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ゾンビのミヤタさん~英雄が敗北した未来を変えるために、勇者の剣と愛と勇気と豊橋名産のちくわを携えやって来た二回目の世界、東北には太陽が昇り、花咲く明日への物語が始まる~【完結】  作者: 高山路麒
第十二章 失われた理想郷【第二部3】

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12-65 ゾンビモノの冒頭で出てきそうな迷惑なパリピの襲来

 ――芳野幸信の視点から――


 燦燦と輝く太陽の下、あるものは大波の様に情熱的に、そしてあるものはさざ波の様に切ない愛の調べを奏でる。


 それが海というものである。海は全ての人に内なる自分をさらけ出させてしまうのだ。ただそれはそれとして僕は……。


「ウホホホーイ!」

「きゃー!」


 水鉄砲片手に全力で皆とはしゃいでいた。シナリオとか展開とか関係なく特に理由も意味もなくただただ馬鹿っぽく。


 うーん、水着姿が眩しいねぇ。もうしばらく本編そっちのけで遊んでおきたいよ。折角の水着回なんだからそっちのほうが視聴率が取れそうだし。


「いやー、はしゃぎすぎじゃない?」

「ハハ、何言ってんだいマイシスター! セクシーアンドバイオレンス、それがゾンビモノの鉄則さ! やっぱゾンビモノには水着だよね。普通の所でゾンビハザードが起きてもいいのにどうしてみんなやたらと水着ギャルを登場させたがるのか。そう、それは全て需要のためなのさ!」

「ちょっと何言ってるのかわかんないけど。まあ楽しんでいるならいいかな」

「揃いも揃ってお前ら元気やのう。ほれ焼きそば食え。美味いぞ」

「うぱ」


 水が苦手なドーラは淡水生物のぬるぽの面倒を見ていた。猫の彼女にとって海は楽しくもなんともない場所だったみたいだけど、焼きそばやフランクフルトなど割高な海のグルメを楽しんでいるみたいだ。


「でも何か足りないなあ。ゾンビモノで水着とくればやっぱりヘイトを集めるパリピだよね。どこかにマナー違反をしてすぐに死にそうなチャラ男はいないかな? クスリやってそうな奴とかわかりませんかね?」

「職業柄見たら大体そういう人はわかりますが視界に入る範囲ではいませんね。浄化作戦が上手くいっているようで何よりです。まあ見えない所に追い出しただけなんですがねぇ」


 僕の馬鹿っぽい発言に黒鬼さんは丁寧に対応してくれる。その言い回しにやや含みがあったのが少しばかり気にはなったけど。


「あら喧嘩に行くの? ならあたしも混ぜて頂戴。やっぱり海に来たら喧嘩をしないとね」

「あう!」

「もー、レイカちゃんったら、せっかくに海に来たのに駄目だよー」

「お前は年がら年中どこでも喧嘩してるだろう。サラもだ、あんまりこの暴力的な姉の真似をするんじゃない」

「あう」


 ミヤタとカネヒラはチャラ男狩りをしようとした友人たちを嗜める。サラはとことことカネヒラのほうに移動した。


 あれだけお姉ちゃんにべったりだったサラなのにカネヒラの言う事は素直に聞くのか。レイカが妹をチェルノ団に預けたのは他に親しい人間を作るという目的もあったけど上手くいったみたいでよかったね。


 テレテレテッテッテテテテーテテテー!


「あら」

「ふににっ!?」

「?」


 しかしそんな楽しいムードをぶち壊す下品な爆音がビーチに鳴り響いた。噂をすれば早速パリピ軍団が襲来して来たらしい。


「シャッシャッシャッシャッシャッ!」

「「エビバーデー!」」

「パリピだ! パリピが来たぞーッ!!」

「なんて楽しそうなの! 同じ人間とは思えないわ!」

「みんな気をつけろ! あいつらに絡まれたらパリピになっちまう!」


 突然のパリピの襲撃にビーチは大混乱に陥ってしまう。明らかに道交法を無視したパレードの様な車や大型バイクに乗っているけど、そもそもビーチは車での乗り入れは禁止されているので良いパリピは真似しないようにしようね。


