強クラスとも言われているわ」

「うげ、荒木の一族絡みかよ。何だってそんな奴が」


 律子さんが彼女について説明をすると、世界を裏でコントロールする荒木の一族についてある程度事情を知っていたギバさんはかなり嫌そうな顔をしていた。


「荒木の一族には私も何名かお会いした事がありますし、一応彼女とも面識はありますが龍に変身するとは無茶苦茶にも程がありますね。荒木の一族は全員あんなのばかりなんですか?」

「申し訳ないけど彼女は猛烈に強いだけで能力は割とシンプルな部類に入るわ。一族の中にはあれ以上に掟破りな人がたくさんいるから」

「マジですか。出来れば敵として戦いたくないですね」


 荒木の一族の名前は正史にもたびたび出てくるから多少は知識があるけど、私も当主やルミナリエスについてはあんまり知らないんだよね。それはきっと彼らが本当に『裏側』で生きる存在だからなのだろう。


「……でも、前に会った時と大分印象が変わっていましたね」


 私は田沢湖でイリスさんに出会った時の事を思い出す。あの時の彼女はとても優しく穏やかな人で、まるで清らかな心を持った湖の女神の様でこんな風にいきなり攻撃を仕掛けてくる様な人とは思えなかったからだ。


「っ! そういえばあの時イリスさんはルミナリエスが行方をくらましていて探していると話してしました! もしかして他のルミナリエスやイリスさんは……!」

「ええ、アラディア王国の催眠アプリで、という事なんでしょうね」


 そしてさほど推理する事無く私は真相にたどり着いてしまう。どいつもこいつも化け物染みた強さのルミナリエスは当主に絶対服従で、基本的に当主以外の人の命令を聞く事は無いけど催眠アプリを使えばそれも可能だ。おそらくアラディア王国は催眠アプリを使い無理やり彼女たちに言う事を聞かせているのだろう。


「成程ね。ならアラディア王国は愚かにも程がある事をしたわね」

「と、言いますと?」

「うちの当主様はかなり利己的で独占欲が強いわ。自分の大切な部下が催眠アプリで寝取られたなんて知ったら確実にブチ切れるわよ」

「わーお、それってどれくらい」

「平〇綾が経験済みだって知った時の全声豚の怒りと、三〇すずこと結婚したオ〇ダに対する〇・カーンの恨みと妬みを合体させてそれを一万倍にしたくらいね」

「うわあ……そりゃ大変だ」

「はて、三〇すずこって結婚してましたかねぇ?」

「つまりアラディア王国は荒木の一族を敵に回したって事なの。もし当主が命令を下せばアラディア王国は一日で滅びるでしょうね」


 今はまだ2014年なのに律子さんはさらっと未来の出来事を言ったけど、それはさておきその情報はなかなかの特ダネだった。


「荒木の一族が味方になってくれるのはかなり大きいですね。もし今後アラディア王国と戦う事があれば荒木の一族の力を借りてもいいかもしれません」

「まず大前提としてこの戦いを私たちだけで乗り切る事が必要でしょうけど。外に出たらまたはかいこうせんをぶっ放されるから大人しく建物の中を移動しましょう」

「ええ、アレを倒そうなんて考えないほうがいいですねぇ。反動もなく連続で撃てますし、見つかったら即ゲームオーバーと考えたほうがいいでしょうねぇ」


 残念ながら現状イリスさんを催眠から解放する方法はわからない。当然説得も出来ないだろうから今は逃げるしかないんだろうな。


「移動に不便しそうですが仕方ありませんね。イリスさんに見つからない様慎重に行動して早くお嬢様たちと合流しましょう」

「はい!」


 イリスさんについて情報の共有をしたところで私たちは攻略を再開する。でも今は外に出ないほうがいいとして脱出する時はどうすればいいのかなあ……ま、その時に考えよっか。

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