「「ウェーイ!」」

「ふぉおお! なんてぴちぴちなギャルなんじゃ! ぬおー! 盛ってきたぞい!」

「やべえ、よくわかんないけどチョー楽しい!」

「ああ! オシャレな神渡市民が次々とパリピになっていく! 誰か助けてくれーい!」


 水着で踊る楽し気なパリピのオーラは凄まじく、人々はゾンビハザードの様にパリピに感染してしまった。これはこれで楽しそうだけどちょっと品がないなあ。


「ぽへーん」

「なにこれ」

「パリピ」

「いや見たらわかるけど。それ以外の何物でもないけど。概念そのもののパリピだけど。ねえお兄ちゃん、いつものあれやっていい?」

「いいよ」

「じゃあ早速。オオウ! マァイ! ガァアアアファンクルゥウウウウッッ!!」


 紗幸は混乱が頂点に達し渾身のオーマイガーファンクルを発動した。テンションだけならこのパリピ連中とも対等以上に渡り合えそうだね。


「ヘィロォオオ! キュートな天使ちゃんにイモ太郎! また会えて嬉しいよ!」

「遠目で何となくわかりましたが……すんごく会いたくなかったです」


 硬派代表の黒鬼さんはとてもいい発音で陽気に挨拶をしたパリピのボスに頭を抱えてしまう。言うまでもなくその人物はもちろん久我だった。


「おおう、聞きしに勝るパリピぶりですね。この滅茶苦茶改造しまくった車とかいくらしたんですか」


 彼のこんな一面は未来にも語り継がれていたのであろうが、いつもなら喜びそうなハナコですら若干引いていた。まあ普通の倫理観を持つ人間はこういう反応をせざるを得ないだろう。


「お金の事なんてそんな野暮な事を気にしないで! さあ、君たちもそんなつまんない遊びをしてないで俺たちと一緒にパーリナイしようよ! FUOOOOOッ! YHAAAAAAFOOOOOッッ!」

「パリピという概念を極限まで煮詰めたらきっとこうなるんでしょうね」


 パレード車の上でセクシーな水着ギャルと一緒に踊り狂っていた久我に対し、フィリアさんはとても的確なたとえをした。


 真っ当な精神を持つ人間ならこんなにも恥も外聞もなく本能のままに振舞う事は出来ないだろう。こいつを表現するにはパリピという言葉以外の言葉は思いつかないよ。


「で、本当の目的はなんなのですか? アロウレスのリーダーともあろうお方がただバカ騒ぎしに来ただけではないですよね」

「んー?」


 ただフィリアさんはすぐにその可能性を指摘し、久我は一瞬ダンスを止めて普段の笑顔で答える。元々がチャラいからあまり違いは判らなかったけども。


「そうだねー、建前の目的は忠告してやったのに余計な事するんじゃねぇボケカスって感じ? 本音はただからかって遊びに来ただけさ! つまりは一緒にパーリーピーポーすれば万事解決なんだよ!」


 ああ、やはり裏にそういう魂胆があったのか。半分、いや九割はおふざけでもこいつはアラディア王国の非正規の軍隊組織であるアロウレスのリーダー、僕らが今している事に対して何かしらのアクションはしてくると思ったけど。


「私たちの狙い通り嫌がらせは出来たので結果オーライって感じですね」

「ですね」


 とにかく目的が達成出来たので僕はアキヅキさんと一緒にほくそ笑む。本来は偽ペイルライダーを狙っての事だったけどこうしてアラディア王国の傘下組織のリーダーである久我が忠告に現れた。それは偽ペイルライダーとアラディア王国に繋がりがあるという何よりの証拠である。


 これだけでも結果は上々だけどせっかくだしもうちょっとおしゃべりを続けて情報を入手してみよう。きっと戦う事になるだろうけどとばっちりを食らってひどい目に遭った僕としてもこのまま黙って引き下がれないし。


「パーリーピーポーしないよー? っていうか大騒ぎして周りの人に迷惑なの! ヨシノくん、ゾンビモノだとマナー違反しているチャラ男はすぐ死ぬんだよね!」

「ああ、その通りだ。皆、パーリィーの準備はいいかい?」

「やれやれ、結局こうなるのかー」

「これはこれで楽しいぞ、ヒカゲ! シャー!」

「クックック、ではチェルノ団も大暴れさせてもらおう! いざ出陣だー!」


 ただそんな両者の企みはどこ吹く風とばかりに、というかそんな余計な事は一切考えずうちの大将は周囲の人の迷惑を考えない振る舞いに当然怒ってしまい、早速久我とのバトルに突入してしまった。


 水着とバトルシーンの組み合わせもなかなかいいから、ここはしっかりと視聴率を稼がせてもらおうか。

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